第10話 メモ紙

 室堂から渡されたメモ紙を、どうしようかと思った。

いつまでもポケットに入れておく訳にはいかないし。

財布なんかにしまったら、お金を補充する時に、柚希に発見されるだろうし。

あ、見られたとしても、この紙には携帯番号しか書いてないんだから、室堂にもらった室堂の携帯番号ってことにすればいいか?

ってか、もうこれ、登録しちゃえばいいか?

“”室堂“” って。


って、そんな偽装工作をしようとしてる時点で、だいぶ俺、おかしいよな。

なにも、やましい気持ちがないのなら、柚希に言えるはずだ。


室堂から友だちの連絡先を渡されてさ、俺と連絡取りたがってるってゆうから、電話してみようかな?

って。


それを言えないと思うのは、それが元カノだから……

柚希は、俺が元カノに連絡を取ったら、嫌だと思うだろうか……

柚希が俺に内緒で矢沢弘人と連絡を取ったら…… 

すごく、すごく、嫌だな……

だったら……

だったら、やめとけよ!!



結局、メモ紙を柚希が絶対に聴かないであろう

洋楽のハードロックのCDのケースにはさんでしまった。


 


 数日後

CDケースを持って、仕事に行った。


仕事が終わり、署内の休憩室を覗いてみると誰もいなかった。


バッグからCDケースを取り出して、テーブルに置いた。

誰か来るだろうか。

夜の8時すぎ。

この時間、国元は何をしているだろうか。

見知らぬ番号からの電話に、出るだろうか。



ただ、CDケースを見つめて15分経ってしまった。


あと、5分待ってみよう。


誰か来たら、電話はしない。

誰も来なかったら、電話をかけてみる。


簡単な賭けだ。

 


5分後

電話をかけることにした。

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