第23話 俺は今、彼女と手を繋いでいる。

 俺は月野さんと別れた後まっすぐ家に戻った。


「……ただいま!!」


「あっ! おかえり!! 山田くん!!」


 それ俺と彼女はただいまの挨拶をする。

 玄関の先の部屋からはとてもいい匂いが充満している。


「なんか、すごいいい匂いだね」


「あっ! うん、ちょうどご飯できた所だよ!」


「そうなんだ! ありがとう」


 俺はそう言って、洗面所で手を洗い、リビングに行った。


「あ! そうだ、中川さん!」


 俺は彼女を呼ぶと、彼女は「なに?」そう顔をキョトンとさせて、こっちを向いた。


「さっきその……根石さんとあったよ……」


「根石さんって……根石沙羅さん?」


 彼女は不思議な顔をそう答えた。


「そう、中川さんの知り合い?」


「まぁ、学校でも少し喋る顔見知り程度だったけど……」


「そうなんだ……あと、ごめんね、あっちの世界に帰る手掛かり……根石さんならわかると思ったんだけど……それを聞く前に自分の世界に帰っちゃった……本当にごめん……」


 俺はそう謝って、彼女に顔を下げた。


「なんで、そんな謝らないで! 私は一緒に元の世界に戻る手がかりを探そうって言ってくれただけでだいぶ心が救われたの! だから、ありがとう」


「中川さん……」


 俺は彼女にそう言われて顔を上げた。


「それよりもさ! これみて!」


 そう言って彼女は俺をキッチンに呼び出す。

 そして……


「じゃ! じゃ〜ん!! 今日のご飯は! 生姜焼きと肉じゃがだよ!」


 そう言って彼女は、おぼんにのった出来立てほやほやのご飯をリビングにあるテーブルに置く。


「美味しそう〜〜」


 彼女の料理は本当に美味しそうに見える。


 それから俺は、彼女の作ってくれた料理を美味しくいただいた。

 感想は、とても美味しかった、その一言に尽きた。






 ーーそして、中川さんがこの世界に来てから

 二週間が経過した。


 あたりはすっかりと梅雨の季節へと移行した。

 ここ最近は毎日雨が続いている。


 今日も朝、いつも通り準備をして、いつも通り家を出た。


「いや〜最近は雨がすごいね〜」


 そう横で傘を差しながら喋るっているのは、俺の好きなゲームのキャラの中川さんこと、俺の同居人中川鈴音だ。


「ほんとだね、あっ! そこ、踏んだら濡れちゃうよ!」


 俺は彼女の体の先に大きな水たまりを発見した。


「うわ! びっくりした、ありがとう山田くん! 私相変わらず、このままだったら足がずぶ濡れになってしまうとこだったよ……」


「よかった……足が濡れなくて……」


 俺は安堵の声を漏らす。


「そういえば、梅雨が明けると、期末テストが待ってるね」


「あっ、そうだね……期末テスト……」


 そう、俺たちには夏休み前に期末テストが待っている。


「中川さん……期末テスト一緒に赤点取らないように頑張ろう!! まぁ、中川さんは、心配ないと思うけど……」


「うん! 一緒に頑張ろう!!」


 そうこうしている内に学校が見えてきた。

 彼女は俺より先に一人学校へと足を進める。

 理由は一緒に登校している所を見られると何かと面倒だからである。

 まぁ、学校に近づくまでは一緒に登校しているから……もしかしたら、一部の人には、ばれているかも……


「おーす! 海人! 遅かったな」


 教室に入ると正孝がそう挨拶をしてくる。


「まあな、こう雨が続くと、学校に行くのも憂鬱になるもんだ。」


「ん? そうなのか? まぁいいや! それよりももうすぐ期末テストだぜ、マジで俺なにも、勉強してねぇーー!」


「俺もだ……何でか、知らんがやる気でない……」


「なあ! 今度勉強会しようぜ! 俺とお前で!」


 ……勉強会か……確かにいいな……


「やるか、勉強会!」


「ああ! 一緒に勉強頑張ろうぜ!」


 俺の正孝は、勉強会の約束を取り付けた。

 そして、それを聞いていた月野さんが…………


「なになに? 勉強会するの? 山田くんと田中くん! 」


「うん、期末テスト何も勉強してなくてやばいかもしれないから……」


「それなら! 私も参加させて!!」


「えっ? 月野さんも参加してくれるの?」


「うん! 勉強はみんなでしたほうが楽しいし」


 ……正直彼女が参加してくれる事はとても頼もしい……


「ねぇ、ねぇ、鈴音も! 参加しない? 勉強会!」


「……えっ? 私?」


「そうそう! 私!」


「私も参加してもいいの?」


「いいよね! 山田くん、鈴音も参加しても!」


「いいの? 山田くん……」


「もちろん! 俺も中川さんと一緒に勉強会できて嬉しいよ!」


 俺はそう答えた。

 中川さんは、俺も小テストの結果を見せてもらった事があるが……点数は満点に近かった。

 なので、中川さんが参加してくれて俺としても嬉しい!!


「えへへ、よろしくね三人とも!」


 そう、月野さんが俺たちに述べる。

 そうして、俺たちは期末テストの勉強会の約束を取り付けることになったのであった……



 ーーそして、学校が終わり、家に帰ると


「ねぇ、山田くん……外、雨すごいよ!! これ大丈夫なの?」


 そうソファに座る彼女が心配そうに見つめた。


「うん……大丈夫だよ、心配はいらないと……」


 俺が言葉を述べてる時、花火が打ち上がったみたいなそんなでかい音がなった。


 これは……まさか!? 


「これ、もしかして、雷?」


「…………」


「……山田くん? どうしたの?」


「あ、いや何でもないよ! うん、多分雷だね…………」


 俺がそう言った直後、雷がもう一度、音を告げた。


「びっくりした! 割とでっかいね、雷の音……びっくりしちゃったよ!」


「……うん、そうだね……」


「どうしたの? 山田くん……なんか、調子悪い? 大丈夫?」


「うん? いや、大丈夫だよ」


「ひっ!」


 俺は雷の音にまたまたびっくりした。


「山田くん……本当に大丈夫?」


「うん……本当にひっ!」


 俺はまたまた雷の音にびっくりした。

 ……そう、俺は雷が大の苦手なのである……


「山田くんもしかして……雷怖いの?」


「えっ? いや、その……はい……」


 俺は彼女に聞かれて正直に答えた。


「じゃあさ、山田くんこっち来て!」


 へっ? そう言うと彼女はソファにいる自分の所に来てと俺のことを呼んだ……

 俺は呼ばれるがままに彼女の横に行く。


「どうしたの? 中川さ……」


 俺は中川さんの横に行って話しかけた瞬間、彼女に手を握られた。


「こ、こ、これはどういう事なの? 中川さん?」


 俺は明らかに動揺していた。だって、彼女にいきなり手を繋がれたのだから…………


「これなら、少しは怖くないでしょ……」


「えっ……それは……その」


 なんだか知らないけど……彼女に手を繋がれると、怖さがとても和らぐ感じがした。


「……雷が治るまで、ずーと手を繋いであげるね」


「え、中川さんありがとう……」


 俺は今、彼女と手を繋いでいる。


「そうだ、山田くんなんかテレビ見ようか! テレビを見れば、少しは怖さが和らぐと思うよ」


「うん、そうだね……」


 そう彼女はテレビをつけるために、リモコンを取ろうと立ち上がった。

 彼女はリモコンを取ろうとする時も俺の手を離さなかった。

 なので、俺もつられて一緒に立ち上がった。


「あっ! ごめんね、山田くん……なんか、一緒に立ち上がらせちゃって」


「いや、ふふ笑、なんかありがとう中川さん……」


「どう? 少しは怖さが和らいだ?」


「うん……中川さんのおかげで……」


 そうして、俺と彼女はソファで一緒にテレビを見る。


 その間も……相変わらず俺と彼女は手を繋いだままだった。





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