第31話 エロス31パーセント! 推理タイム

4000PV記念爆速更新!

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「心愛!」


 俺の叫びに、心愛は素早く顔を上げた。


「大丈夫!」


 彼女は凛々しい声で両手を左右に広げた。俺が強化することで使える必殺技、合成魔術の体勢だ。


 けれどコンマ一秒後、彼女の凛々しい瞳から淡い光が消えた。

 急ぎだったので、注ぎ込む力は少なかったのかもしれない。


「お姉ちゃん!」

「逃げろ心愛っ!」


 一瞬先の未来を想像して、心臓が凍り付きそうな恐怖に俺は駆け出すも間に合わない。


「ちっ、だから足手まといだと!」


 毒づきながら、アメリナは必死にライフルを構えた。

 が、心愛の両手には問題なく炎と風が巻き起こり、合唱の動作もショートカット。

 眼前に振り下ろされる斧に向かって、彼女は勇ましく両手を突き出した。


「デトネイション!」


 紅蓮の爆轟が斧を、そしてミノケンタウロスの巨体をぶっ飛ばした。

 心愛の必殺技を至近距離からまともに浴びたミノケンタウロスは全身に火傷を負い、床を転がり動かなくなった。


「ふぅ、成功したぁ……」


 安堵の息吐いた心愛に、俺は寿命が縮まるような思いで深く溜息を吐き出した。


「よかった……」

「お姉ちゃん!」


 萌花が姉に駆け寄り抱き着く美しい光景。

 けれど一人、アメリナだけが安心ではなく驚愕を口にした。


「どうして……だって今、強化が切れて……」

「心愛が努力したからだよ」


 アメリナの青い瞳が、まっすぐに俺を捉えた。


「心愛は毎日、俺に強化してもらいながら練習して、合成魔術を使っていた。だからいつの間にか、その感覚のモノにしていたんだ。借り物じゃない、自分の力にな」

俺が妹の成長を喜ぶ兄ような眼差しを心愛に向けると、アメリナは息を呑んだ。

「……ま、まぁまぁね。流石は、末席とはいえワタクシと同じランカーだわ」


 心愛を認めるような発言に、俺らは思わず注目した。


「もっとも、ワタクシはベスト100位以内のトップランカーですけど」


 長い金髪をかき上げて、アメリナは得意げに背を逸らした。

 どうしても、心愛の実力を認めたくないらしい。

 とはいえ、以前の彼女に比べれば随分マシだと、なんだか可愛く見える。


「おっと、そうだ。早くみんなを治さないと」


 俺は警備員さんたちに力を注ぎ、一命をとりとめようとする。

 心愛が、心配そうな顔で覗き込んできた。


「どうあさとし、治りそう?」

「ああ。峠は越えたってやつだな。とりあえずみんな、死ぬことはない」

「よかったぁ」


 まるで自分事のようにホッとした笑みを見せる心愛。

 幼馴染の優しさに、俺も嬉しくなる。


 ――心愛の幼馴染でよかったよ。


「それにしてもお姉ちゃん本当に危なかったよね。ミノケンタウロスに斧って、合衆国のことわざの通りだよね」

「それを言うならミノタウロスに斧よ。確か大和にも、鬼に金棒ってことわざがあったわね」


 ――ん?


 二人の会話に、俺は違和感を覚えた。


「なぁ、そういえばなんでミノケンタウロスたちは魔法の斧を持っていたんだ?」

「「「え?」」」


 瞬きをする三人に、俺は続きを説明した。


「だって斧とミノケンタウロスのコンテナは別々の場所に保管しているし、魔法の斧だってQRコードキーがないとコンテナは開かないだろ?」


「壊したんではないの?」

「素手でか?」


 アメリナは得心したように口を閉ざした。

 誰かの作為を感じずにはいられない。


 そう、まるで誰かが裏で糸を引いているような。

 最近もこんなことがあった気がする。

 あれは、確か……。


「みんな、助手さんのところに戻ろう」

「え、この人たちはこのままでいいの?」


 萌花の問いかけに、俺は頷いた。


「ああ。もう命に別状はねぇよ。それに、もしもこれが誰かの罠なら、ワイトキングの杖のほうが心配だ」


 万が一、ミノケンタウロス脱走は陽動作戦で、俺らの注意をこっちに向けるのが目的なら、相手の思うつぼだ。


「アメリナは飛んで先に戻ってくれ」

「わかったわ」


 意外と素直に聞いてくれるアメリナ。

 彼女も、今回のことで思うところがあるのだろう。


 彼女の後を追う形で、俺は倉庫内を疾走した。


 コンテナや展示物の隙間を縫うように走るも、特に戦闘音は聞こえてこない。


 それでも最後まで安心はできないと、俺が気を引き締めていると、アメリナはコンテナの向こう側に消えた。


 彼女の悲鳴が聞こえてないことに期待が膨らむ。

 そして、曲がり角を曲がり、助手さんの無事を確認して、俺は安心した。


 どうやら、俺の思い過ごしだったらしい。

 どこかに電話をしていたらしい助手さんがMR画面を切ると、俺らの姿に驚いていた。


「早かったですね! いま、本部に電話をしていたんです。コンテナが襲われているからワイトキングの杖だけでも先に輸送したいので、ロック解除キーを送って欲しいって。あ、来ました」


 助手さんは新しく開いたウィンドウを、ワイトキングの杖のコンテナにかざした。

 それから、助手さんの指が、虚空をなぞっていく。

きっと、彼にしか見えないAR画面でキーパッド画面を操作しているのだろう。


 人に見られてはいけないパスキーを入力する時に、よく見られる光景だ。

その様子を眺めていると、ふと、萌花の独り言が耳朶に触れた。


「ワイトキング……ドラゴンワイト……」

「どうしたんだ萌花?」

「うん、あのね」


 萌花は俺と心愛の頭を抱き寄せると、秘密の会話をするように囁いてきた。


「地下ダンジョンで都合よくドラゴンワイトが生まれた理由だけど、瘴気でも怨念でもないなら、誰かが死霊魔術で作ったってことだよね?」


「ああ」


「でも、骨は助手さんが管理していたわけで、なら、助手さんならドラゴンワイトを作れたんじゃないかな?」

「ッ!?」


 俺は自分の馬鹿さ加減にショックを受けた。


 ――そうだ。萌花の言う通りじゃないか。

俺も小声で、自分が気づいたことを口にした。


「それに、今回も助手さんなら各種コンテナの場所を知っているし、コンテナを開くQRキーも持っているよな?」


 それこそ、誤作動でコンテナが開いてミノケンタウロスが素手でコンテナを壊したり、外部の人間の犯行を行うよりも、ずっと筋が通っている。


「そういえばあの人、なんで俺らのもとにきたんだ? 救援要請ならデバイスに通信をかければいい。なのになんで走って教えに来たんだ? それって、自分がこの場に、ワイトキングの杖の場所に居座るためだったんじゃ……」


 一つ疑い始めると全てが疑わしく見えてくる。


「……」


 これは結論ありきでバイアスがかかった俺の妄想なのか。それとも……。

 俺が悩んでいると、不意に心愛が意を決したように口を開いた。


「あの!」

「なんだい?」


 助手さんがMR画面をコンテナにかざし、ロックが解除された。


「さっき上から連絡があって、あなたがミノケンタウロスを解放する姿が監視カメラに残っていたって」


 そんな連絡は入っていない。

 あきらかなかまかけ。


 だけど、心愛の大胆な口車に、助手さんはしばし唖然としてから、眉間にしわをよせた。


「……お前のせいで計画が台無しだよ」


 彼の背後でコンテナが開き、ワイトキングの杖が露出した。

 同時に助手さんの手が杖をもぎ取り、俺らにかざした。


「あさとし!」


 心愛が俺に飛びつき、視界は漆黒の炎に塗りつぶされ、五感は轟音にかき消された。

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ポンコツお嬢様と陰キャ世話係 という漫画がエロかわです。

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