トラック4 夜、あなたの部屋で(雨音、肩たたき)

//SE 部屋の中で聞こえる雨音

//SE 扉を小さくノックする音、2回


//少し小声で

「おーい、にーちゃん、いるか?」


//SE 扉を開ける音

「あ、にーちゃん……こんばんは。えっと……中、入るぜ。かーちゃんたちに見つかるから」


//SE 扉を閉める音

//SE 少女が歩いて中に入り、座る音


「えっと……今日は楽しかったな。色々遊べて。結局、かき氷食った後はずっと雨降ってて」


「戻ってきた駄菓子屋のばーちゃんが傘貸してくれるまではなんにもできなかったけどさ」


「って、いや、そうじゃなくって……あのさ、その、あたし……メーワクじゃなかったか?」


「いやさ、今になってけっこー強引に連れ回しちゃったなって、その、思ったり……」


「というかにーちゃんも疲れてるからここに来たんだーって言ってただろ? だからメーワクだったんじゃねーかなって……」


(お兄さん、全然大丈夫という返答)


「……大丈夫? むしろリフレッシュできた? ……ホントか? ホントにホントだよな?」


「……はーっ。よかったー! 風呂入ってたときから、気になってて……というか、子供みたいに振り回しちゃったなって少しへこんでさ」


//柔らかい声で

「だから、そう言ってくれるなら、よかった」


//一転、普段の明るい声の調子に戻って

「でもさ、でもさ、疲れてるのはホントだろ? ならさ、あたしが肩たたきしてやるよ!」


「あたし、けっこー上手いんだぜ! とーちゃんからは小遣い貰ってやってるけど、にーちゃんには特別にタダでやってやるよ!」


「ほら、遠慮しないで背中向けろって、ほらほら!」


(お兄さん、押し切られて背中を向ける)

//SE 身体を動かす音


「よーし、じゃー、いくぜ」


//SE 肩たたき音


//少し優しい声色で

「とんとんとん、とんとんとん、ととと……どーだ、気持ちいいか? いたくねーか?」


「……もっと強くしてほしい? なら、もっと早くするからな。とととととと……こんな感じか?」


//SE 肩たたき音、少し早く


「ちょうどいい? おっけー。じゃあこのままやるからなー」


//SE 少し立ってから、肩たたき音の速度弱まる


「改めて言うけどさ、今日はありがとな」


「一緒に遊んでくれたこともだけどさ……最近はあんまりああいう遊びしてくれるやつ、あんまいねーんだ」


「やれゲームだの、やれ受験勉強だの……付き合いが悪くってさ-。あと、あたしが女子だからーってあんまり遊んでくれねーんだ」


「昔はあんなに一緒に遊んだのにな」


「それに、かーちゃんももっと女の子らしくしろーって最近はうるさいしさー。なんかさ、キュークツっていうか」


「あたしは今のまんまでいいのにさ、みんななんだか変わっていっちゃうし……」


「あたしもそのうち、みんなのいう大人ってやつになっちまうのかなーって思うんだよ」


(お兄さん、少し悩んだ後、返答)


「……どんな大人になっても、案外生きていけるから大丈夫、だって?」


//少し笑ったような声で

「……ふふっ。それ、疲れていきなり旅行に出たにーちゃんが言っても、あんまり説得力ねーぞ……いや、逆にあるのか?」


「まあ、ありがとな。あたしのこと、元気づけようとして言ってくれたんだろ」


「でもさ、それを言うならにーちゃんだって、この島にいる間くらいは、大人じゃなくてもいいんじゃねーか?」


//肩たたきを止める


「……よし、っと。こんなもんか。あんまり叩きすぎてもよくないって言うしな」


「じゃ、あたしは帰るぜ。また明日、遊ぼうな! おやすみ!」

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