第28話 三崎智花
稽古が終わり、大人から子どもまで全員並んで正座し、目をつむって黙想する。
今日の、稽古を反すうして、次に活かすということ。
俺自身は、足りないことだらけだったが、頭に浮かんでくるのは、柚希のしなやかな剣道だった。
黙想が終わり、礼をして終わりになった。
終わるのを待っていたように、指導者の先生方が俺のところに来た。
ってゆうか、俺じゃなくて、柚希のところに、だけど。
「おつかれさま。
倉田さんって、今 初段なんだっけ?」
「はい、そうです」
「ブランクあってあれだけ動けるの、なかなかだね」
「ありがとうございます」
と、柚希は笑っている。
先生方は口々に、今日の柚希の稽古の感想を言い始めた。
これは、長い話になるのかな。
当分帰れないか?
俺は、奏のところに行き、帰り支度をすることにした。
「奏!おつかれ!」
「パパ!!ねーー!!ママってすごいね!!
めちゃ かっこよかった!!」
俺の感想と、ほぼ一緒だな。
ってか、パパすごい!も、パパかっこいい!も、言われたことないな……
あははっ……
奏と更衣室に行き、私服に着替えた。
更衣室から出ると、柚希は見知らぬ女性と話していた。
誰だろう?
柚希の手もとを見ると、彼女に渡されたであろう名刺らしきものを持っている。
まさか、剣道雑誌の取材とかかな?
俺は近づき、声をかけた。
「こんばんは」
その女性は、ビクッとしたように振り返った。
どことなく、なんてゆうか、雰囲気が柚希と似ている感じがした。
顔が、ってことじゃないんだけど。
「主人です。
とおる、こちらルピアーノの三崎智花さん」
ルピアーノ!!!!
ルピアーノって、あのルピアーノ?
Realが所属している制作会社の、ルピアーノ?
彼女は、“主人” って聞いて、ヤベ!!って顔をした。
「余韻の人ですよね? だってさ」
余韻の人……
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