第21話 エロス21パーセント! 何かに気づきました
20話4PV記念爆速更新!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「なぁ心愛、動きを止めるなら、凍らせればいいんじゃないか?」
「無理だよ。濡れていないもん。つきしろの冷気魔術で骨の温度を下げても表面に霜がつくだけ。あさとしの水魔術で濡らしても、表面に氷を張るだけだよ」
「じゃあ合成魔術でなんとかならないか?」
心愛は表情を曇らせた。
「だめ、今日はダンジョンでずっと戦いっぱなしだから、もう魔力がこころもとないよ……ごめん……」
まるで、自分が何か失敗をしたかのような謝罪に、俺はフォローの言葉を探した。
けれど、そのおかげで最近の彼女のやらかしを思い出せた。
「いや心愛。お前最高だよ」
「え?」
きょとんとする彼女の前で、俺は高らかに叫んだ。
「だったら、水だけで凍らせればいいんだよ! 心愛のミネラルウォーターみたいによ!」
「あ!」
一週間前のことを思い出したであろう心愛の前で、俺は水魔術を発動させた。
ただし、今度はたの水じゃない。
心愛が作った、零下の水。過冷却水だ。
彼女が注いだミネラルウォーターが凍るさまを鮮明に思い出しながら魔力を使ったウォーターストリーム。
それは突撃体勢から解き放たれ、加速し始めたドラゴンワイトの鼻面に当たるや否や、時間が止まったように凍り付いた。
「■■」
頭、首、胸、肩と氷漬けになるドラゴンワイトは、体のバランスを崩すようにして背後へ二歩、三歩とフラついた。
勝利への確かな手ごたえに、だけど俺は奥歯を噛んだ。
「駄目だ、量が足りない!」
ドラゴンワイトの胸元を凍らせる頃には、最初に凍らせた頭がの氷が砕ける。
二本の脚は一歩、二歩とまた歩み始めた。
もっと大量の水で、一度に凍らせないとドラゴンワイトの猛攻は防げそうにない。
「あさとし、一緒にやろう!」
力強い言葉と共に、心愛が俺の隣に並んだ。
「合成魔術じゃなくて、水魔術だけ。温度を抜いた、H2Oだけを作るんだよね?」
「心愛、やれるか?」
俺の心配に、心愛は得意げな笑みを返してくれた。
「もう先輩気取り? あさとしに水魔術を教えてあげたのがつきしろだって忘れちゃった?」
幼馴染の頼もしさに、俺は笑顔を返し直した。
「だよな! 一緒にやろうぜ相棒!」
俺と心愛は、一緒に四本の腕を伸ばすと、同時に水魔術を発動させた。
さっきの倍以上の水量が、津波のようにドラゴンワイトへ殺到。
怒涛の波頭がドラゴンワイトに食らいつき、巨獣の体躯は白い霧のような冷気をまとい、一瞬で氷の中に閉じ込められた。
「キタ!」
萌花の声に振り向けば、彼女は真下から烈風が吹き荒れるように髪が暴れ、その背中に神々しい後光を背負っていた。
「奥義! 金剛阿修羅!」
彼女が両手を胸の前で合わせると、肩から左右に六本の金属腕が構築された。
細くて繊細な、たおやかな腕。
だが、そこから放たれる神威は、俺の息が止まるほどだった。
「やっ!」
萌花は空を駆けるように飛び上がると、一度の跳躍でドラゴンワイトの顔面までたどり着いた。
そして、六本の腕を振りかぶった。
一方で、彼女の顔は慈愛と悲しみに満ちた、菩薩のようにはかなげだった。
「ごめんなさい。辛かったよね? 苦しかったよね? 悲しかったよね? でもごめんね、ツキシロにはあなたを助けてあげる力は無いし、守りたいものがあるの。たとえ、ここであなたを葬ってでも……」
「■■■■■■」
萌花の慈悲など侮辱だと言わんばかりに、ドラゴンワイトの口が開き、内側から氷を砕いた。
その口にはすでに黒炎がたっぷりと蓄えられている。
けれど勝負は一瞬。
阿修羅の拳がコンマ一秒早かった。
「阿修羅神拳!」
黒炎と一緒に吐き出され、這い出し、萌花に手を伸ばす人骨を、神仏の拳が打ち砕いた。
核を破壊され、制御を失った黒炎が暴発。
黒と白が入り混じった爆発が、地下ダンジョンを駆け抜けた。
反射的に心愛を抱き寄せ、俺の影に隠した。
だけど俺に痛みはない。
閉じた目を開けると、肩越しに晴れていく黒煙と、半透明のバリア、そしてその前に佇む金髪碧眼女性のうしろ姿があった。
彼女は背後からでも、左右の脇から横乳が見える程に胸が大きくて、振り返れば無邪気な笑みを見せてくれた。
「ミーは戦士じゃないけど魔術は得意デスヨ。アサトシボーイ、女の子の為に体を張る姿はエクセレントですYO♪」
彼女のウィンクに、俺は腕の中の心愛を意識した。
いい意味で、色々むちっとやわらかな彼女の感触と、そして熱い体温に気づかされた。
「ご、ごめん!」
「きき、気にしないで! それより萌花は?」
赤い顔で慌てふためく心愛の質問に、俺はすぐさまもう一人の幼馴染の安否が気になった。
「萌花!」
煙が晴れると、そこに広がるのは骨の残骸。
微動だにせず、再構築される素振りはない。
だが、俺が彼女の姿を探し死線を巡らせると、骨の山が崩れた。
「ッ!?」
まだ生きていたのかと俺は警戒するも、それは杞憂だった。
骨の残骸は持ち上がり、左右に割れて、萌花の可愛らしい顔が飛び出した。
「ぷはっ。生き埋めになっちゃったよ。あ、アサトシ、勝ったよ♪」
萌花が明るい笑顔でにっこり笑ってくれる。
その笑みに、俺は安堵の息を漏らしながら彼女に歩み寄った。
「よかった、無事だったんだな」
「うん。だけどあの人、かわいそうだったね」
笑顔から一転、萌花はしゅんと眉を八の字に垂らした。
「そうだな、アンデッドになるぐらい……ん?」
そこで、俺はふと違和感を覚えた。
「待てよ。おかしくないか?」
「何が?」
「だってアンデッドになる理由は三つ。だけどダンジョンに瘴気はない。誰もアンデッド化を魔術を使っていない」
「だからあの人の怨念でしょう?」
「なんでこのタイミングで? ダンジョンの中でとっくにアンデッド化していいのになんで外に出てから?」
「言われてみれば……」
萌花も、首から下を骨に埋めたまま、考え込んだ。
俺も、なんだか大きな見落としがある気がして悩んだ。
――本当に怨念でアンデッド化したのか? 本当にアンデッド化魔術も瘴気もなかったのか?
その時、ふと、俺の中で何かが結びつきそうになった。
――もしかして。
と、次の瞬間。
★本作のタイトルは予告なく変わる場合があるので、フォローをおススメします。
★0話 プロローグを追加しました!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アニメ ダンまち五期8話 ヘスティアが巨乳の谷間から紙を出すシーンが素晴らしいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます