第54話

フォロワー150記念爆速更新!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「恋春!?」

「恋春お姉ちゃん!?」


 視界カメラに映った映像に、俺と恋夏はそろって声を上げた。

 どうしてここに? という疑問はすぐに払しょくされる。


 彼女は午後からフリーだった。

 なら、街で遊んでいても不思議ではないだろう。

 ここにいるのは、ただの偶然だ。


「ハッチを開けて!」


 有無を言わさぬ強い口調と、彼女の目に宿る強い意志に、俺はギュノスの胸部ハッチを開けた。


 コックピット内壁面に映る映像が消えて、目の前の壁が開いた。


 そこには、頬を涙に濡らし、傷つきながらも耐える恋春の姿があった。

カメラ越しではなく、肉眼で目にすると、恋春の感情が持つ熱量を肌で感じられるように思えた。


「わたしを乗せて!」

「恋春、お前何を言っているんだ!? お前には無理だ!」


 前だってそうだろ、という言葉は飲み込むも、それが本音だった。

 彼女は一度、パイロットから離れた。


 そして恋夏と一緒にいられないことのほうが辛いと戦場に戻り、だけどまた離れた。


 だから、ここでまたこちら側に戻っても、彼女が傷つくだけだ。


「そうだよお姉ちゃん! もうわたしだってあんなお姉ちゃん見たくないよ!」

「恋夏の言う通りだ。ここで乗ったらお前、また――」

「うるさい!」


 恋春らしくない、強い言葉に、俺は押し黙った。

 恋春はキッとこちらを睨み上げると、力強い足取りで歩み寄り、ギュノスの装甲をよじ登ってきた。


「こ、恋春!?」

「わかってる!」


 感情を叩きつけるように、恋春は叫んだ。


「わたしにパイロットが向いていないなんて、わたしが一番わかっているよ!」


 ハッチに足をかけて、体を持ち上げ、コックピットの中に入って来る。


「周りからの期待が辛い、助けられなかった人への責任が苦しい、だけど恋夏ちゃんとは一緒にいたい!」


 恋春は肩で体当たりをするようにして、俺を後部座席から押し出してきた。俺も、抵抗せずに席を空ける。


「それで逃げて、戻って、また逃げて、また戻る? ダサいよね?」


 続けて、恋春の手は恋夏の肩を押して、サドルような前部座席から、後部座席へ押し込んだ。


「へ? え? お姉ちゃん? 待って、お姉ちゃんいま、パイロットスーツ着ていないから操縦できないよ? だからここはわたしとあさとしくんに任せて」

「ッッ」


 恋春はその場で服を脱ぎ捨てた。

 ブラウスを、シャツを、スカートを、靴やソックスまで気風よくコックピット内に脱ぎ捨て、性格とは裏腹なわがまま豊満ボディをさらけ出した。


「恋春! おま、なにを!」


 ギュノスは本来裸で乗るもの。

 パイロットスーツはシンクロ率を上げるものではなく、全裸でなくてもシンクロ率を下げないためのものに過ぎない。


 だから、理論上は下着姿でも動くだろう。

 髪やまつげと同じ、ピンク色のブラジャーとパンツに取り乱す俺に、恋春は声を張り上げた。


「もう、期待とか、責任とか、どうでもいい! 他の人なんて関係ない! わたしはね、あいつらに言ってやりたいの!」


 涙を散らしながら、恋春は凛とした眼差しで俺を見下ろしてきた。


「妹をいじめる奴は、わたしが許さないって!」


 恋春は桜色の髪をひるがえすと、前部座席にお尻を乗せて、左右のハンドルを握った。


「恋夏ちゃんを守るのは、恋夏ちゃんの隣に立つのは、わたしだぁあああああああああああああああああああ!」


 恋春の、姉としての魂の叫びにギュノスが呼応。

 ハッチがしまると、ハンドルだけでなく、コックピット内部全体が虹色に光り輝いた。


 ステータス画面では、半壊していたはずなのに全部位の出力がカンストしている。


「シンクロ率64パーセント!? おい恋夏! これって」

「世界記録、超えているよ……」


 愕然とする恋夏を置いてけぼりにして、ギュノスは上半身を駅のホームが引き抜き、立ち上がった。


「ごめんね二人とも。わたしのせいで振り回して。だけどあさとしくんの言う通りだよ。離れて分かった。戦うことより誰かを救えないことが怖い。だけどそれ以上に、何もできないのが一番つらい。恋夏ちゃんが傷つくのを、ただ黙ってみているだけなんてできない!」


 振り返ると、大通りのほうでは味方機が次々大破されていた。

 が、恋春がハンドルをひねると、ギュノスは体を沈め、爆発的に加速した。


 地面が抉れ、土砂が巻き上がる。


 視界に映る景色は一瞬で背景に流れ、遠くの巨影が拡大。

 視界にいっぱいに迫りながら渾身の右ストレートをアサシンにブチ込んでやった。


「みんなは下がって! こいつらはわたしと恋夏ちゃんで倒すから!」


 恋春の呼びかけに応じて、みんなは謝罪やお礼を言いながら後退していく。

 一方で、アサシンは再び姿を消した。


「くそっ、あいつまた。これじゃどこから来るかわからないぞ!」

「ふたりはわたしの斜め後ろを見ていて!」


 恋春は鋭い声で指示を出した。


「お姉ちゃん、何か考えがあるの?」

「うん。わたし、ずっと駅のホームから二人の戦いを見ていたんだけど、だから気づいたのかな。変だと思わない。なんでアサシンは姿を現すの?」


 言われてみればそれもそうだ。

 常に姿を消して戦えばいいのに。


 俺の目の前、恋春にとっては左斜めうしろからアサシンが現れた。

 けれど、恋春は俺と視界を共有しているように、ヒート高周波ブレードを背後に突き出してアサシンを突き刺した。


「つまり、時間制限か機能制限だな?」


「そうだよ。姿を消せるのは十数秒か、もしくは消している間は他の攻撃ユニットを使えないんだと思う。これだけの高性能システムだもん。CPUのスペックを全部割り振らないと使えないのかも」


「そういえばさっきから、攻撃の瞬間だけは姿を現すよな」

「うん。だからみんなで全方位に気を配っていれば……」


 姿を消したアサシンが、こんどは頭上から落ちてきた。

 それを必要最小限のステップで避ける恋春。

 地面にストンピングキックを突き刺し動きの止まったアサシンに、灼熱のブレードを叩きこんだ。


「対処はかんたんだよ!」

「■■■■■■■■■■■■■■!」


 獣の咆哮のように、鋼のきしむ音を鳴らし、アサシンはバックステップで距離を取った。


 今度は消えない。

 どうやら、もう手品は通じないと悟ったらしい。


「これで、トドメぇ!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●雑学 同じカップ数なのに見た目の大きさが全然違う人がいるけどどうして?


 ブラのカップはトップバストと、胸の下周りのアンダーバストの差で決まります。

 差が10センチでAカップ、12・5センチでBカップ、15センチでCカップと2・5センチおきに上がります。

 ですが例えば、同じ10センチ差でも、円周10センチのボールと20センチのボールは大きさが全然違いますが、円周100センチのボールと110センチのボールではぱっと見、差がわかりませんよね?

 同じ理由で、

 小柄な細身の女性でアンダーバスト60センチトップバスト75センチのCカップは大きく見えますが、

 大柄でプラスサイズ体形で、アンダーバスト90センチトップバスト105センチのCカップは小さく見えます。

 また、女性によって胸の形も違い、奥行き、高さ、横幅のあるなし、谷間を作っているかどうか、で印象はかなり変わります。

 なので、同じ15センチ差のCカップでも別物に見えます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る