第36話:騎士とは
道から離れた平原で、ヴェルナーとクルトが対峙する。
俺が対決を条件に出したのは、武の名家として知られていたワーレン候の騎士の実力に興味があったからだ。
ヴェルナーは前屈みになりながら正中に剣を構え、クルトは右半身を前に出しながら、右手の剣は地面を指すように垂らした構えを見せる。
「攻撃は寸止めすること。オーラの使用も禁止。危険と判断したら、審判である爺が止めるため従うこと。良いな?」
そう告げると、二人とも首肯する。
「では、始め!」
俺は二人の対決を眺める。
まず真っ先に動いたのは、ヴェルナーだった。上段からの斬撃にクルトが下から合わせることで剣は甲高い音を立てる。二人の剣は組み合ったままで拮抗する。
ヴェルナーが一旦距離を置き、再度攻めてそれを防ぐクルトという構図が繰り返される。
「爺どう思う?」
まぁ俺も多少剣術を学んだので分かるのだが、体内でオーラを操る騎士の領域にはまったくもって分からん。
聞くところによると、オーラを感じるところから始まる。まぁ俺はこの時点で無理だった。その次はオーラを体内で操る境地。ヘルベルトとかヴェルナーがここだ。その次が剣にオーラを纏わせることができるオーラソードの境地。これは父上だが、前世の知識でニュアンス的に近い単語でいうと「身剣合一」ってところかな。
その次はあるのかどうかすら分からない。
見た感じクルトもオーラを操れる境地にはあると思う。
というか騎士になるための条件がオーラを操れることだからだ。
「ふむ…アイン様はどう思いますか?」
質問したのは、俺なんだけど…。
多分普段の鍛錬の成果を試されているんだな。
「ヴェルナーが攻めてるように思えるが、クルトのほうがうまく守っており体力に余裕があると思う」
そう答えると、ヘルベルトはうんうんと顎を触りながら頷く。
「そうですな。さすがはワーレン候の騎士、守りが固い。だが、それだけで不十分ですぞ。表情を見なされ」
俺は改めて彼ら全体を俯瞰するのではなく、クルトの表情に視線を向ける。
クルトは、汗など掻いてないが、なぜか苦しそうな表情を浮かべる。
だが、クルトが苦しそうなのを間近で見ていたのはヴェルナーだった。
体力的にも長期戦は厳しいと判断したヴェルナーは渾身の一突きを放つ。
素人目の俺に見ても分かる。
彼の守りの固い剣術からすると防ぐのは容易だろう。
だが、クルトは防がなかった。
シュパッ
クルトは軽く身を捻ってヴェルナーの突きを躱した。
突きを躱したあとは、そのままヴェルナーの首に剣を突き付け勝敗は決した。クルトの肩からは血が滴っている。
彼の守りの固い剣術と最後の攻防は、なんというかチグハグだ。
でも守るだけじゃ勝てないしそういうものなのか?度胸があるって考え方もできるか。
まぁあれほどの技量だから騎士としてもぜひ欲しい。
俺はクルト召し抱えることに決めた。
まぁ人材不足だから最初から決まってたけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます