第23話 矢沢弘人

 渋谷駅に着いた。

で?

どこで待ち合わせだよ?

矢沢に電話した。


「あっ、駅着いた?

俺さ、Tシャツだけ買おうと思って、今ZARAにいるから。

こっち方面向かって来て~」


マイペースな人だな。

ZARAって、あっ、あそこか。


店の入り口で立ち止まり、矢沢が出てくるのを待った。


「あっ、お待たせ。ごめんね」


前に矢沢に会ったのは5年前だったかな?

あの時よりも更に若くなったような気がする。

年下の俺の方が老けて見えるんじゃないか?


「お若いですね」


「なに?会って、そうそうに、イヤミかよ?あははっ!」


「いえ、ほんとに若いな!って。

前にお会いした時よりも若く見えますよ!」


「あ、ラフな格好だからかな~?

年相応にシワも白髪も増えたよ~。

で?いい店知ってる?」


何が食べたい、あれが食べたいと、いろいろと言うから、じゃ居酒屋にしましょうって、能登の地魚料理って感じの店にした。


生ビールを頼み、矢沢がいろいろと注文した。


「Tシャツって、ご自分のですか?」


「あ?あぁ、これ?明日着るようの着替えがなくなっちゃったから、とりあえずなんでもよかったんだけど、どうせ渋谷ならZARAあんじゃん!って、急に思い立ってさ。

長野には、ZARAないじゃん?」


「そうなんですか?こっちだと、ショッピングモールとかには絶対にあるイメージですけど」


「そうなんだよな~。

どうせだから、奥さんにお土産って思って、ワンピースも買ってしまったよ」


「へ~~!!すごいですね~」


あれっ?

俺は、柚希に洋服をプレゼントしたことがあっただろうか?

誕生日プレゼントで、欲しい物買いなよ!って、一緒に買いに行ったりはしてるけど、俺が柚希の服を選んで買ったことはない。

まず、女性物のサイズとかもよくわからないし。

女性物の売り場で、1人で選ぶ度胸もない。


「すごいですね!!」


思わず もう1回言ってしまった。


「なにがだよ?あははっ!

で?最近はどうなんだ?ゆきとは、うまくいってんの?」


「……あ……はい……うまく、いっては いますが……」


「なんだよ?

さっき、俺に会いたかったって言ってたじゃん?」


「あ、はい……」


矢沢弘人に、すべてを話した。

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