第2話
インスタで沙那恵の投稿を見る。最近の投稿は一週間前、何かの展示会に行ったらしい。住む場所も仕事も違って、学生時代ほど会う機会は減った。けれどインスタもTwitterも繋がっているし、時間をとって半年に一回くらいは食事に行っている。会うたびに服装が変わっていったり、話題が合わなくなったりして高校時代との違いを感じて寂しくなる。これも大人になる過程なのだろう。
仕事終わりの時間だけれど通話できるかな。下車後、LINEをかけてみた。
「こんな時間に珍しいね。どうしたの?」
3コール以内に出てくれた。
「久しぶりになんか話したくって」
「久しぶりって、ちょっと前にご飯行ったばかりじゃない」
「ちょっと前って、二ヶ月も前じゃん。二ヶ月もあれば人間変わるよ」
「蝉じゃないんだから」
少し他愛のない話をする。今の時間帯は夕飯を作っていたらしい。今日はとんかつだそうだ。
「高校の時に赤い猫のキーホルダー作ったの覚えてる?」
「覚えてる、覚えてる。私、友達とお揃いのものを作れるのが嬉しかったな〜」
「図書館で借りた本から型紙を選んで、布から選んでさ、手芸屋さんでめちゃくちゃ時間かかったよね」
「懐かし〜、布選びに時間かかりすぎたから、ボタンとか別の日に買いに行ったね」
吉祥寺の手芸屋さんに行った日が脳裏に蘇る。沙那恵の近所にある大きい手芸屋に行き、夏だったから帰りにかき氷を食べた。かき氷を選ぶのにも時間がかかって、結局お互いが食べたいものを半分こして食べたっけな。家に上がらせてもらい、布を切り出し、本を確認しながら慎重に縫い合わせた。人形を作るのは初めてじゃないから、手順もある程度分かり切っていたけど、共同で作るのは1人じゃ味わえない楽しさがあった。
そして同時に忘れていた、思い出したくなかった記憶も蘇る。
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