トラック3 駄菓子屋(氷を削る音、雨音)

//SE 風鈴の音

「おーい、ばーちゃーん。いるかー?」


「……今はいねーみたいだな。この駄菓子屋のばーちゃん、しょっちゅう店空けてるんだよ」


「まあ、買いたいもんがあればお金置いてけばいいって言われてっから」


「じゃ、ここはあたしが奢ってやるよ! 気にするなら、旅館の売店でなんか買ってってくれよな!」


//きょとんとしたような声で

「何を買うのかって……かき氷だよ。海で遊んだら、駄菓子屋でかき氷を食って一休みする。当然だろ?」


//少し呆れたように

「はー、にーちゃん、そんなことも知らねーのか? 遅れてるな~」


「でもな、ここのかき氷は、ただのかき氷じゃないんだぜ。ここはな、自分で氷を削れるんだ」


「都会の駄菓子屋じゃ、させてくれねーんだろ? やー、もったいねーよ。こんなに楽しいことを知らねーなんて。ぜったい損してるぜ」


「かーちゃんたちは、来る度にあたしにやっていいって言ってくるけど、不思議だよなー」


「にーちゃんのぶんもあたしが削ってやってもいいけど、どうする? やるか?」


(お兄さん、少女に任せると言う)


「そっか、やらないのか……本当にあたし一人で楽しんじまうからな? 本当にいいんだな?」


(お兄さん、肯定)


「よっしゃ、それならあたしがうまいかき氷、つくってやるからな! そこに座って待ってろよ」


「氷の塊を置いて、動かないように挟んで……回すっ。ふんふんふんふんっ」


//SE レバーを回転させ、氷を削る音


「……うーん、できたけど、ちょっと形が悪い気がするな。もう一つ作るから、待っててくれよな。うおおおおおおおっ」


//SE 再び、氷を削る音


「よし、完成。我ながら良い出来映えだぜ。こっちのほうがよくできてるやつだから、にーちゃんにあげるな!」


「にーちゃんはシロップ、どれにする? あたしのおすすめはイチゴだぜ。あー……でもハワイアンもいいよな。なんかこう、夏って感じでさ」


「にーちゃんはそれにするのな。それなら、あたしはこっちにするか。じゃあシロップをかけて……と。にーちゃんも溶ける前に早く食おうぜ」


//少女、隣に座る

「いただきます……うん、つめてー! でもうめー! やっぱ夏に食うかき氷は格別だよな!」


「あ。でもあんまし勢いよく食うなよ。暑くて溶けるからって急いで食うと、頭がキーンってなるんだからな」


//SE かき氷を食べる音


//しばらく黙々と食べた後、間を置いて

「そーいやさ、かき氷のシロップって、全部同じ味って聞いたことあるけど、やっぱそんなはずねーよなー」


「なあ、そっちの試しに食っていいか? 一口貰うな」


「……うーん、同じような、違うような、やっぱわかんねー。にーちゃんも食ってみろよ。ほら」


(お兄さん、差し出されたかき氷を食べる)


「な、わかんねーよなー」


//SE 食べる音


「はー、ごちそうさま。じゃあ、次はどこにいくか……って……」


//SE 雨、ポツポツと降る

//SE 雨、勢いを増してざーっと降る


「急に降ってきたなー。まあ、歩いてる時じゃなくてよかったか」


「どうせすぐ止むだろうし、ここで雨宿りさせて貰おうぜ。止まなかったら……そんときはそんときで」


//雨音を聞きながら、少し無言


「昔はさー、こんぐらいの雨なら、走って家まで帰ったんだけどさ。傘忘れたときとか」


「にーちゃんは知ってるか? 雨が強くなくても、降ってる中で走ると目に水が入ってくるんだぜ。自分から突っ込んでるみたいなもんだからな」


「そんでさ、つい目を瞑って、転んで水たまりに頭から突っ込んで次の日に風邪引いたんだ。我ながらばかだよなー」


「まあ、いまでもちょっと走り抜けたいけど……今日は流石にやらないって。にーちゃんもいるからな。まー、気長に待とうぜ。時間はあるんだから」


//SE 強くなる雨音

//SE 風鈴の音

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