第7話
俺たちは顔を出すだけで本来良かったので、戦後処理など手伝うこともなく帰路に就いた。戦に出る必要は本当になかったんだけどね…。
喜んで飛び出して言った二人はというと
「いやはや年甲斐もなくはしゃいでしもうたわ」
「爺ちゃん。気を付けねーとまた腰やるぞ?ま、その時は俺が代わりに活躍してやるけどな!」
「言うようになったではないか!初めての戦で上手くいったからと言って、慢心するでないぞ。ま、儂の教え方が良かったのじゃな」
二人は、和気あいあいと会話していた。
戦に参加できたことが喜ばしいのはもちろん、戦功を立てたので少しばかりではあるがヴァイワール伯爵家より賞金が出ていた。
二人の会話を聞きながら、戦いを思い起こす。
「それにしても、戦というともっと柔軟というか…なんか正面からぶつかって削り合いってのは予想外だったな」
なんとなく。なんかこう戦術や陣形なんかがあるもんだと思っていた。確かに魔法による先制攻撃で動揺を与え、突き崩すのは道理だと思うのだが。
ヘルベルトは俺の言おうとしていることに心当たりがあるようだった。
「アイン様。兵士の大半は農民ですぞ。指揮する騎士の技量にもよるでしょうが、基本的には前進と撤退しかありませぬ」
あぁそっか。彼らは戦う術を本格的に学んだ兵士ではないのだ。とりあえず簡単な指示で形を保てればそれでいいということか。
だがなぁ…。なんというか勿体ないように感じる。肉壁にしている農民の彼らも結局領内で農作物を作る国力の源だ。兵農分離ではないけど志願者集めて訓練させて兵隊作れないかな?
こういう時、相談するのに便利な相手は生きる知恵袋爺だ。
「爺。このような戦を続ければ国力は下がってしまう。農民たちから兵を集めて訓練を施してはダメだろうか?」
そう問いかけると爺は渋そうな顔をする。
「農民たちからですか…?う~む。儂は何とも思いませんが、他家や伯爵様の騎士は嫌がるでしょうな」
「なぜだ?彼らとしても戦力が増えるならありがたいことだと思うが」
「出世の機会や取り分を奪い合うことになりますな」
?なんかこう頭の中で会話がかみ合ってない気がする。なぜだ。
農民出身の兵士たちが騎士と競い合うことか、見込みをある者はもちろん騎士に取り立てても良いが…あぁそっか。
「爺。別に農民兵を騎士として教育するつもりはないぞ。見込みがあるなら別だが、彼らには純粋に戦う術だけを訓練させようかと思っている」
この世界における騎士とは戦う職業であるが、傭兵なんかもこの世界にはいる。だが、農民の兵士や傭兵と騎士の根本的な違いは教養だ。
騎士は貴族の下で徴税官や補佐を行う。それ故、教養が求められ世襲制の騎士が多い理由となっている。
「なるほど…おもしろそうですな…しかし、なんとも金のかかりそうな話ですな!」
笑うヘルベルトに俺も苦笑いで返すしかできない。
うちの領内の経営状況では難しい話だしな。
「アイン様!その兵隊が出来たら俺に任せくれ!訓練も俺がするから!」
ヴェルナーが興奮気味に話すが、彼が訓練するところを想像すると、とんでもないスパルタになりそうな気がする…。
「機会があればな…?」
そう言って誤魔化したが、もしそうなればヘルベルトとエーリッヒに任せるとしようと俺は心に誓った。
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