第22話

別視点です。


ヴァイワール伯爵家の執務室に3人の男が集まっていた。

ギルバートとヨゼフと老執事の3人だ。


「アイン様も成長なされましたね」

「だが、あれほど政治的手腕があるとするならば手元に置いておけば良かったかなと思ったが」


どうしても領内のあちこちを巡る伯爵家の当主としては不在時に政治を取り仕切ってくれる存在はありがたいが、やはり無理だろう。

アインツィヒに政治的な手腕を任せてしまうと、それはそれで権力が分散して後継者はヨゼフで決めているのだが争いの種になってしまうかもしれない。


「俺には、難しい話は苦手だからルメールやアインがいると心強いんだがなぁ」

「あやつらもヨゼフを認めているからこそ、継承権を放棄し他家に入ったのだ。致し方あるまい」


まぁルメールの場合は喜々として継承権を放棄したが。

ギルバートは諭すようにヨゼフへと話しかける。


「他家へと入ったが、それでも兄弟は兄弟だ。あやつらもお前を支えるし、お前もあやつらを支えねばなるまい。兄弟という血の繋がりを大切にせねばならん」

「あぁもちろんだ父上」


血族として兄弟で支え合わなくてはならない。兄弟で反目しあえば、王家のことなど笑えなくなってしまうから…。


「アイン様の今後に期待ですな」

「あぁ優しすぎる所はあるが、面白い弟だ」


三人は最近のアインの成長を喜んでいた。会合での発言も、領内における新たな試みも。そして公爵家の忘れ形見のレイラ嬢を手懐ける手腕を。


「…有名な剣士も、計算高い魔法使いもこの乱世を終わらせることが出来なかった。案外ああいう男が終わらせるのかもしれないな」

「伯爵様それは…」


言ったギルバート自体も、すまん。なんでもないと言って誤魔化した。

まるで、ヨゼフや、ルメールよりも期待しているかのような…。

剣も魔法の才もないのに、これほどまでに可能性を感じてしまうのはなぜなのだろうか?言葉では説明できないことにもどかしさを感じるギルバートだった。


「ならば俺はあいつの兄として恥じぬよう精進しよう!」

「あぁ。そうだな精進せよヨゼフ」


ヨゼフの機転で場は元の雰囲気を取り戻した。

乱世の終わった世界…どんな世界が広がっているのだろうか?

そんな妄想をしながらギルバートは手元にあったワインのグラスを飲み干した。

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