第4話 あなたがあなたであるために。
たった一つの「幼い想い」があなたの人生に奇跡をもたらす事だってある。
ビックリマンシールの男性の話を紹介する。
以後、Yくんとする。Yは重度のうつ病になっていた。精神病院で自殺しないように監視されるぐらいに重症だった。
ちょうど十六年前、不思議な事にビックリマンシールの全部揃った百科事典のような物が発売された。
Yの年齢的に、ビックリマンシールを集めていた世代ではないかと、医師は聞いてみた。するとちょうど集めていたらしい。しかし、当時の上級生にシールを奪われてから集めるのを断念していたというエピソードを聞いた。
そこで、百科事典のような物が発売された事を伝える。Yは「欲しい」と、言った。
Yはそれを手に入れた。夢中になって、見て行った。そしてうつ病は消えていた。
ほんと、消えていたと表現するしか無いぐらいに。そう、Yにとってはビックリマンシールだったのだ。
たった一つの「幼い想い」が、Yの人生を回復させたのだ。
それと向き合う事は「影」と向き合う事にも通じる。
ある七十歳の男性は(以後Gとする)
あるビルの三階にあるオモチャ売り場に向かった。
この時点で、きっと孫のためにオモチャを買いに行ったのだろう。
そう推測した人もいるだろう。
ただ残念ながらハズレだ。
Gは戦隊ものの変身グッズを両手で持って、レジに向かった。店員もそれを見て「お孫さんにですか。だったら袋じゃなくて、箱に詰めることもできますが」と、聞いた。
店員も間違えていた。
Gは「いや、違う。これはワシのだ」と、言った。
「え?す、すみません。そうなんですね。では袋に」と、店員はそそくさと袋に入れて渡そうとした。
そこに別の店員がやってきて・・・「おや、お孫さんにですよね。今、箱を持って来ますから。すみません、気が利かなくて」と、言ってきた。
「違う!それはワシのだ!」と、Gは強く言う。
「貸せ!」と、Gは袋を取り上げて、中身を装着した。
「へーんしん」Gは変身ポーズを取った。店員たちは苦笑い。
Gはとても満足して、そのままの姿でお金を支払い、帰っていった。
Gは七十歳の男性なのだ。
しかし、何らかの理由で変身グッズを買ってもらえなかった。
そんな状況じゃなかった。
だから、購入した。そしてその場で変身をしてみせた。
「幼い想い」をやるのに年齢は関係無い。
それは人には言えないぐらいバカバカしく、幼い行為かもしれない。
それでも七十歳男性はやりたかったのだ。
自分が心の底からYES。と呼べる事を。
ただ人間という生き物は、別の形で、「幼い想い」に形を与え、
破滅の道にしか見えない行動を取ることがある。
殺人、麻薬、盗み、詐欺事件・・・タバコの過剰摂取、お酒の過剰摂取、ギャンブル依存症など。
実は繋がりがあるのだ。「幼い想い」はそれら犯罪行為、自分自身の体への破壊行為、生活が破綻するギャンブル依存なども・・・等しく、「幼い想い」を一時的に満たす事ができる。即効性がある。
だがしかし。
満たされない。だから繰り返し、繰り返しやってしまう。
麻薬に手を出しては行けないと、講演会を開いていた人が、
また麻薬に手を出して三日後に逮捕される。
そんな事が当たり前に起こる。
「幼い想い」なんだ。
ただこれが無い人もいる。
そういう人は「愛の思い出」がちゃんとある人だ。
両親にちゃんと愛された。そういう経験がある人たちだろう。
だが、両親に奪われ続けた人は違う。親の機嫌を取り続けた人もそう。
認めてもらえなかった人には「幼い想い」があるのだ。
正確にはそう感じた人だ。
認めてもらえなかったと。
ボクは長男で、物を散らかすと、すぐに怒られていた。
弟たちも散らかしていたが・・・怒られなかった。
どういうわけか・・・兄であるボクが・・・弟たちに指示をして片づけるように
言われた。
ボクは不条理だと感じた。弟たちは叱らず、何故かボクに注意が来る。
長男だからって何だ?
だから心の中で復讐を誓った。いつか部屋をもっともっと散らかしてやる!
そうやって親を困らせてやる。
だが・・・復讐はすっかり忘れていて・・・
十年以上経ってから、思い出した。
ティッシュペーパーで部屋を真っ白にしよう。それがボクなりの復讐だった。
大量にティシュペーパーを買い、部屋が真っ白になるまでバラ撒いた。
そして自分で、片付けた。
それでも爽快だった。
自分という存在にYESと言えるようになった。
思い込みをぶち破った。
そんな瞬間だった。
さて、「幼い想い」は影とどう関係があるのか。
影は初めに「暴力・他人の絶望」を望む。
そう。「幼い想い」を抱える人は「感情」を閉じ込めやすいのだ。
「幼い想い」と向き合う。
「幼い想い」を実現可能な範囲で、健全な方法で、実現させる。
たったそれだけの事が
人生に癒しを。
奇跡を起こす。
話は影に戻り、影は確かに、もう一人のあなたである。
それでも暴力・他人の絶望を望んでいたのは、本当のWANT toじゃない。
それは偽りの仮面。
本当はただ抱きしめて欲しかった。
同じように認めて欲しかった。
あなただけの想いが隠されている。
だからどうか犯罪に手を染める前に・・・
あなただけの幼い想いと何らかの形で、向き合えないか、検討してほしい。
きっとそれは楽しい。
灰色だった人生が輝きだす。
人生の主人公は、他の誰でも無い、あなたなのだから。
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