第34話 エロス34パーセント! 帰ってきたヒロイン!
♥64記念爆速更新!
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俺は芦山田の頭を鷲づかんで、無理やり頭上を見せた。
そこには、さっきの数倍にまで拡大した黒い亀裂が広がっていた。
きっと、邪龍ニーズヘッグが召喚されるまで、もういくばくもないだろう。
だけど、芦山田は突然、勝利を確信したようにして喉の奥で笑い始めた。
「バカが、もうゲートは開いている。自然に閉じるまでは、オレでもどうしようもねぇ。ゲートを開いた時点で、オレの勝ちだったんだよ」
「お前!」
「殴りたければ好きなだけ殴れよ! 痛めつけろよ! ほらどうした? やれよ! けどそんなことをしてもニーズヘッグは止まらねぇ。女が大切なら、さっさと連れて逃げるんだな。地球の反対側まで逃げれば、一日でも長生きできるかもだぜ?」
「ッ」
芦山田の言う通りだ。
俺の目的はニーズヘッグを召喚させないこと。心愛たちを守ること。
芦山田を殴っても殺しても、無意味だ。
俺が打つ手を考える間に、頭上の亀裂は広がり、空間に黒い孔が空いた。
その奥で、赤い二つの光が怪しい輝きを放った。
何かが、ずるずると這い出して来る。
黒紫色のうろこに覆われた爬虫類の鼻先が、牙が、そして、血のように赤い瞳が、殺戮衝動の滾る眼光で世界をねめまわす。
禍々しい巨大な龍の威容に、俺は圧倒されてしまう。
――こんな化け物が、いるのか……?
同じ龍でも、ドレイタスとは別格だった。
こいつに比べれば、ドレイタスなど雑魚もいいところだ。
【システムが回復しました。スリープモードを解除します】
「よし、これでイケるわ! 全弾発射!」
アメリナの両手のライフルと、四門のオービットが一斉にニーズヘッグを捉えた。
放たれるレールガンとプラズマの弾幕は、狙い過たずニーズヘッグの右目を直撃した。
が、そこに出血は無く、鋭い瞳孔がぎょろりとこちらを見下ろしてきた。
「ウソ、でしょ……」
らしくない、絶望的な声を漏らすアメリナに、俺も絶望した。
今の攻撃で悟った。
仮に俺がアメリナを強化して、荷電粒子砲を眼球にブチあてても、きっとこの龍は倒せない。
ダメージは通るだろうが、逆上したニーズヘッグの癇癪ひとつで、俺らは木っ端みじんに消し飛ばされるだろう。
心愛たちを連れてどこまで逃げられるか。
俺は戦うことを諦めて、逃げる算段を始めた。
「くひひひひ。いいね、いいねぇその表情! さっきまでの威勢はどうしたよ!? さぁ、逃げろよ正義の味方様! もっとも、ニーズヘッグに目をつけられたらもうどうしようもねぇけどなぁ!」
コンテナから床に倒れ込み、血に溺れながら、それでも芦山田は有頂天に笑った。
「やれニーズヘッグ! こんな世界壊せ! オレに優しくない! オレが不幸にしかなれないこんな世界潰しちまえ!」
芦山田の願いを聞き届けるように、ニーズヘッグは空を仰ぎ、邪竜の咆哮を轟かせた。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!」
その口から放たれた漆黒の炎が装甲の天井を貫き、その熱量で周囲の天井も根こそぎ蒸発させた。
まるで核兵器だと俺が驚愕した直後。
赤い流星がニーズヘッグの左眼球を貫通し、右の眼球から抜けて行った。
「■■■■■■■■■■■■■■■■!」
「ニ、ニーズヘッグ!?」
芦山田が信じられないとばかりに名を呼んだ。
邪竜は断末魔のような悲鳴を上げて、だが生きていた。
恐ろしい生命力ではあるものの、己の不利を悟ったのだろう。
ニーズヘッグは巣穴へ戻る蛇のように、空間の孔へその身を沈めて行った。
「う、うそだ……何が!?」
答えを求めるように、芦山田は死線を彷徨わせた。
そして、彼女は俺らの前にいた。
「やれやれ、こいつが天井をブチ抜いてくれて助かったよ。おかげで狙いを付けられた」
リコリスの花のような薄紫色の長い髪、それがひるがえって、深紅の瞳に人間離れした、神秘的とさえいえる美貌がと目が合った。
モデル並みの長身に、アメリナ級のプロポーション。
それは、入学式の日に飛行機の背中で出会った少女、勇者リコリスだった。
「リコリス!?」
「やぁアサトシ、キミはいつでもピンチと一緒だね」
ビジネス口調でクールに告げるリコリス。
世界滅亡の危機を前にしても、彼女は平常運転だった。
彼女と再会できたことに俺が胸を高鳴らせる一方で、芦山田は抗議の声を上げた。
「う、嘘だ! こんな都合よく勇者が来るわけないだろ!?」
狼狽し、まくしたてる芦山田に、リコリスは事務的に説明した。
「本部から通報があったんだよ。トラブルが起きたからワイトキングの杖の護衛に参加して欲しいって。そしたら空間崩壊の気配を感じてね」
「そん、な」
ようするに、芦山田自身が呼び寄せてしまったと言うわけだ。
「くそっ!」
芦山田は床に転がるワイトキングの杖に手を伸ばした。
が、リコリスがドラゴカリバーを一閃。
杖に触れようとした手は、肘ごと切断されてしまった。
「ぎゃぁあああああああああああああ!」
肘の切断面を押さえて体を折り縮める芦山田を無視して、彼女は俺に向き直った。
「どうやら、今回も随分と頑張ったみたいだね。あとはボクに任せて眠っていいよ」
彼女の無関心な表情に、ふっと温かい笑みが灯った。
その声音のぬくもりに、俺は緊張の糸が切れたらしい。
彼女の言葉に甘えるように意識を失った。
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漫画、モンむすご8話3 の敵が爆乳過ぎてナイスです。
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