第6話
「ぐぅ、くそぉ。貴様ら二人、相当強いなっ!?」
SSランク怪人『白黒男』は、二人の魔法少女によってボコボコにされていた。
毒と万能の回避タンク二機を相手にして、相性的には不利だったから。
そして、怪人は最初のデバフと拘束をまだ完全に解除しきれていない。
その結果、防戦一方の戦闘で振り切れない状態にいる。
一方で、バスターピンク、ユタカは拘束を破壊することに集中。
猶予は数分程度で、二人に白黒男を殺させるつもりはない。
むしろ、完全集中状態でデバフの除去と拘束の破壊を最優先としている。
「くそっ、『SHIROKURO』セット!【ブリリアントアームズ】!」
手を輝かせて接近戦闘に持ち込もうとする白黒男。
しかし、最初からまともな戦闘を行う気が無い二人には完全に悪手。
魔法の発動時間が切れるまで回避に専念するのみ。
「避けるなぁ!!」
「『デストロイイクシード』セット!【コレクティブコール】」
避けられた白黒男の焦りの隙を見逃さず、50発の弾丸を一つにまとめて射出するとっておきの必殺コマンドで刺すミナト。
「『キラーコントラクト』セット。【ブースト:500K】」
そこに、50万円分の強化を載せるバフ魔法を使うコガネ。
これであれば、Sランクの怪人ですら一撃で消滅……撃退できるほど強力な魔法。
「ぐぁああああ!?」
当然、白黒男も甚大なダメージを受ける。
それも、防御力低下、耐久値低下、体力低下などのデバフを重ねた状態の肉体に、貫通するような魔法を受けた。
HPで表すなら、残り10%といったところ。
「くそっ、奥の手だっ!変身!!」
「なにっ!?奥の手!?」
「変身ってなに!?そんなん知らんのやけど!!」
困惑している二人の前で、白黒男はその体色と同じ色の光に包まれ、その光は徐々に元のシルエットに収まっていく。
その光は人型に近づいていき……
「【ファイナルバレッド】ぉぉぉおおおおお!!!!」
大地を震わすようなユタカの怒声とともに放たれた血肉色の拳によってその大半が消滅した。
「「「は?」」」
呆気にとられるミナト、コガネ、そして消滅しかけている白黒男。
「変身中の怪人にボゲッとしてるから。こういう怪人は変身中が一番脆いの。」
「いや、えぇ?」
「そういうもんじゃ、ないと思うんだけど」
「ぐっ、魔法少女め、卑怯な。変身中に攻撃しないというマナーすら守れんとは」
「知らないわよ。あんたら怪人に礼節なんて必要ないわ。」
バスターピンクの最終必殺技によって首から下を消し去られた怪人は、静かにMPとなりバスターピンクの中に納まっていく。
1億2千万という巨額のMPを手に入れながら、バスターピンクの顔には喜びがない。
というか、未だに怒っている。
バチバチに浮き出た血管と、白い肌が真っ赤になる程の血圧の上昇。
怒髪天を衝くというレベルの怒り。
「ミナト、コガネ。あんたら、お仕置き。」
「「ひぃっ?!」」
その日はもう怪人は出ず、しかし、バスターピンクの『ストライクドグマ』は休まず光り続けていたという。
◇◆◇
「で、あんたは金欲しさにミナトに協力したと。」
「はい、そうで……ありんす。」
「関西だか博多だかわからない方言キャラやめたら?」
「だって、こうしないと舐められる気がして。」
「ま、いいけど。次はないからね。」
「うっす。」
頭部に大量のたんこぶをこさえたコガネは、涙目でうなずく。
回復魔法の【ヒールバレッド】でここまでのこぶを作れるのはおそらくユタカだけだろう。
「で、あんたは不老不死になりたくてMPを稼ぎたいって?」
「……」
「おい、返事しろよ。」
「……はい。」
痛い目を見て反省しているコガネとは対照的に、ミナトはどちらかというとふてくされているような態度。
怒られていることに納得はしているが、まだ何かを心の底のほうに隠しているような態度だ。
「コガネ、ミナト。私と契約しろ。」
「「え?」」
「これから毎日100万MPをやる。その代わり、この学園には手を出さず、私の招集、命令には従う。」
「魅力的な提案やけど、それ、すぐに破産するんやないの?」
「そうだ。いくらこの学園の怪人がつよいと言っても、それじゃすぐにMPなんてなくなるぞ。」
「気が変わったんだ。これから、多分SSランクの怪人が大量に出てくる。気がする。」
「気がするって。あんた」
「別に私のMPが0になったらそれでもいい。そんときは契約終了ってだけだ。これから得るMPに口出しすることはない。」
「まぁ、うちはそれでもええけど。」
そしてこの日。三人の魔法少女による雇用形態。
魔法少女同盟が結成された。
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