第5話 飲みの誘い

 数日後、松井田先輩から電話がかかってきた。


「おつかれ~」


「お疲れさまです。先日は、ありがとうございました」


「こちらこそ、中野とやらせてもらって、なんかうれしかったわ~」

 

「あ、ゆきも喜んでましたよ。懐かしい感覚だったって」


「中野さ~、なんか高校の頃、必死だったじゃん?

全力でぶつかって、全力で受けとめて、ってさ。

頑張りすぎてて、辛そうだった。 

剣道を好きだって言ってたけど、好きってゆうより、なんてゆうのか、やらなきゃなんないんだ!!みたいな悲壮感も感じてたよ。

この間の中野の剣道はさ、すごく穏やかな流れだった。

返し胴なんて、みとれちゃうようなキレ味だったわ~。 

今は、本当に好きな剣道をやれてるんじゃないのかな?」


「あ、はい。そう思います。

高い防具買ったんで、長く使うって言ってました」


「そっか。良かったな。

あ、それでさ~」


松井田先輩の用件は、飲み会のお誘いだった。


佐久間が、仙台の会社で働いてるんだけど、来週3日間研修会があるから東京に行くって。

飲みに行こうって話になって、倉田と中野の話をしたら、マジで会いたい!!って言われて。

で、タイミング偶然過ぎて怖いんだけど、佐知香が駅でバッタリ室堂と会って、倉田と連絡取りたいと思ってたって。

だから、6人で飲みに行かないか?


って。


室堂は、俺と佐知香と剣道部の同期だった。

俺は、クラスも一緒だったな。

でも、それほど親しくはなかったけど。

室堂さとる

俺は、とおるだから、なんか名前似てんな?って。

クラスメイトに、保科たけるってのもいて、さとる、とおる、たけるで、『るるちゃんず』って、どうだ?って言われたけど、激しく却下した。

俺は、そうゆうノリじゃない。

たぶん、高校卒業以来、一度も会ってないと思うけど。

俺と連絡取りたいって、なんだ?


先輩3人、後輩3人。

ってか、2組の夫婦に、佐久間先輩と室堂か。

メンツすごいな~。


「来週の金曜日の夜なんだけど、大丈夫?」


「はい、その日は、17時あがりなので、大丈夫です」

と、答えた。


柚希と飲みに行くなんて、何年ぶりなんだ?

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