第40話:砦の視察

 俺は砦の視察に訪れていた。

 2500の兵士を動員して、柵や堀を作っている。


「お久しぶりです公爵閣下」

「ヤコブ殿か。急遽資材を集めてもらって助かったよ」

「いえいえ。お金をいただいているので当然のことでございます」


 とりあえず今回の砦の補強は、侵攻までどれだけ時間がかかるか測りかねていたので、ちょっと多めに払うことで急いで用意してもらった。

 少しでも補強に時間を掛けたかったからな。


「やつらも準備を始めたようです」

「とうとうか…」


 金羊商会の情報網で、包囲網貴族たちが食料などを集めだしたことが分かっている。

 まだ、物資集めの段階で、これから作戦準備と徴兵を行っていくことになるだろう。


 ヤコブは勝てますか?などとは聞いてこない。

 勝てなければ見捨てるだけ、勝てればいつも通り。この戦の勝敗を見守るつもりだろう。

 損得勘定で動くから致し方ないがな…。


「それにしても、よく働きますな彼らは」


 ヤコブの見つめる先には、砦で工事に勤しむ兵士たちの姿があった。

 まだ彼らは若いのに、よく働くと感心しているようだった。


「まぁエーリッヒやヘルベルトなどが訓練を施したし、給金を払っているからね」


 農民兵をこういった作業に従事させることはよくあることだが、こういう場合は農民兵は効率が悪い。

 っていうのも彼らは税の代わりの兵役や徴兵された関係でやる気があまりないのだ。まぁやる気がないから戦でも離反しないように騎士が睨みを利かしているのだが…。


「なるほど。それにしても公爵閣下もどうしてこのようなことを思いついたので?」


 これは探りを入れられているのか…?知識の出処を。


「貴族は貴族を。兵士は兵士を。農民には農民の仕事をやらせたほうが効率が良いと思っただけだ。ここまでとは想定していなかったがね」

「なるほど。確かに効率化は重要ですな」


 商人として、金銭勘定で動く彼らにとって効率とは馴染み深いものだろう。

 ヤコブも俺の説明で納得してくれていたようだった。


「では私どもはこの辺で。武運を祈ります公爵閣下」

「あぁ。またなにかあれば声をかけさせてもらおう」


 ヤコブはペコリとお辞儀をし、去っていった。

 武運を祈るか…。まぁ彼らとしても東部が安定し、税が免除されるうちの支配下を望んでいるのも当然ということか。


 それにしても対外情報を集める方法が金羊商会頼みというのもなぁ…。

 そのうち忍者みたいな組織作るか?

 そういった組織があれば情報収集も噂の拡散なども楽だと思うんだが、父上はもっているようだが俺にもほしい…。


 どっかに忍者落ちてないかな?

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