第28話:迫害
「王都が見えてきましたぞ」
俺は爺に声を掛けられ、馬車の窓から王都を眺める。
大きな川が一本走っており、その横に広大な都市が鎮座している。
王都は、王城とその周囲に大きな屋敷などが立ち並び、それを囲むように城壁が周囲をぐるりと囲んでいる。
城壁の外にも街並みは広がっており、様々な建物が利便性などお構いなしにカオスのように混在している。
建物もヨーロッパの古い町並みといった感じだ。
「あれが王都か…」
バルティア公爵領の領都もそれなりに大きかったが、王都はそれよりも大きい。
王国の歴史などで教会から借りた本で実際にどんなものかは大まかには知っていたが、こうやって実際に見るとその大きさなどを実感する。
「大きいですね」
「あぁ…うちの3倍くらいはあるんじゃないかな?」
そんな王都への街並みに関して意見を交わしていると、駆けてくる騎馬の音がし、確認のために前方に目線を向けると、騎馬隊が我々の進行方向を阻害していた。
騎馬隊の先頭の者が下馬すると、声を張り上げる。
「バルティア公爵様とヴァイワール伯爵様とお見受けいたします!私はポール・ノルデン子爵!王命により王都よりお迎えに上がりました!」
「…あぁ。私がギルバート・ガド・ヴァイワール伯爵だ。では王都までの道案内をお願いしよう」
「はっ!お任せください」
そう言って、彼ら騎馬隊に先導される形で、馬車隊は動きだした。
例の先頭の男の名前は聞き覚えがあるなって思ってたら…ついこのまえ、飲んだワインがノルデン子爵領のものだったな。あそこって王太子派閥だったんだ。
程なくして王都に入った俺たちだが、外から見るより内部は複雑になっていた。
だけど、さすがに複雑すぎてもよくないのか、貴族が通る王城方面へと向かう道は、多少かくかくしていたが、スムーズになっていた。
王城とその周囲の貴族街を守る城門の前に到達すると、検閲などもなく門は開かれ、通される。やはり王都というだけあって城壁も城門も立派なもので、城壁は6mくらいかな?城門も鉄製で、なかなかに分厚い。
城門をくぐると、さっきとは打って変わり、整然とした街並みが広がっている。
建物のひとつひとつが大きい。道もまっすぐに引かれ、通りゆく人々も着飾っていた。
俺たちは王都に屋敷なんて持ってないので、そのまま王城へと案内される。
王城もでかいが、初めて来るのに既視感を覚える。
あぁ…。うちの領都の城と似ているのだ。もちろんスケールは全然ちがうけどね。
王城へ入城して、馬車を下りた俺たちはそのまま一室へと案内される。
歩いている最中もすれ違う、貴族に興味深そうな視線を浴びるものだから、少し疲れてしまった。
「では、こちらで。晩餐会が始まるまでお休みください。なにかありましたらメイドにお申し付けください」
「いや、メイドも大丈夫だ。うちには彼女がいるんでね」
そう言ってミミを指さす。
ノルデン子爵は、一瞬ちらりと確認し目には侮蔑の感情が籠っていた。
「…畏まりました。外には護衛のものがおりますので、なにかあればお声がけください」
俺は何も言わず頷くと、ノルデン子爵は部屋を出て行った。
ちなみに父上とは別室で、別の部屋を充てられている。メイドは追い出したが、監視はまだされてるかもしれない。
だけど俺はソファーに倒れ伏した。
2週間の馬車生活…まじで疲れたぁ…。
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