7月22日
7月22日
何が起こっているのか、僕にはまったく分からない。もしかしたら何も起こっていないのだろうか?
いつもと変わらない日常。でも目の前に広がる景色は、スクリーンに映し出されただけの幻影なのかもしれない。僕は一人暗い座席でただじっと、その映像を眺めているだけなのかもしれない。そんなことを考えてしまう。
要は確かめようがない。ただ用意された毎日を生きるしかない。
こんなとりとめのないことを考え始めたきっかけは三日前の夜だ。それから度々、頭の中に浮かぶ違和感。何かを忘れているような感覚と、また新たなものを忘れてしまったような喪失感。現実から排除されてしまったであろう何ものかは、僕が思い出す前に「名前」と「面影」を消してしまっているような気がする。もちろん、それは僕の気のせいかもしれない。
下らないことを考えているな、と自分でも思う。ただその不安定な感覚は、三日前から僕を支配している。それは間違いない。
部屋の外で雨の音が、やる気のない拍手のように続いている。暑い夏の夜を宥めるように、厚く黒い雲が泣いている。僕はなんとなく、外に出たくなった。
こんな遅い時間に、それもこんな天気なのに、家を出る。それは考えるだけでも、素晴らしいことのように思える。夜の雨は何か知る手がかりになるかもしれない。際限なく暗い空の果てに僕の知らない世界があれば、少しは気が楽になると思う。そこに近づけるのであれば、僕は夜の雨に濡れてもいい。そう感じたのだ。
でも、僕は外に出なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます