古生物侍

齋藤景広

衝撃の事実

 ニュースキャスターはテレビでこのように言った。

「戦国武将たちの墓から、化石になっていない骨が見つかりました。戦国武将は、古生物だったのかもしれません」

 甲田信敏は、椅子から勢いよく立ち上がった。

「なあ今の聞いたか!戦国武将が古生物だってこと」

 越海景友はめんどくさそうに、

「まだ確定したわけではない。そうだろう、白亜?」

「そうだな。しかし、戦国時代の福井に恐竜がいたのだろうか。ロマンがある」

 朝越白亜はJKだけど、筋肉マッチョの姿だ。身長は198cmもある。一条かれんはこう言った。

「戦国武将が人間じゃなかったら?素敵なお話ですわ!」

 男の娘である長原あおいはこう言った。あおいは、6人の中で一番年下だ。

 「君たちは戦国時代に行くことになるだろうね、タイムスリップする技術はあるんだから」

 信敏のもとに、同じ言語オタクの仲間がやってきた。

「この本、持ってってくれ。あなたの役に立つだろう」

 その人物の両手には、山のような古い書物が載せられていた。

「これ全部!?持ってっていいのか!?」

「この本はヘブライ語で書かれている。これを戦国武将たちに教えれば、きっと何かの役に立つ」

「俺はヘブライ語は読めるが、戦国武将は読めるわけがない。意味がないよ」

「この本の中に登場する者たちが、あなたを救ってくれるでしょう」

 織沢信家はこう言った。

「受け取ったほうがいいわ」

「そうか。ありがとう!」

「準備ができたら、明日戦国時代に行く!」

 次の日。信敏と景友は思い思いの荷物を持って、研究所に集合した。

「いいか?俺たちは戦国時代と現代を行ったり来たりすることになる。間違えても現代に刀など、持ってくるなよ!」

「了解だ」

「行ってらっしゃい!」

「ではいよいよだ!5、4、3、2、1!」

 気づいた時、甲田信敏は地面に倒れていた。山のような本は、信敏の隣にあった。

「ここはどこだ?」

 近くの川に目をやると、巨大なクジラがいた。

「陸なのに巨大クジラ?」

 巨大クジラは水浴びをしているようだ。信敏が恐れることもなく巨大クジラに近づいた。そのクジラはしゃべった。

「お前は見かけないな。わしは、武田晴信だ。元は人間だったんだが、いつの間にかこんな姿になってしまったのだ」

「甲田信敏です。俺は、未来から来ました。その巨大クジラは、リヴァイアサン・メルビレイという種のクジラです」

「おお、名前がすごいな!その大量の書物は?」

「これは、旧約聖書というものです。リヴァイアサン・メルビレイの名前の由来にもなった、リヴァイアサンという怪物が出てきます」

「面白そうだな!見せてくれ」

 信敏は旧約聖書を広げるが、晴信には全くわからなかった。

「これはヘブライ語という言語です。実は日本語と似ているとも言われます」

「もっと話してくれ!」

 越海景友は、海を眺めていた。シャークスーツを着たダイバーの姿で。

「人食いザメでもいるんだろうか。入ってみるか」

 景友は、海に潜った。向こうから巨大な影が近付いてくる。

「メガロドンだ」

 その巨大ザメもしゃべったのだ。

「我は、長尾景虎である。人間だったが、少し前にこんな姿になった」

「越海景友です。私は、未来からやって来ました。これはメガロドンという巨大ザメです。絶滅したはずなのに、今もお仲間が生きておられるかもしれません」

「生きておることを祈ろう」

 武田晴信と甲田信敏は旧約聖書を読んでいた。

「七つの大罪というものがあって、リヴァイアサンは、嫉妬を司る悪魔なのです。お館様は、誰かに嫉妬しているのですか?」

「無論だ。領土に海がある大名たちに」

「リヴァイアサンに呪われているのでしょうか」

「そもそもこれは、仏教の聖典ではないだろう。何という宗教のだ?」

「キリスト教とユダヤ教です。俺はどこにでもいる言語オタクです、自称ですけどね。その言語オタク仲間が、これ持ってけって。いつか役に立つみたいなんですけど、それがいつなのか分からなくて」

「役に立つときを楽しみに待とう」

 越海景友は、長尾景虎に対してメガロドンについて語っていた。

「メガロドンは、史上最大といわれるサメの仲間です。その鋭い歯で噛みつかれたら、誰であっても致命傷になってしまうでしょう」

「そんなに強いものなのか?」

「もちろん!噛む力も強く、メガロドンは史上最強とも言われています」

「何を食べるのだろうか」

「クジラやアシカを襲って食べます」

「この巨大ザメに天敵はいたのか?」

「天敵というよりかは、宿敵がいました。リヴァイアサン・メルビレイという名前の巨大クジラです」

「宿敵か。その言葉、覚えておこう」

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