3章 梅雨の季節と勉強会

第22話 月野さんとアイスコーヒの味

「ねえ! 今、山田くんと話してた人消えたよね!? どこいったの?」


「えっ? 何の話?」


 俺は月野さんに彼女の事やゲームの世界の、別の世界の事など知られたら面倒なことになる

 それに……もし言ったとしても、中川さんの気持ちもわからない。

 もしかしたら、彼女は別の世界に来たことを言ってほしくないかもしれない……


「そういえば、大丈夫? 袋落ちてるよ」


 俺は彼女がそこでポツンと突っ立ってるので、袋の事を指摘した。


「うん? あっ! ごめんごめん、ありがとう! 山田くん」


「そんなことより! 私見間違いじゃないもん! 確かにあの金髪の可愛い人が消えたところ見たもん!!」


「いや、そもそも、金髪の可愛い人なんかいなかったって……」


「ねぇ、山田くんもしかして何か隠してる?」


「へっ?」


 やばい、勘付かれたか?


「もしかして……今の人、山田くんの彼女とか?」


「違うよ! あの人は彼女からなんかではないよ!」


 ……あっ!


「あ! やっぱり! 山田くんも気づいてるんじゃん! 今の金髪の人!」


 ……げっ! 俺はまんまと彼女の策にはまった。


「山田くん! 教えてよ!! なになに、どういうこと?」


 くっ! 流石にもう言い逃れは、できないか……


「ちょっと、場所変えない? 月野さん」


「うん! じゃあ、この近くのデリシャスコーヒー行かない?」


「そうだね、そうしようか……」


 そして、俺と彼女はカフェの中に歩き出した。


「そういえば! 私と山田くん、鈴音が転校して来てからよく喋るなったね!」


「そう言えばそうだね!」


 よくよく考えれば……彼女と俺は中川さんが転校してくる前は時々……

 何故か彼女が絡みにくるが、そんな今ほど、喋ることはなかった。


「それに……これなんだか、デートみたいだね」


「えっ? デート?」


「私嬉しいよ! 山田くんとデートできて!」


 なぜ、俺とのデートが嬉しいんだ?

 しかも、これはそもそもデートなのか?

 俺は彼女、月野さんがわからない…………


 そして、歩いて程なくデリシャスコーヒーに到着した。


 月野さんは、アイスコーヒー

 俺はハニーミルクカフェ

 ……をそれぞれ頼んだ。


 そして、それを店員さんから受け取り俺たちは店内の席に着く。


「さてと、それで、さっきの人はなんなの?」  


「えーと、月野さんこの事……誰にも言わないでね……それは、彼女は……その、別の世界から来た人なんだ……」


 そう、ストレートに事実を伝える。もちろん中川さんの事は伏せて。


「…………っぷ」


「ふふふ笑あはは笑」


 そう月野さんが高らかに笑い出した。


「えっ? どうしたの、月野さん?」


「えーだって、山田くんがそんな冗談ぶっ放すのが悪いんだよ! 今何月だと思ってるの、もうエイプリルフールはすぎて……ぷっ」


 いやいや……笑いすぎやろ……


「あーはっは笑 面白いな〜! やっぱり山田くんは面白いね!」


 俺は本当の事を言っただけなのだが……

 やっぱり信じてもらえなかったか……


「……今の話本当なの?」


 俺が深刻そうな顔をしていると彼女がそう聞いて来た。


「うん、本当だよ」  


 俺がそう答える。まぁ、そんな事言ってもどうせ信じてもらえないだろうけど……


「わかった……信じるよ」


 ……えっ?


「信じてくれるの? 月野さん」


「うん、山田くんがそんなに深刻そうな顔するって事は本当なんだろうって思いかけてきて、私! 信じるよ!」


 まさか……信じてもらえるとは……

 俺は彼女に信じてもらえたのが嬉しいの同時に彼女に別の世界のこと、根石さんの事が割れてしまった事に対する不安も多少でてきている。


「山田くん! 私! 絶対誰にも言わないから……」


「本当にありがとう……月野さん……」


「へへ笑じゃ! 飲もうか!! 山田くん」


「うん! 飲もう」


 そう言って俺たちはさっきデリシャスコーヒーで頼んだ、コーヒを口にする。


「美味しいね! 山田くん!!」


「うん! とっても!」


 俺たちはそれぞれ飲み物を飲みつつそう言った。


「でも、まさかこの世界の他に別の世界があるなんてねぇ〜」


「本当だよ……びっくりしちゃった……」


「そういえば、あの人にどうやってこの世界に来たか聞いたの?」


「それが聞く前に向こうの世界に帰っちゃって」


「そうなんだ〜」


「ねぇ〜その山田くんが飲んでいるハニーミルクカフェ! 一口ちょうだい!」


「……はっ?」


「何びっくりしちゃってるの? 私も一口あげるからちょうだい!」


 俺は、今この瞬間、根石さんの時から二度目間接キスチャレンジが始まった。


「いや、その……流石に……」


「うん? どうしたの? 山田くんそんなに動揺して」


「いやその、一口ちょうだいというのはいわゆる……」


「山田くん! スキやり!!」


「……あ!」


 彼女は俺の一瞬の瞬間を着いて、俺のハニーミルクラテを飲むためにカップにあるストローに口をつけて、一口飲んだ。


「えへへ笑おいしいね!!」


「はい! これ、返すね!」


 そう言って彼女は一口飲んだハニーミルクラテを俺の前に置いた。


「あっ、そうだ、はいどうぞ!」


 そう言って彼女は俺にアイスコーヒーを差し出してきた。


「えっ? ちょ、何してんの?」


「何って、私のも一口あげるって言ったじゃん!」 


 ……えっ、そういえばそんな事、言ってたな……


「はい、どうぞ!」


 そうやって彼女はアイスコーヒーの入ってるコップを持ち上げて俺の前に持ってくる。


 どくん、どくん

 俺は心臓の高まる音がした。

 ……飲むのか、俺は……


 俺は、おそるおそるコーヒーカップのストローに口をつけた。

 これが? アイスコーヒーの味か……

 そして、俺は初めて異性と間接キスをしてしまってのである……


「……どう?」


「……おいしい」


「そりゃよかった」


 それから俺たちは残りの飲み物を飲み干してお店を出て、家に向かって歩き始めた。


「いや〜山田くんと二人きりでお店行くの初めてだよ! ありがとう!」


「いや……こちらこそありがとう楽しかったよ」


 そう言って俺たちは、歩き始めた。




ーーー月野雫ーーー


 私と山田くんは、家の場所の都合でそこの道で別れた。


 私は山田くんの歩く背中をじーと見ている。

 何だか山田くんの背中は太陽の夕日に照らされて、明るく光っている感じがした。


 私はその背中をじーと見ながら

 少しは……山田くんと進展できたかな……?

 そう思った。

 

 そう、私、月野雫は、同じクラスメイトの山田海人くんの事が……

 好きだったのである。


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