第30話 だから! 中川さんは可愛いって言ったの!

 俺はバイト先から徒歩二分ぐらいの距離にあるカフェにて、コーヒーを飲みながらスマホでゲームをして中川さんの面接が終わるまで待っている。


「中川さん……大丈夫かな?」


 俺は、小さい声でそう呟いた。

 俺はゲームをしながらも、橋本先輩からの中川さんの面接が終わりを告げる連絡を待っていた。


 するとスマホが通知を鳴らす。

 そこには、橋本先輩からの中川さんのバイトが終わる事を告げる文章だった。


 俺はすぐに、座っていた椅子を引いて、カフェを出る。

 俺は、比較的早歩きでバイト先へと向かった。


「どうだった! 中川さん……できた?」


 俺は心配だったので、バイト先につくと、レジの横のスペースで、突っ立ってた中川さんに話しかけた。

 中川さんの顔は表情が固かった……もしかしてまだ緊張が抜けてないのだろうか……


「あっ! 山田くん! 私さ、ちゃんと面接できたよ! えへへ」


 そう彼女が嬉しそうに笑う。

 よかった……俺は彼女の表情を読み取って、多分大丈夫だろうと思った。


「やあ、山田くんと美少女ちゃん! お疲れ様!! はい、これ飲み物!」


 すると、橋本先輩は、俺たちに飲み物の差し入れをしてくれた。

 てか、俺までいいのかもらっちゃって……


「いいんですか? これもらっちゃって」


「いいのよ! 美少女ちゃん! 今日は面接ご苦労様! あたしも美少女ちゃんと一緒に働けること楽しみにしてるわ!」


 生徒会長から中川さんにそう言って飲み物を渡した。

 中川さんは何やら思うところがあったのか生徒会長から飲み物を受け取ると。


「あの……美少女ちゃんと言うのは、もしかして私の事ですか?」


「そうよ〜〜」


 先輩が中川さんにそう答えを返す。

 すると、中川さんは顔を真っ赤にして


「私……そんなに可愛くないので!! やめてください、恥ずかしい」


 なんで〜可愛いのに……俺は心の中でそうツッコミを入れた。

 中川さんってもしかして自分がどんだけ可愛いか理解していないのか? 


「あら? 何言ってるの? あなた十分可愛いわよいやもう超絶! ほんと可愛い!」


 先輩が中川さんに顔を近づけて言う。中川さんは斜め下を向いて顔から耳まで赤くする。


「ねぇ山田くん、あなたもそう思うよね!」


 そして、何故か俺に先輩は話を振ってきた。

 ……あの、俺に振るのやめてもらえませんか?

 すると、先輩と中川さんがこっちを一斉にこっちに向いてきた。


「まぁ、可愛いと思いますけど……」


 俺は小さい声でそう言った。何故って本人に聞かれるのはあまりにも恥ずかしいからだ……

 続けて生徒会長が今の俺の小さな声での発言が気に入らなかったのか機嫌が悪そうな顔をして俺に問いかけてきた。


「なによ? 聞こえない! もっと大きな声で」


 もうほんとに勘弁してください……生徒会長……


「ねぇさっき何て言ったの? 山田くん?」


「そうよ! 今美少女ちゃんに何で言ったの?」


 二人は俺に体を寄せて詰めかけてきた。俺は恥ずかしさのあまりどうしたらいいのかわからずちょっと大きい声を出してしまった。


「だから! 中川さんは可愛いって言ったの!」


 ……あ、やべ、言ってしまった……


「……うン、もうやめて〜」


 そう中川さんは、恥ずかしがって、生徒会長の後ろに隠れた。

 一方……橋本先輩はこちらを見てニヤニヤしてきた。


「ふふ! まったく甘々ね!」


 ……は? どこが? ってか、勘弁してくれ……全く……やっぱり生徒会長は俺で楽しんでいるのか……


「……それじゃあ……そろそろ帰ろうか、中川さん」


 すると、彼女はさっきの出来事が嘘のように先輩の肩からヒョコっと顔を出した。


「うん……帰ろう……山田くん!!」


「それじゃ! 先輩! 今日はありがとうございました!」


 俺はそう先輩に礼を言った。

 今日は先輩にはお世話になった。

 中川さんの面接の連絡など……


「うんうん! またバイトでね、山田くん、美少女ちゃん、じゃないや! 鈴音ちゃん!」


 先輩はそう言って俺たちに挨拶をした。横にいた中川さんは丁寧に先輩にお辞儀をしていた。

 そして、俺たちはバイト先を後にした。


「中川さん……どう? 手応えありそう?」


 俺は横に並んで歩く彼女にそう聞いた。


「うん……!!」


 そう嬉しそうに答えた。


「俺も……中川さんと一緒に働ける事……楽しみにしてるよ!」


 俺はそう彼女に言葉を漏らす。


「私も! 山田くんと働けるの! 楽しみだよ!」


 彼女は嬉しそうに俺の顔を見てそう答えた。彼女はどうやら俺と働くことを楽しみにしてくれているらしい……今の彼女の表情を読み取ってわかったよ……

 俺は、それを聞いて微笑んで前を向いた。


 中川さんのバイトの面接結果だが……一週間以内に出るらしい……

 俺は中川さんが無事バイトに受かることを願った。


 ーーそして、それからちょうど一週間程経った頃だろう……

 バイトの面接結果が出た。

 結果は合格だった。


 ところで、今日は中川さんはバイトが受かった事によってバイト先に行って、書類などを受け取りに行く日になっている。


 俺は「お供しようか?」 そう聞いたが、彼女に「申し訳ないから一人で行くよ! 大丈夫! 道は覚えているから!」

 そう言われたので、今は一人で家にいる。


 そういえば……中川さんがこの世界に来てから、あのゲームやってなかったな……


 俺はお久しぶりにゲーム機に私立金森学園物語のソフトを入れて起動した。

 本当に久しぶりだな……


 そう思って、俺はゲームのヒロイン攻略一覧を開いた。すると……


「……はっ? は〜〜!?」


 なんと、私立金森学園物語のヒロイン一覧から中川鈴音の名前が消えていたのだ……


 どういう事だ!? もしかして、彼女がこの世界にやって来たから?

 俺はそのようにぐるぐる思考を巡らせて考えたが……わからなかった……


 っ? てか、これ……

 俺はヒロイン一覧の中に、ある一人のヒロインに目をつける。

 その名は吉沢花音よしざわかのんと言った。


 こんなヒロインいたか?

 いや、私立金森学園物語をこれだけやり込んだ俺だ、ヒロイン一人見逃すなんて……

 そんな事は、ありえない……

 吉沢ってその名前どこかで……俺はこの名前に見覚えがある……


 どういう事だ?

 このゲームにアプデでも入ったのか?

 俺は、今すごく疑問に思った。


 俺はスマホを開いて、ゲームの公式サイトを見るが……

 特にアプデなどは、書いてない……


 そうだとしたら、どうして?

 これも、中川さんがこの世界に来た影響か?


 俺は私立金森学園物語をプレイしながらそう考えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る