第29話

俺たちは暫く休憩したあと、準備が整ったとのことで、パーティー会場へと案内された。

扉を開くと豪華絢爛な様相が見て取れる。

パーティー会場となった大広間は、遥かに高い天井とあちこちに飾られた高そうなインテリア。腐っても王家ということを実感できる。


大広間にいる人々は父上や俺たちをジロジロと見やるが、話しかけることはなく気味の悪さを感じる。


「国王陛下御入来です!」


継承権争い中のため、まだ王太子ではなかったっけ…。政治的アピールか。

大広間の奥にも扉があり、そこから一人の男が現れる。


俺はその人物を見た瞬間少し恐怖を覚えた。

この場に集まる誰よりも不気味なのだ。

金髪に豪華な衣装は確かに王族だと感じられるのだが、生気の感じられない肌に目の下のクマ。これだけ聞くと不健康そうなだけだが、なにより目がギラついている。

陛下と呼ばれた男は、近くにいたメイドからグラスを受け取ると、一つ咳払いしてから話始める。


「…今日はみなよく来てくれた。今年こそは、大公を滅し王家の威光を取り戻そうではないか。今日はみなの団結を祝って乾杯」


陛下と呼ばれた男が乾杯の音頭を取ると、みなみなが拍手で応えた。

俺達と父上はしなかったけどね。


陛下と呼ばれた男は、拍手が終わるとこちらに歩いてくる。


「…君がバルティア公爵か」

「はい。然様です」


ここで間違えっても、そうです陛下や殿下なんて言ってはいけない。言葉遣いには気を付けなければ。


「…今日はよく来てくれた、ささやかではあるが楽しんでいきたまえ」

「はい。お心遣い感謝いたします」


俺は胸に手を当てお辞儀する。

相手もさしてこちらに興味がないのか、一つだけ頷くと何も言わずに父上のほうへと向かった。おそらく伯爵よりこちらに先に挨拶することで爵位に敬意を払えよってことを伝えたかったんだろう。


父上の周りには既に、陛下と呼ばれた男と多くのが人だかりができている。

俺の方には何人か挨拶にきたぐらいで、今は誰もいない。


彼は気づいてるんだろうか?自らの行いが王家の権威を失墜させていることに。公爵家も元々は王家の血も流れているが、こうも放置されては王家の血も権威も、舐められてしまうと思うんだがな…。

思い出すのは彼の風貌だ。不健康そうな見た目にぎらついた瞳。

あぁ。国王になることに取りつかれているんだな。それこそ公爵を乗っ取った伯爵に力を貸してほしいと頼むほどに…。

乱世が終わらない原因はこれか。


俺はそんなことを考えていると、一人の男が声をかけてきた。


「バルティア公爵殿ですか?」


それは金髪の偉丈夫で、人を惹きつける雰囲気を出していた。

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