武田軍と6人の大悪魔
武田晴信と甲田信敏は、引き続き旧約聖書を読みながら話をしていた。
「七つの大罪を司る悪魔のうちに、リヴァイアサンが含まれるのだな?」
「はい」
「では、残りの6人は?」
「傲慢は ルシファー、憤怒はサタン、怠惰はベルフェゴール、強欲はマモン、暴食はベルゼブブ、色欲はアスモデウス、そして嫉妬はリヴァイアサンです」
「聞いたことがない名前だな。そのように異国語で書いてあるのだな」
「俺が思うのは、リヴァイアサン・メルビレイは宿敵に嫉妬しているんじゃないかということです」
「宿敵か」
武田晴信の心には『宿敵』という言葉が響いた。
「リヴァイアサン・メルビレイにはメガロドンという宿敵がいて、そいつに嫉妬しているのだと思います」
「なるほどな」
あっという間に夜は訪れた。信敏は、武田氏館の中で眠らせてもらったようだ。旧約聖書は全部開きっぱなしになっていた。旧約聖書の中から誰かが現れた。
「せっかくここにやってきたのに、今は夜か。堕落させるための人間もいない」
「まあここにいれば、そのうち誰か来るっしょ」
「ここで待っていよう」
次の日。信敏は隣の部屋のふすまを開けた。
「おはよう!あれ?」
そこでは、6人の大悪魔が爆睡していたのだ。それでもかまわず、
「朝だよ!起きてください!」
大悪魔の中で一番強そうなやつが目を覚ました。そいつは、信敏を見上げた。2人は同時に叫んだ。
「誰!?」
ほかの5人も目を覚ました。
「あれ?もう朝か。人間がいる!」
「誰だ、あんた!?」
隣に旧約聖書が置かれていて、開いたままになっていた。
「もしかして旧約聖書から飛び出してきた悪魔たち!?」
「その通り。私の名はルシファーという。地獄に君臨する悪魔だ」
「何言ってんだよ!俺こそが、悪魔の中の悪魔だ!申し遅れちまった、俺は暴食を司る悪魔、ベルゼブブだ。ハエのような見た目だけど、頭には自信があるんだぜ」
「ちょっと待った。ということは、あんたたちは『七つの大罪』を司る悪魔ってことだよな?それなのにここには俺を除いて6人しかいない。どういうことだ?」
昨日自分が言った言葉を、信敏は思い出した。
「リヴァイアサンの名を持つクジラであるお館様が、残りの1人ってことか?」
「ああ、リヴァイアサンか。七つの大罪における嫉妬を司る悪魔だな」
「その者に会わせてくれ」
「あと4人、名前を言ってからにしてくれ」
「私はサタンだ」
「わしは、ベルフェゴールじゃ」
「私はマモンです」
「わしは、アスモデウスだ」
「俺は、甲田信敏だ。お館様にあんたたちの名前を伝えたら、聞いたことがないってね。俺たちは旧約聖書を読んでたけど、キリスト教徒ではないから。どこにでもいる言語オタクなんだよ。ヘブライ語を学習しようと…」
「早く行こう。その方のもとへ」
ルシファーは信敏の手を取り、背中に乗せた。
「空飛べるのか?」
「これでも、元天使長だからな。今は魔王だが」
非常に美しい声だった。
「では、残り1人のもとへ参ろうぞ」
「つかまっていろ」
「え?いやマジで空飛ぶのかよ」
「そのリヴァイアサンとやらは、どこにいるんだ?」
川のそばに巨大クジラがいた。
「あの巨大クジラが、お館様だ。あのクジラは、リヴァイアサン・メルビレイという。リヴァイアサンが海の怪物でもあることから、名づけられたんだと思う」
信敏たちは地上に降り立った。
「この者たちは、昨日俺がお話しした大悪魔たちです」
「そなたたちは、いかにしてこちらの世界へ?」
「旧約聖書から飛び出してきた」
「あなたが、七つの大罪を司る残り1人なのです」
「悪いんだが、わしには悪魔を飼う銭がない」
「飼う!?」
「よその国に行ってくれ」
信敏、
「悪魔を飼うのに金なんてかかりません。むしろ、悪魔がいることで、武田軍はもっと強くなるのではないかということです」
「そうか、それもそうだな。ならば、同盟を結ぼう。それも決して崩れることのない同盟を」
「感謝する、巨大なクジラよ」
信敏はルシファーにこう言った。
「思うんだけどさ、あんたってめっちゃ声綺麗じゃない?顔立ちもそうだけど」
「何を言っている、この大悪魔を相手に!」
ルシファーは慌てふためいている。わざとらしくベルゼブブが、
「図星か?俺はそんなことしないぜ」
「やめろ。私をこれ以上からかうな!」
悪魔たちは爆笑していた。武田晴信も、それにつられて笑っていた。
「こんな曲者たちをよくも統率しているんだから、あんたもすごいよな」
「恥ずかしい!やめてくれ」
「そんなこと言っちゃってさ、本当は嬉しいんじゃないんですかあ?」
悪魔たちはもっと爆笑した。日は暮れてしまった。
一方、長尾景虎の本拠では、
「御実城様!武田軍は悪魔を飼っているようです」
「悪魔だと?もし武田軍と戦になったら、絶大なる咬合力で悪魔どもを成敗してやろうぞ!」
「はい!」
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