第56話

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「だめぇ! あさとしくんの前で、手ブラなんて、えっちすぎるよぉ! お願い恋夏ちゃん、ブラジャー返してぇ!」


 涙声で懇願する恋春は、突然ハッと目を見開いて固まった。


「待って! そういえば、コックピットの中の映像って、カメラで指令室に届いているんじゃ!? と、いうことは……指令室のみんなに、わたしのブラも、パンティも、しかも、こんなえっちなの……」


 恋春の顔は赤面と青ざめが混じり、赤紫色へ突入した。


「いっやぁああああああああん! わたしは勢いに任せてなんてことぉおおおお!」


 恋春は絶叫し、涙をまき散らした。


「あれ? 確か内部カメラはさっき恋夏が切って――」


 たおやかな手が俺の口を塞ぎ、恋夏は声をはずませた。


「そうそう、だからお姉ちゃんてば本当に大胆だよねぇ♪ 服を脱ぎ始めた時、わたしついにお姉ちゃんがセクシー路線に目覚めたかと思ったもん♪ はーい、指令室のみんな見てるぅ? 本邦初公開♪ 奇跡のスレンダー爆乳爆尻女学生♪ 舞花恋春のパンイチ手ブラのセミヌード映像だよぉ♪」


「言わないでぇええええええ!」


 体を小さく折りたたんで床にへばりつき、お尻を振る恋春に、恋夏は犯罪臭ただよう恍惚の表情を浮かべた。


「あぁ……自分の裸を見られていると勘違いして悶えるお姉ちゃん、エロい、うるおっちゃう、コナツさん、うるおっちゃう……だめ、もう自分を抑えられない、こんな機会、めったにないもん、ここは徹底的に……ッ!」


 恋春の目がギラリと邪悪に光った。


「おっとぉ♪ そういえばパンティを見られるのも恥ずかしよねぇ♪」

「いやん! だめぇっ! やめてぇっ! 引っ張っちゃダメェ! パンティが脱げちゃうよぉ!」


「ふふふ、抵抗してもダメダメ♪ だって今日のお姉ちゃんはヒモパンなんだもん♪ ヒモパンのいいところはわぁ、女の子がいくら抵抗しても、足を閉じても、腰ひもさえほどいちゃえば、簡単に引き抜けるところだよね♪」


 恋夏の両手が、抵抗する恋春の腰からテンポよくひもをひっぱり、ふたつの結び目を解いていく。


 もはや、恋春はパンティをはいていない、事実上の全裸である。


 パンティをはぎ取ろうとする美少女、それに抗う美少女、なんてエッチな光景だろうと、俺はドキドキが止まらなかった。


 おかげで、恋夏を止める余裕もなかった。

 俺が無力な自分に歯噛みする間も、恋春の痴態はとどまるところを知らなかった。


「あぁあああああ! わたしのパンティが! だめぇ! 引っ張らないで! 脱げちゃう! 脱げちゃうよぉ! 待って恋夏ちゃん! お姉ちゃん、本当にダメなの! そのパンティが最後の砦なの! それがなくなっちゃったら! お姉ちゃん、本当にすっぽんぽんなのぉ! お姉ちゃんの秘密が、丸見えになっちゃうぅうう!」


 スス、ス、ス、スス。


「ダメェエエエ! 指令室のみんなも見ているにぃいいい! 指令室には、男性スタッフだってたくさん! あっ! あっ! 見ないで! 電源切って! お願い指令室のみんな! みんなにひとかけらでも良心があるのなら! わたしの裸を見ないでぇえええええええ!」


 するりんっ


「あぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


「はい、すっぽんぽん♪」

「パンティィ返してぇええええええええええええええええええええ!」


 叫んで、恋春はおっぱいから両腕を離し、両手を伸ばしながら立ち上がった。


「いんぼぁぁああああああああああああああああああああああ!?」

「え?」

 俺は恋春の裸体を横から見ていたため、彼女のロマンがご来光することはなかった。


 が、大玉メロンも顔負けの爆乳が、先端の愛らしいツンとしたサクランボまで丸見えだった。


「アァアアアアアアアアアアアアン! みられたぁあああああああああ!」


 恋春は駅のホームの時とは比較にならない量の涙を流して、両手をおっぱいに当てて亀のように丸まった。


「うえぇええええん! 見られちゃった! みられちゃったよぉ! あさとしくんにまた、それに、指令室のみんなにもぉ! わたしのおっぱいを、乳輪も、乳首も、それに、わたしの下半身の秘密まで、なにかもぜんぶぅ! ウェエエエン! 誰にも知られたくなかったのにぃいいいい!」


「ふふ、そうだよお姉ちゃん。お姉ちゃんの全裸映像をいま、指令室のみんなで鑑賞中なんだよ。この映像は録画されて、きっと男性職員みんなで共有されて、ハッピータイムの燃料になるの♪ だけど指令室のみんなにもさんざん迷惑かけたんだから、これぐらいは当然だよね♪ あ、だけど動画がネットに流出されたらどうしよう♪」


「それだけはダメェ! お願い指令室のみんな! 今の映像は削除して! 録画やコピーはしないで! お願いだからぁ!」


 真っ赤な顔で涙を流し懇願する全裸の爆乳美少女、という童貞なら一撃で性癖をこじらせること間違いなしの光景に俺は性癖をぐりぐりこじらせながらも、流石に可愛そうなのでネタバラしをした。


「安心しろ恋春、全部恋夏の嘘だから」

「へ?」


 涙をぼろぼろ落とし、とうとう鼻水までたらしながら、恋春はキョトンとまばたきをした。


「ステータス画面は見ていたけど、恋春が服を脱ごうとした時点で、恋夏が内部カメラを切ったから、ここの映像は指令室に届いていない。俺がマイクも切ったから、声もな」


 やりすぎではないか。

 せっかく仲直りした姉妹の絆が粉砕されないか、俺がドギマギしていると……。


「よ、よかったぁぁぁー……」


 盛大に安堵の溜息を吐きながら、恋春はふにゅんと微笑んだ。

 白くて丸い、大きなお尻をぺたんと床につけて、背筋を伸ばして、見えない背もたれに体重を預けるように体を後ろに傾ける。


「えへへ、ごめんねお姉ちゃん。でもこれであおいこだよね」


 ――おあいこのバランスぅッ!


「うん、これでおあいこだよね、ありがとう恋夏ちゃん♪」


 ――ここに天使以上がいたぁあああああああ!


 一瞬だけ、マジで恋春と結婚したくなるほど恋春が天使様だった。


「まぁもっともぉ」


 恋夏は頬に指先を当て、あざといぶりっこ仕草でむぎゅっと脇をしめた。


「あさとしくんにみられちゃったのはほんとだけどね♪」


 恋春の視線が、俺を見上げてきた、それから自分の、モロ出しのおっぱいを見下ろしてから、あらためて赤面。赤みは耳や首筋、鎖骨を超えて、肩やおっぱいのデコルテ部分にまで広がった。


 同時に打ち上がった悲鳴に、俺は鼓膜を破かれるかと思った。


   ◆


「あ、あさとしくんっ、帰る前に着替えるから、むこう向いてて!」

「お、おう」

「絶対に、こっちみちゃダメなんだからねっ!」

「はい」


 可愛い声で念を押されると、見たい衝動が強くなる。これが背徳感というものか。

 けれど、背後からは衣擦れの音がしない。


 むしろ、熱いくらいの体温と足音が近寄ってきた。

 そっと、耳元にぬくもりあふれる吐息がかかった。


「あさとしくんは……わたしのカ、カラダ、で、お礼になるの?」

「ッッ、な、なる、ぞ。俺も男だし、恋春は、可愛いし……」

「ぁぅ……ありがと、でもねお願い……これだけは信じて……」


 哀願するような涙声で、恋春は囁いてきた。


「わたし、えっちな子じゃないんだからね……」


 鼻の奥に血の匂いが充満した。


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●今日の雑学 

 おっぱいは9割が脂肪、1割が乳腺だが、日本人は乳腺の割合が多いデンスブレストというタイプのおっぱいが多く、乳がん検査がしにくいらしい。

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