離島の少女とふたり遊び ~ひと夏の癒しの時間~

大宮コウ

トラック1 少女の誘い(ツクツクボウシ、風鈴)

本作は『第3回「G'sこえけん音声化短編コンテスト』ASMR部門投稿作品です。

コンテストの形式上、台本形式となります。

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//SE 風鈴の音

//SE ツクツクボウシの声

//SE 風鈴・ツクツクボウシの声、フェードアウト


//間延びした声で

「なー、にーちゃん。なー。なー。なーってば。なー……あ、生きてる」


//当然のように

「そーだよ。にーちゃんのことだよ」


「つーか、このロビーにも、そもそも今日泊まってる人もにーちゃん以外他にいないだろ」


「目開けてんのに、何回も声かけても気づかねーから、本当に生きてんのかビビったぜ」


(お兄さん、少女が誰か尋ねる)


「……あたしか? あたしは片瀬なぎさ。この旅館の一人娘だよ!」


「あ、にーちゃんの名前は宿泊者の名簿で知ってるから言わなくてもいいぜ!」


//少女、前のめりで

「そんでさ、にーちゃんっていま、暇だろ?」


「ここに来てから、今みたいにソファーに座って、ずーっとぼーっとしてるんだし」


「釣りに来たにしちゃー荷物が少ないし、お祭りの日はもっと先だし……」


//心底疑問のように

「……そう考えてみると、にーちゃん、ここに二日も泊まって何しに来たんだ?」


(お兄さん、息抜きにぼーっとしに来たという)


「……ただの息抜き? 休みをとって、仕事から離れた場所でぼーっとしに来たぁ? 」


「それでわざわざ船に乗って、こんな辺鄙な島に来たのか」


//少し憐れむような言い方で

「へんなの……にーちゃん、ヒマなんだな」


「でもさ、それってつまり、ここにいる間は暇ってことだよな?」


「そういうことなら、あたしがこの島を案内してやるよ!」


//矢継ぎ早に

「あ、遠慮なんかしなくていいからな! あたしもさー、いま、けっこーヒマなんだ」


「いつも遊んでたやつらは、親の手伝いがあったり、外に旅行に行ったり、ゲームしたり、なんだり……」


「とにかく、遊び相手がいなくてヒマなんだよ!」


//少しうつむきがちな

「や、本当はあたしもヒマじゃないんだぜ。ウチも繁盛してる時期ならもっと忙しくて、あたしもかーちゃんに手伝えーって言われてたけど……」


「でもいまのところ、にーちゃん一人しかいないし」


「だからさ、にーちゃん、一緒に遊ぼうぜ」


「にーちゃんは島をあたしに案内してもらえる。あたしは暇をつぶせる。うぃんうぃん、ってやつだろ? な? な?」


(お兄さん、押し切られて頷いてしまう)


「よっしゃ! じゃー決まりな」


「外で待ってるから、準備できたらにーちゃんもすぐ来いよ!」


//SE 木の床を駆け足で去っていく音


//SE 木の床を駆け足で近づいてくる音


「そーだ、大事なことを言うの、忘れてたぜ……」


(少女、周囲を確認する)


「よし、いないな」


//少女、小声で耳打ちする形で

「あのさ、にーちゃんを案内すること、かーちゃんたちには内緒にしててくれよな」


「知られたら、ぜっっっったい、怒られるから」


「いつもあたしがお客さんに話しかけてると、すぐにメーワクかけんなーって言ってくんだよ」


「あたしは別に、悪いことなんかしてねーのにな。あたしは親切心で誘ってるだけなのに、こっちの言い分も聞かないで言うんだぜ。ぜったい」


//離れて、普通の声量で

「じゃ、そーいうことで、たのむぜ! 楽しい夏休みにしよーな!」


//SE 走り去っていく音

//SE ツクツクボウシの声

//SE 風鈴の音

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