第32話 エロス32パーセント! 主人公TUEE!

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 爆音の残響が鎮まり、視界も回復してきた。


 その時、俺が目にしたのは多重バリアを展開して歯を食いしばるアメリナと、同じく多重結界の中で息を切らせる萌花だった。


 そして、俺のすぐ目の前に、砕けた岩の壁の残骸が転がっている。


「心愛!」


 岩壁の向こう側に、うつろな眼差しで佇む心愛の姿があった。

 彼女はぐらりと体を傾け、こちらに倒れ込んできた。


 俺はすぐさま彼女を抱き留めて、名前を呼びかけた。

 腕の中でぐったりと俺に体重を預ける彼女を見下ろすと、心愛は閉じたまぶたをゆっくりと開いてくれた。


 焦点の定まらないまなざしは俺を見つめ、ほのかに笑ってくれる。


「あさとし、よかった、無事、だったんだね……」

「心愛……!?」


 手に触れる熱い感触に気づいて、俺は目を疑った。

 俺の手は血まみれだった。

 見れば、彼女の背中は白くなまめかしい皮膚を失い、赤い肉が露出していた。


「心愛お前!」


 彼女は答えてくれなかった。

 浅いけれど息はしている。

 だけど、体は限界だろう。


「ッッ……」


 心愛は、自分と俺を守るように岩魔術を使ったのではない。

 まず俺を岩魔術の壁で守ってから、自分を盾にした。


 理由は明白。

 岩壁が外側にあったら、貫通した爆炎を、小さな自分の体では俺に余波を浴びせてしまう。


 だからまず、自分の体を盾にして、余波を岩の壁でシャットアウトする。

 そうすれば、俺に一切のダメージを与えずに済む。

 15歳の女の子が、自分の肌を犠牲にして、咄嗟に取った行動がそれだ。


 ――あの状況で、自分を盾にして俺を守って、俺の無事が確認出来たら気絶って……。


 優しいとか、慈愛に満ちているとか、既存の言葉では説明しきれない心愛の精神性、思いやりに、俺は筆舌尽くし難い感動と同時に、怒りが湧いてきた。


 こんないい子を傷つけた男への怒りが、どす黒い殺意へと変わっていく。

 だけど今は殺意を押し殺して、心愛の体に力を注ぎ込んだ。


 心愛の背中は白い光の膜に覆われ、徐々に再生が始まっていく。

 すると、薄い爆煙の向こう側で、男の高笑いが響いてきた。


「ははははは! すげぇ威力だな! 万年落ちこぼれのオレでこの威力! ワイトキングの杖の力は本物だぜ!」


 男は痛快そうに笑いながら、ワイトキングの杖を掲げた。


「ほんと、今まで辛かったぜ。昔から何をしても底辺で、努力しても報われなくて、普通の学校を卒業したあとパーティーを組もうとしたけど誰も組んでくれなくてやっと組んでくれたところでは雑用を押し付けられた」


 ぶっきらぼうな口調で自分語りをしながら、男はワイトキングの杖をほれぼれと眺めまわした。


「だけどある日、魔王軍幹部がパーティーメンバーを殺してオレをスカウトしてくれたのさ。オレの憎しみは武器になるってな」


 どこか自慢げに誇りながら、男は酔いしれるように徐々に声のボルテージを上げていく。


「ああそうだ! オレは恵まれた奴が大嫌いだ! オレが幸せになれないなら、みんな不幸になれ! お前らエリートのエリジオン生は特に嫌いだ! だからオレを入学させなかったエリジオンも、エリジオンが守るこの世界も潰す! 前回のドラゴンワイトは失敗だったけど、ニーズヘッグを召喚すればお前らは死ぬ。そして世界も滅びる」


 誰も聞いていない問わず語りのワンマントークショーに、萌花は怒りの声を上げた。


「ばっかじゃないの! ワイトキングの杖は万能じゃない! ゲートを開くだけでニーズヘッグはあなたの言うことなんて聞かないんだから!」


「それがいいんじゃないか」

「……え?」


 ぴしゃりと即答した男に、萌花は困惑した。


「コントロールする必要がどこにある? ニーズヘッグは好きに暴れさせる。俺は支配したいんじゃない! 世界を破壊したいんだよ!!」

「狂ってる……そのせいでどれだけの人が、それにお姉ちゃんまで」

俺の腕の中で意識を失っている心愛を一瞥して、萌花は目に怒りの涙を溜めた。

「あなたなんて、ツキシロたちがやっつけちゃうんだから!」


 だが、その意気込みに水を差すように、アメリナのイカロスが電子音声を流した。

【バリア機能の超過使用により過負荷増大。スリープモードに移行します】


「くっ、無理をさせすぎたわ」

「だったらツキシロだけでもっ」


 けれど、彼女の闘志に反比例して、彼女がかざしたカードに宿る光は弱かった。

 白い光は点滅して、今にも消えてしまいそうだ。


「っっ」

「はっ、どうやら、テメェの霊力の今の結界で使い果たしたみたいだな。オレはもうバスティの助手じゃねぇ、魔王軍最強の魔術師、ワイトキング二世、芦山田新次郎だ!」


「黙れよコソ泥野郎」


 俺が冷たく告げると、芦山田は鼻白んだように表情を変えた。


「萌花、心愛を頼む」

「え、うん」


 再生中の心愛の体を萌花に託すと、俺は押し殺した殺意を再燃。

 理性と加虐のブレーキが崩れていく音を感じながら、芦山田に歩み寄った。


「お前が不幸なのはわかったよ……けどな、なんで幸せになる努力じゃなくて、他人を不幸にする努力をしているんだよ?」

「あん?」


 人と獣を分ける境界が、俺の中で消えていく。


「お前は夢を叶えたいんじゃないのかよ? てめえが不幸だからって周りを不幸にしていいわけじゃねえだろ? 仮に恵まれた奴がお前に何かしても、そいつと心愛は関係ないだろ?」


 そうして、俺は完全に理性を失った。


「土下座で許せる範囲じゃねえよなぁ……てめぇ、死ぬより辛い目に遭わせてやるよ!」


「イキがっているんじゃねぇよ! たかだかランキング末席の分際で! オレの攻撃一発でハリソンと月城妹は戦闘不能! それにバスティから聞いているんだよ! テメェの能力はストックした体力を使って身体機能を20倍にまで強化する事。その程度でどうやってワイトキングに勝つんだよ!?」


 俺の拳が、芦山田の顔面を抉り飛ばした。

 頬骨が砕ける感触を得る俺の視界で、粉々になった歯の破片が飛んでいく。


「ワイトキング気取りは一生するなよ、雑魚未満」

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 マルセイ、という漫画が変態的セクシー作品でとがったエロだと思います。

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