マジ、シケル

Slick

第1話

 お久しぶりですね、Slickです。今年は絶賛、大学受験生なのですが、息抜きがてら小噺でもと思いまして。


 大して怖くもないんですが、今年に入って体験した、人生初の心霊体験(?)の噺をさせて頂きます。


 今年の、あれは六月のことですかね。私の高校で文化祭があったんです。

 私たち三年生にとって、体育祭を除けばこれがほぼ最後の学校行事。という訳で、かくいう私も体育館で歌唱パフォーマンスをしたんです。


 余談ですが、歌うのが大好きでしてね。普段は割かし無口な方だと思うんですが、ギャップ萌えってやつでしょうか――昨年ステージで歌った所、大ウケして。中高一貫校で前々から『謎キャラ』と噂な者ですから。ちょっと自慢です。


 閑話休題。

 今年のパフォーマンスは、思い切ってみんなに協力を申し出たんです。すると、これまた沢山の人が集まってくれて。私のためにパフォーマンス用MVまで作ってくれたり、一緒にステージに出てくれたり、と(こういうのを青春って言うのかしら)。

 そしてこれは、その準備中の噺。

 ある日の放課後、一緒にステージに出る人たちとの打ち合わせの時でした。確か場所は教室のベランダで、その場には四、五人くらい居たと思います。

 その中に茶道部の人がいて、ここでは仮にY君としますが、彼に向かって「お前、いっそ茶道着でステージ出れば?」みたいな案が上がったんです。

 私もすぐさまその案が気に入ったので、口を開こうとしました、が。

 その時。


 『――マジ、シケる』

 ってが言ったんです。


 一瞬だけ、その場の空気が凍ってしまいました。

 幸い、すぐに雰囲気は和気藹々としたものに持ち直しましたし、私も『酷いこと言うなぁ』と思いながら、慰め代わりに悄然とした顔のY君の肩を叩きました。


 しかし、です。


 翌日のこと。

 再び昨日のメンバーで集まり、演出の準備の細かな詰め合わせをしているとき。私がふとY君に「そういえば、やっぱり茶道着で出たらどう?」と言ったんです。

 すると、皆が一様に変な目で私を見るではありませんか。

 聞いてみると、彼らは口々にこう言うのです。


「昨日『マジシケる』って言ったの、じゃん」と。


 はぁ? と思いました。

 そんな筈はありません。私は確かに誰かの声を聴きましたし、むしろ茶道着のアイデアには賛成だったのですから。むしろ『酷いこと言うなぁ』とY君に同情さえ催したのですから。

 慌てて必死に否定するも、みな不思議そうに首を傾げて言いました。


M君「いや、お前があんなキツイ言葉使うの珍しいから、俺もびっくりしたんだって」

S君「昨日、空気凍ったの覚えて無い? 言っちゃ悪いけど」

F君「いやいや、アレ絶対お前だったってば」


 うそ、そんな馬鹿な......。


 結局、あの発言は私のものだったということで、その場は落ち着きました。

 皆の態度も口裏合わせしてたり、ふざけた感じでもありませんでしたが、そもそも大したことじゃないので。むしろ、あんな些細なことで人をからかっても面白くないはず......。

 とはいえ結局、文化祭のステージは皆のおかげで凄く楽しめ、何ならこの件は今日の今日まで忘れていた次第です。


 しかし今、これを書いている最中にも、首を傾げる自分がいるのです。

 あの日『マジ、シケる』って言ったのは、ダレだったんだろうって。












 それとも、この噺自体が『マジ、シケる』ですか?

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