トラック8 夜、砂浜で花火(花火、砂浜の波音)

//SE 扉をノックする音


//小声で

「おーい、いま、いいかー?」


//SE 扉を開く音

「よっ……こんばんは。まだ起きてたなら、良かったぜ」


「いま、ヒマか? ヒマだよな?」


「ならさ、これはあたしからの提案なんだけど……今から花火、しようぜ」





//SE 静かな波の音

//SE 砂浜を歩く音


「花火よし、バケツよし、とーちゃんの部屋から持ってきたライターよし、と」


「これで準備はできたな。いやー、夜中にこっそり抜けるの、久々だから緊張したぜ」


「やっぱ夏はコレ、やんねーとな。にーちゃんのことだし、どうせやるヒマないんだろ?」


「そう思ってさ、急いで準備してきたんだ」


「それに、さ。あたしもこういう手元でやる花火、やりたかったし。去年か……一昨年くらいからは、やってなかったからな」


「だから、恩に着る必要はないからな。あたしは花火ができる、にーちゃんも花火ができる。ウィンウィン、だろ?」


「じゃあ、まずはこの、スパーク花火って書いてあるやつ、やるぞ!」


「……そういう名前だったんだな、これ。でも、やっぱ初めはこれが定番だよな」


「ん? 火つけるやつ、やってくれるのか? ……そーだな、にーちゃんに任せるぜ。ちゃんとつけてくれよ?」


//SE ライターをつけようとする音(つかない)


「なかなか火、つかないな。ちゃんと中身入ってるから、使えるとは思うんだけどな……」


//徐々に少し気恥ずかしそうに

「がんばれ、がんばれー、なんて。へへっ」


//SE ライターの火がつく音


「お、着いた。じゃ、早速頼むぜ」


//SE 火がついたスパーク花火の音


「ん、あたしが持っとくよ。やっぱキレーだなー」


「……ほら、見てないでにーちゃんのぶんも早くつけろよ? 急がねーとあたしのぶん、消えちまうぜ」


//SE スパーク花火の音(2個目)


「つーか一本一本つけなくても、一気につけて良かったんじゃねーか? 先に気づくべきだったな……」


//SE スパーク花火の音、終了


「消えたなー。次行こうぜ。そんでさ、あたし思いついたんだけど……六個くらい持ってさ、一気に火、つけるのもよくねーか?」


「もったいないー、とかいううるせー大人は今はいないんだしさ」


「……あ、にーちゃんも一応大人だったか、忘れてたぜ。でも、にーちゃんはこういうこと、だめだーって言わないだろ?」


(お兄さん、肯定)


「へへっ。だよな。流石にーちゃん、わかってるな。じゃ、次も頼むぜ」


//SE スパーク花火(×6)の音


「うひゃー、思ったより眩しーな! 早くにーちゃんの分もつけろよ! 残ってるやつ、使っちゃっていいからさ!」


//SE スパーク花火(×6)の音(2個目)


「うひゃー」


//SE スパーク花火の音、終了


「はー、楽しかった。あっという間だったけど、元は取れたなーって感じ。昔からずっとやってみたかったんだ、これ」


「残りの花火は、何があったかな……打ち上げは、音でバレるからだめ、これもだめ……これは最後に取っておくとして……」


「……なんか意外といい感じのヤツがないな。なんでだ?」


「……あ、さっき一気にやったからか。確かに……もったいないことした気もするな」


「えっと……じゃあ気を取り直して次はこれだ。へび花火。火をつけると、蛇みたいに伸びるんだろ? これ、意外とやったことなかったんだよなー」


//SE へび花火の音


「うおっ、めっちゃ煙出てくるな……にーちゃん、あたしの隣来いよ、そっちは煙いってるし、あんまよくないだろ」


//SE へび花火の動き、終了


//少女の声、以降隣から

「……地味、だったな。火山の噴火みたいで、ちょっと面白くはあったけどさ」


「ま、さっきのスパーク花火と比べたらそりゃ地味か」


「……じゃあ、早いけど残りは……線香花火だ」


「あ、使うのは一人一つだけな。それくらいの風情は、あたしにだってあるんだぜ」


「……」


//SE 線香花火の音、ふたつぶん


「なんだかんだで締めはやっぱこれだよな。どっちが長く残るか、勝負しようぜ」


「にしてもこんなにちっちゃいのに、こっから火花散らしていくのさ、なんだかかわいいよなー。星の赤ちゃんみたいっていうか……」


//SE 線香花火の音、パチパチと勢いよく音が鳴るフェーズ


「……これは独り言なんだけど……あたしさ、思うんだ、にーちゃんがまたこの島に来て、また一緒にこうして遊べたらな、って」


「もしそんな日が来たら、嬉しいなって」


「あたしが思うだけだから、返事はいらないぜ。にーちゃんだって、いつも忙しいんだろ」


「あたし、にーちゃんが思ってるより子供じゃないから、こんなところまで気軽に来れるわけないって、わかってるんだぜ」


//SE 線香花火の音、静かになるフェーズ


「だから、あたしが思うだけなんだ。それぐらいは、してもわがままじゃないだろ?」


(お互い無言)

(線香花火、一つ落ちる)


「あっ……あたしの、落ちちゃった。にーちゃんのは、まだ残ってる」


「なんかずる、してたりしなかったか? ……なんて冗談、冗談だよ」


//線香花火、落ちる音


「ん、なんて言ってる間に、にーちゃんのも、消えちゃったな。接戦だったけど、あたしの負けか」


「……じゃあ、そうだな、帰ろうか」


//SE 波の音、フェードアウト

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