第7話

 次の日の昼休み。

ユタカ、ミナト、コガネの3人は屋上で昼飯を食べていた。

 もちろん、楽しいガールズトークをしながら


「つまり、あんたの目的は怪人の殲滅ってこと?」

「そう。日本にだけ現れる怪人は世界に被害を拡げる公害。昨日の白黒男なんて、世界から色を奪うつもりで生まれた怪人。」

「ぇ、ホンマにそんな正義の味方をしたくて魔法少女やってるん?」


「魔法少女ってそういうものだと思ってるから。むしろ願いの為とか打算的な魔法少女の存在なんて私は認めたくない。」

「そっちの方が少数派やと思うけど。」

「ヒーローごっこがしたいってことッスか。ゲボ出そうっす。」


おえっとえずく真似をするミナトに当て身をかますユタカ。

 半分気絶して倒れるが、ギリギリ話は聞こえるくらいの状態になる。


「ぶっちゃけMPなんてその日の飯代くらいにしか考えてなかったから、貯まる一方だしね。」

「もったいな、そない余るんやったらウチにくれても」

「契約金は1日100万。これはアンタらにそれだけの実力があると見込んでのこと。」

「……どういうことッスか。」


話の途中で受け答えまでできるようになったミナトは問う。

 SSランクくらいなら一人で殺せるユタカが、自分達を雇う理由を。


「モンちゃん、イベント予告をもう一回流して。」

『んぅぐ。ほ、ホントはユタカにしか見せちゃいけないんだからな!』


 そう言うと、契約精霊モンハナシャコは自身の目をモニターのようにして、映像を映し出した。


〜〜〜

マジカル⭐︎アップデート!!


【イベント予告】


これから1年間、SSランク怪人の出現率が【10倍】に!?

そして、SランクAランク怪人の出現率は【50倍】になります!!

 MP稼ぎの大チャンス!

 

そして、期間中はMPランキングが公開!

 期間終了時の上位10名には素晴らしい景品が!


みんな⭐︎がんばってね〜⭐︎


〜〜〜



そう映し出された映像にポカンとする二人。

モンハナシャコの目から映像が流れたことに驚いているのではない。

 ミナトの契約精霊オオスズメバチは針の先から映像を出す。

 そうではなくて、その内容。


「10倍……?」

「SとAは50倍やて?」

「てか、こんな告知、私のとこには来てなかったんスけど。」

「ウチも……」


「それは、私が前期MPランキングで1位になったから。」

「てか、それ、なんなんスか?」

「あぁ、イベント期間になったらMPの獲得量がランキングになるんよ。去年もそれはあったんよ。」


 契約精霊たちから通知を受け取り、MPを獲得するため怪人を倒す。

 今までずっとそうしてきたし、それが魔法少女の存在意義。


 しかし、今までのイベントでは長くて8ヶ月、基本半年程度の期間のみのはず。


「今までに無い何かが起こる。それを防ぐためにはある程度力のある利害の一致した仲間がいる。」

「うちらが、それってこと?」

「金で買える点は評価してる。それに実力も悪くない。」


 事実として、SS相手に二人がかりで勝ちかけていた。

それだけの実力者はなかなかいない。


「てことで、その唐揚げ、百円で売って」

「あかんわ!弁当の唐揚げには百円以上の価値があるんや!」

「なら百円でもええやないか!」


 ガールズトークは回る。しかし、三人は各々を理解していった。


◇◆◇


 昼飯は終わり、一人になったユタカは空を見上げて呆ける。

先ほどの話では言わなかったことがある。


『景品のラインナップは見せなくてよかったの?』

「モンちゃん、今は必要ないから。」

『10位以内に入れば不老不死の権利が手に入るのに、なんで隠したの?』

「……」


 ユタカは何も答えない。

要不要で発言を取捨選択していく。

 たとえ相手が相棒でも。

自分自身でも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

深夜の魔法少女【仮】 草間保浩 @kusama-yasuhiro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ