第6話 飲み会

 飲み会当日


佐知香のお母さんが、梨央ちゃん、美桜ちゃんの面倒を見に来てくれてるから、倉田んちの坊っちゃんもあずかるよ、と松井田先輩が言ってくれた。

お言葉に甘えて、峻と奏を松井田先輩のマンションに連れて行った。

子どもたちを、人に預けて飲みに行くなんて初めてだ。

そもそも、結婚して峻が生まれてからは、柚希と2人で出掛けるってことがなかったな。


佐知香のお母さんと、松井田家にお渡しするお礼の品を持って、武蔵小山のマンションへ行った。



目黒駅で、7時半に佐久間先輩と室堂と待ち合わせだった。

俺たちが行くと、佐久間先輩はもう着ていた。


「中野!!元気だったか~?変わんないな~!

矢沢と別れたなら、俺に連絡してくれよ~!

なんで倉田なんだ?」


って、第一声がこれ。

はいはい、倉田ですみませんね~。


相変わらずデカい声で柚希に話してる。

柚希は、あははっと笑った。

佐久間先輩 お変わりないな。


ってか、室堂 遅くね?

よく、先輩たちを待たせられんな?

信じらんね~。

なんなら1番先に、佐久間先輩より前に、着てろよ。


15分遅れで、室堂が来た。

目黒と目白を間違えたって。

全然 笑えないんだけど!

あ、こいつって、昔からこうゆうやつだったな!!

今、思い出したわ。


松井田先輩が予約してくれた店に行った。

目黒らしいシャレた店だった。

店の奥の方に案内された。

いびつな楕円形の木のテーブルに6人分のセッティングがされていた。

全員で喋るにはちょっと離れている感じ。

なんとなく、3対3に分かれて座った。

左奥に柚希、柚希の隣りに松井田先輩、向かい側に佐久間先輩。

こっち側は、佐久間先輩の隣りが佐知香で、佐知香の隣りに俺。

向かい側に室堂って席。

柚希と俺は、対角線の1番離れてる位置だ。

まぁ、このメンツの飲み会で、隣りに座ってベタベタするのもなんだしな。

まぁ、いいんだけど。


そう思っていたけど、向こうの先輩たち話してるの全然聞こえない。

たまに聞こえてくるワードは、

佐久間先輩の声で “”矢沢“”

柚希の声で “”えいちゃん“”

なんの話し!?

気になりすぎる!!


「もう、倉田~!!聞いてる~?」

佐知香が俺の肩を叩いた。


「えっ?あ、なに?」


「ぜーんぜん聞いてね~じゃん!!あははっ!」


室堂が、バツイチで今 婚活中だって。

たまに、都会のフーゾクに遠征しにくる、って。


どーーーーでも いーーーーわーー!!それ!!

俺は、あっちの話の方が気になるんだっつーの!!


「それにしてもさ~、まさか、中野先輩と結婚したなんてな~!!

マジでびっくりしたわ~!!」


「あっ?」


「あははっ!!なんで怒ってんだよ~?

高校の時、倉田が中野先輩好きなのはみんな知ってたけどさ~。

先輩は先に卒業しちゃったし、そんなん普通は

淡い片思いの思い出で終わるもんじゃん!!

それを結婚って、すげーわ!!

尊敬するわ~!!」


「なんか、カチンとくるな!!」


「怒んな!怒んな!

室堂 頭悪いからこんな言い方しかできないけど、片思いを実らせて、良かったね~って話だよ」


佐知香がフォローしてくれた。

まぁ、そうか。

なにを、こんなにイラついてるかって、別に室堂に、じゃねーし。


あははっ!って聞こえてくる柚希の笑い声と、

楽しそうに笑ってる顔と、たまに聞こえてくる “”えいちゃん“” って声に、イライラしてるだけだ。

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