トラック2 いそあそび(岩場の波音)

//SE 歩く音


「そろそろ目的地だぜ」


//少し呆れたような声で

「にしてもびっくりしたぜ。にーちゃん、島に泊まりに来たのに、水着の一つも持ってきてねーなんて」


「やっぱ夏の遊びっていったら、海で泳ぐことだろ」


「まー、案内するって言ったのはあたしだしな、任せとけって。泳がなくても楽しいことはいっぱいあるんだぞ」


「……ほら、この林を抜けたらすぐだ」


//SE 岩場に流れる波の音


「よし、ついた。いやー、いつ来ても気持ちのいい場所だなー。岩場がゴツゴツしてて、波が打ち付けてて、かっこいいよな」


「こういう岩場になってんのは、昔に溶岩が固まってできたかららしいぜ。すげーよなー」


「あと、こーいうところにはな、生き物がめちゃくちゃいるんだぜ。とーちゃんは、天然の水族館だー、って言ってたっけ」


「それにさ、ここは波の音もいいよな。にーちゃんもそう思うだろ?」


(お兄さん、肯定)


「……やっぱそうだよなぁ。聞いてるだけで癒やされるっていうか。それだけで、この島に住んでる甲斐があるって気がしてくるぜ」


「まー、ここは結構波が荒っぽいほうなんだけどな」


「よし。それじゃーあたしについてこいよな。あ、足元には気をつけろよ。慣れてないと、足、滑らせやすいんだぜ」


「あたしは一度も転んだこと、ないんだけどな。よく来るし。ま、あたしについてくれば問題ないから。任せとけって」


//SE 岩場、歩く音


「えーっと、確かこの辺に……いたいた!」


「ほら、そこ、ちっちゃいカニがいるだろ! ほら、こっちに気づいて、両手を挙げて威嚇してるんだ。おもしれーよな!」


「あ、でも手を近づけるとうっかりハサミではさまれるから、気をつけろよ。ちっちゃいけど、けっこーいてーんだよ」


//自分の失敗エピソードを話してしまったことを誤魔化しつつ

「……まあカニはさておき、次行くぞー、次。あ、ウニいるじゃん、これ投げつけられるといてーんだよ!」


(お兄さん、食べられるウニなのか尋ねる)


「ん……食えるのかって? 前に食ってみたことあるけど、このへんのはあんまおいしくなかったなー。おすすめはしないぜ」


「他はねーかなー。あー、確か岩場の間の、水が溜まっている場所に……」


「お、いたいた。よし、ちょっと待ってくれよ」


//SE じゃぶじゃぶ手を水につける音


「逃げ場をなくして、せーのっ……」


//SE 魚、ピチピチと動く音


「よっしゃ、捕まえた。へへ、上手いだろ。漁師の息子より得意なんだぜ」


「こーいう細いとこにいるのを狙えば、案外魚も素手で捕まえられるんだ。魚の名前は……なんだっけ。まーいっか」


「そーだ、折角だし、にーちゃんも持ってみるか? これならカニみたいに挟まれたりとか危ないこともないしな」


(お兄さん、手を出して魚を受け取ろうとする)


「……あ、触る前に、手、濡らしてもらってからでいいか?」


「魚って、人の温度でやけどすんだってさ。それ聞いたら、流石にちょっとかわいそうだろ?」


//SE 手を濡らす音


「ありがとな、にーちゃん。じゃ、渡すからな」


//SE 魚、ピチピチと動く音

//SE 魚、ぽちゃんと水に落ちる音


「あ……逃げちまったな。ぬるっとしてて、持つの難しかっただろ」


「握り方にコツがあるんだよ。それともしかして……ちょっとびびってたか?」


「ま、普段触ったことねーなら仕方ねーよ。にーちゃんも、慣れればすぐに捕まえられるって。あたしみたいにな」


「じゃ、次行くぞ、次! 他にも面白いもん、まだまだたくさんあるんだぜ。急がねーと、日が暮れちまうぞ!」

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