第32話 親友の幼馴染

 正孝は真剣にその格闘ゲームに熱中している少女を見ている。

 俺はその少女を見ている、正孝を見ていた。


「なぁ、そんなに気になるなら話しかければいいじゃないか……正孝……」


 俺がそう正孝に切り込む。

 すると、正孝は照れたように


「バカ! もし違ったらどうするだよ! それになんか恥ずかしい!」


 そう言って突っぱねた。


 するとその金髪の女の子は、席を立ち上がった。

 どうやら、格闘ゲームが終わったらしい……


 格闘ゲームの対戦相手は唖然としている。

 この格闘ゲームは、店内で誰でも知らない人と対戦出来ることから人気を博している。


 この女の子は、その対戦相手から一回もダメージを喰らわずKO《倒す事に成功》したのである。


「おい! 正孝、お前、本当に話しかけなくていいのか?」


 俺は正孝に再度確認を入れる。

 だが……正孝は、突っぱねた。


 すると、なんやら彼女がこちらに向かってくる。

 そして、俺たちの前にやって来て


「なぁ、そこの男共、さっきからずーとアタシのプレイ見てたろ! もしよかったら見てないで私と格闘ゲームで対戦するか?」 


 そう聞いて来た。

 俺は、は? なんで? そう思ったが、俺の後ろにいる正孝に背中を押されて仕方なく対戦することに


 結果は、ボコボコに負けた。

 俺はこのゲームやったはあるが、ここまでボコボコにやられるとは思わなかった。


 ここまでのやられよう……この前の根石さんを思い出す。


「なぁ、正孝も対戦してみろよ!」


 そう俺は正隆を呼んだ。

 すると俺の前でゲームをプレイしている金髪の女の子が席を立ち上がり、正孝の顔をガン見する。


 ……おーと、これはまさか……


 そして、正孝と金髪の子はお互いを見つめて沈黙を始める。


 しばらくして、金髪の子が嬉しそうに!


「お前〜! もしかして、あの正孝か!」


 そう、金髪の少女は正親の肩を持った。


「やっぱり……お前、結菜だったのか……」


「久しぶり!! 正孝、元気だったか!」


 そう言って、彼女は正孝の手を持ってふりふりする。


 どうやら、これは感動の再会というやつか……


「なぁ、そこの私のさっきの対戦相手、あの人お前の友達か?」


 そう、彼女が正孝に聞く。

 正孝はまだ緊張している様子だったが……すぐに口を開いて


「ああ……俺の親友の山田海人だ!」


 そう言うと、彼女の目線が俺に来て、こっちに話しかけて来た。


「そうか! そうか! 正孝の友達か! お前名は山田海人って言うんだな! よろしくな! お前も今日から私のお友達だ!」


 そう言われて彼女に握手を求められた。

 俺はその手を握り握手をした。


「さてと! 正孝! お前も対戦しようぜ!」


 そう、正孝に彼女は話しかけた。

 正孝は照れながら


「いや……俺はいいよ……別に」


 そう言い終わると、俺に向かって手招きした。

 俺は手招きされて、正孝の元に向かうと


「やばい、緊張して昔のように喋れねぇー」


 そう耳元で言って来た。


「え? でも、彼女とは一応幼馴染なんでしょ?」


「幼馴染とは言っても、もう何年も話していないんだぞ! しかもあいつ、すげー可愛くなってるし!

俺はもうさっきからどうすればいいかわかんないよ」


「そうなのか……」


 すると、俺と正孝の会話に金髪の子が割って入ってきた。


「なぁ? お前ら今暇か? よかったらこの後、どっかふらふらしないか?」


 そう聞いて来た。


「…………うん」


 そう横で正孝が恥ずかしがって言う。

 俺はその金髪の女の子を見ると、なんだか、根石さんに似ているな……そう思った。


 ちょっと待てよ……根石さんに似ているって事は?

 正孝……こいつ、そういうことか!?


 山田海人は、他人の恋愛事情に妙に敏感なのである。



 それから俺たちは三人で「モオン」内をふらふらしようと歩いていた。


 途中……ゲーセンを出る時、フリクラに入っていく、中川さんと月野さんの後ろ姿が見えた気がするが……流石に気のせいか……


 俺は歩いている時、横で歩いている正孝の近くに行って耳元でささやいた。


「なぁ、俺もし邪魔だったら……どこか行くけど……いいのか? せっかく幼馴染と再開したんだ……積もる話もあるだろう……」


 顔を明るめて正孝は俺にしがみついて


「やめてくれ……どこにも行かないでくれ! 海人! 俺は今、彼女と二人きりになったら俺の心が持たない! 頼む俺と一緒にいてくれ!」


 そう言われてので……俺は全く仕方ないな……そう苦笑いして、一緒について行くことに決めた。


 俺たちは「モオン」内をふらふらしているとフードコートに到着した。


 そして、せっかくだから何か食べるかといつことになって、俺たちはフードコートにある席に着いた。


 席に座ると、彼女が何を食べるか決めるため一人立ち上がって、何があるか見に行った。


 そして、先に俺たち二人になったことで……俺はある話題を切り出す。


「なぁ……お前、あの彼女の事……好きなのか?」


 そう言うと、正孝は黙り込んで


「………………」


「なんだって!?」


 そう言って、俺は正孝に手を叩かれた。

 おい! なぜ手を叩く。そう言おうとしたら


「なぁ、てかその……なぜわかった……」


 正孝は俺があの子を好きだということを当ててみせたことに大変驚いていた。



 そこで俺は丁寧に正孝に説明する。


「だってよ……あの人、根石さんそっくりじゃん!」


「は? 根石沙羅にそっくりだからなんだよ! てか、お前あれは二次元で本当に似てるかわからんし! ってか、何で根石沙羅が出てくる!?」


 いや、そのそれがですね……俺は根石さんご本人にこないだ会ったので……ってことは口が裂けても言えない。


「いや、あれだ! お前があのゲームで根石さん好きなのはもしかしてあの子の事好きだからなのかなって思っただけだ……」


 そう言うと正孝が驚いて……


「お前! やけに勘が鋭いな、正解だ……」


 そう正孝が認めた。

 そう会話していると……俺たちの座ってる横の席に女子四人組が座り込む。


 そのうちの一人の声は、俺の聞き馴染みのある同居人のゲームのヒロインの声に似ていた。


 ……まさかな……はは笑


 俺はそう思い、横を向くと、

 そこにはクラスメイトの女子二人と中川さんと月野さんだった。


 それを見て……まさかなとは思ってけど……そのまさかだった……俺はそう思った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る