第27話

厳しかった冬は終わりを迎えようとしていた。

みな家から出ないということもあり、政務などもほどんどなかった。

冬の間は教会に赴いて本を借りたりして過ごしていたが、やっと終わったかという気持ちでいっぱいだった。

公爵家の城って前世でも見たことあるヨーロッパ風の城なんだけど、戦争などに備えて木材とか使ってないし、石だからマジで寒いんだよな…。


「公爵閣下。ヴァイワール伯爵様が到着されました」

「すぐに向かう」


春先の王太子派パーティーに参加するため、父上と合流する。

雪解けしつつあり、まだ肌寒いということもあり馬車で向かうことになった。護衛の騎士や兵士たちは馬車の外で護衛だ。かわいそうに…。

ちなみに、今回エーリッヒは領主代行ということでお留守番で護衛は、ヘルベルトとヴェルナーだけだ。まぁ護衛のほとんどは父上の騎士や兵で固めてるから最低限だけだ。


馬車には俺とレイナ嬢と獣人メイドのミミが同席している。

なんか公爵家の馬車って豪華なんだよな…見た目が。

黒に車体に金色の紋様が施され、家紋がデカデカと描かれている。

父上の乗ってる馬車よりも見栄えがすごいので後ろめたさを感じる。


これって、もし襲撃されたら俺らの馬車が攻撃されないか…?

まぁ騎士も護衛として就いてるから大丈夫だよね。たぶん。


「しゅっぱーーつ!」


外で、今回の護衛隊を率いる騎士が高らかに宣言すると、ゆっくり馬車が動き出す。


「王都までどのくらいでしょうか?」

「ちょっと遠回りはすることになるけど、2週間ほどかな」


すでに王都までの経路の確保は王家の仲介もあって、王家寄りの貴族家の領内を通ることで、解決している。

そのため、すこしばかり日にちがかかることになってしまったが、致し方ない話だった。


そして始まった王都への道のりだったが、俺はこの旅路に向けて一つ準備をしていた。

それは、トランプだ。トランプを用いて3人でトランプで遊んでいた。


このトランプだが、ハイネマン司教に紹介してもらった絵師に書いてもらった。

トランプもこの世界にはなかったが、この乱世ではな…。

前世の知識で思いつくものってあんまりこの乱世では売れない感じがする。貴族も平民もあまり金銭的余裕がないからだ。金銭的余裕がなければ嗜好品や娯楽などを買うのは難しい。

火薬とかも水注意の火魔法廉価版として売れるかもしれないが、火薬には使い道があるし、これが広まっても困るので売ることはできない。


だが、こんな乱世でも飛ぶように売れるものが2つある。鉄と食料だ。

食糧は三圃制を導入してるし、そのうち輸出とかしたいけど一体どこに売るんだって話だよな…。周り仮想敵だらけだし。

結局は目の前のことから少しずつ解決していくしかない。


「あ。上りです」


獣人メイドのミミは既に上がっており、レイラ嬢も上がったようだ。

…なんか考え事していたら、ドベになってました。

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