第15話 おい、お前、そんなに料理できたっけ?

「ふ〜やっと、今日の学校も終了、と」


 俺はそう家に着くと、一息ついた。


「あ、そうだ、中川さん明日、俺夜バイトだからさ、一人になっちゃうけど、大丈夫そう?」


「そうなんだ、大丈夫だよ、じゃ、私! 暖かいほかそかのご飯、用意して待ってるね!」


「あ、ありがとう。」


 ーーそれから、今日も晩御飯を彼女が作ってくれた。

 今日の夜ご飯は、牛丼だった。

 一口お肉を口に入れると口の中で肉の旨みが溶け込んで来た。

 そして、昨日同様、彼女特製のお味噌汁もとても美味しかった。

 俺はすっかり彼女のお味噌汁の虜になってしまったようだ。


「ねぇ、山田くん、明日私! お弁当作ろうと思うんだ! だからさ、楽しみにしててね!」


 ご飯を食べ終わると、そう彼女が言って来た。


「うん、楽しみにしてる。」


 俺は表面上、冷静を装っているが、内心、叫び出したいぐらい気分が舞い上がっていた。

 なにせ、俺のゲームの好きなキャラがお弁当を使ってくれるというのだから。


 俺は明日、彼女が作ったお弁当を食べるのがとても楽しみになった。


 ーーそして、次の日、朝起きると、


「じゃじゃーん!!」


 そう嬉しそうに言って彼女は、四角い容器を俺に見せてくる。


「これ……もしかして?」


「うんうん! お弁当だよ」


 俺は彼女の手作り弁当に感激のあまりお弁当が入ってる、箱を開けようとした……


「山田くん! ストップ〜〜」


 すると、彼女が俺がお弁当を開けようとした事に待ったをかけた。


「へへっ、私、山田くんに喜んでもらいたくて頑張ったから、その、後でのお楽しみで」


 そう彼女は顔を赤らめて言った。


 ……可愛い。

 俺は今ゲームの推しヒロインとカップルさながらの会話をしている。これは現実か?


「わかったよ、お弁当楽しみにしているよ」


「へへっ、喜んでもらえると嬉しいな〜〜」


 そう彼女は言って、キッチンに戻って行った。


 それから、彼女が食パンを焼いてくれて、二人でそれを食べる。

 そして、学校の支度をして、俺たちは家を出た。


「あのさ、中川さん、俺、思ったのだけど……」


「なに? 山田くん……?」


「その〜昨日帰り道に行った、その〜待ち合わせ場所を決めるために下駄箱に紙を入れる約束だけどさ、やっぱり〜やめない?」


「え〜なんで〜二人だけの秘密っぽくていいじゃん!」


「よくよく考えたらさ、その、別に待ち合わせの約束は今だってできるんだからさ、なにも下駄箱に紙入れたりするのはその、あまりにも非効率って言う

か……」


「う〜ん、私は、面白ろそうだと思ったんだけどな……下駄箱に紙を入れて待ち合わせ場所を伝えるの、特別感があって……」


 まぁ、中川さんがそう言うなら……


「……わかった、じゃあ、俺が中川さんの下駄箱に紙を入れるから、そこに書いてある待ち合わせ場所に来てね!」


「うん! わかった」


 そう彼女は喜んで言って見せた。


 ーーそして、お昼休憩の時間


 俺の席にいつものように正孝がやって来た。


「あれ? お前今日、お弁当か?」


 正孝は、物珍しそうに俺の弁当を見る。今までずっと昼食に購買で買っていたから、よっぽど、

 俺が弁当持ってくるのが珍しいのか?


「うん……まぁ、たまには弁当もいいかなって」

ほんとは、中川さんに作ってもらったんだけど……


 そう言って、俺は弁当の蓋を開ける。


 これは……!

 そこには、いろんなお惣菜が均等に詰め込まれていて、右にはのりなどで可愛いうさぎちゃんをデコレーションしている、ご飯があった。

 すごい! 何というか宝石箱みたい……


 俺が中川さんの作った弁当に見惚れていると。


「おい、お前、そんなに料理できたっけ?」


「……えっ? それは……」


 俺が若干、返答に困っていると……


「ええ〜! 山田くんのお弁当! すごく可愛いね!!」


「へぇ〜山田くんって以外と女子力あるんだね! なんか意外!」


 そう、クラスの人たちが俺の弁当をみて感想を述べる。


 気づけば俺の席の周りにクラスメイトが集まっていた。


 これ、どういう状況すか?


 一方ーー中川さんは、月野さんと一緒に教室で、ご飯を食べようとしていた。


「あれ、鈴音って今日、もしかしてお弁当?」


「うん、そうだよ……」


「あっ! これ? 鈴音の弁当? すごく可愛いね! これ全部鈴音が作ったの?」


「うん」


「すごいよ! ふむふむ、これは鈴音、いいお嫁さんになりそうですな!」


「ちょっと、お嫁さんなんてまだ気が早いよ……」


「この、のりでデコレーションされてるうさぎちゃんすごい可愛い!!」


 そう月野さんが割とでかい声で言った。


 ……へっ?


「あっ」


 月野さんの声は割とここまで聞こえてきた。それを聞いた、

 俺の周りにいたクラスメイトが俺の弁当を二度見する。


「うさぎ……」


「中川さんもうさぎ……」


 クラスメイトの一部は俺と中川さんの弁当に同じのりでデコレーションされたうさぎがある事に疑問を思っている様子だった……


「うん? 山田? まさかそれ、中川さんに作ってもらったりしてないよな?」


「お前! まさかやっぱり中川さんと付き合ってのか!?」


 そう、クラスメイトに詰め寄られる。

 まったく、勘弁してくれ……


「なんか、あっちの方、騒がしいね! 鈴音、ちょっと行ってみようよ!」


「うん」


 やばい! 

 今度こそ言い逃れできないか!? 

 まぁ、俺と彼女は別に恋愛関係にないのだが……


 俺がこの事態に困惑していると、


「あれ? 山田くんも、うさぎちゃんのデコレーションされてるの? 私も今日、うさぎちゃんなの?

どうやら、すごい偶然だね!」


 そう、中川さんが言葉を述べた。


「なんだ、偶然か…………」


「てか、二人とも同じうさぎちゃんなんて、すごい偶然だな!」


 そう、クラスメイトのわだかまりが解けていく。


 ふぅ〜助かった〜〜

 後で、彼女にはお弁当含め、お礼を言わないとな……


 俺は彼女が真心込めて作ってくれたお弁当を口にあ入れながらそう思った。


 ……とても美味しいーー


 ーーそして、放課後


 俺は、授業中、こっそり書いた、この紙……


(放課後、学校のすぐ近くの公園で、待ってくるから)


 そう書いてある紙を中川さんの下駄箱に忍ばせた。


 そして、俺は公園まで歩いて……公園に着くと、

 ベンチに座って、中川さんが公園に足を運んでくるまで待つ。


 中川さん……無事、来るのかな?     


 俺はそう思いつつ、スマホでゲームをしながら彼女を待った……


 しばらくすると、誰かの走る足跡が聞こえてくる。

 そう、その足跡の正体は、中川さんだ。


「ごめんね! 遅れちゃって!!」


「いや、全然大丈夫だよ! それより、無事に公園まで来れて本当に良かった。」


 そして、彼女は、俺が座ってるベンチの横側に座る。


 俺はまず彼女に第一声…………


「中川さん今日、弁当おいしかったよ、ありがとう」


 そう伝えた。


「それは、よかった! 山田くんのお口にあって、うさぎちゃんどうだった?」


「とても可愛かったよ! お弁当もオシャレで美味しかったし、本当にありがとう!」


「えへへ、褒めすぎだよ〜〜」


 彼女は照れながらそう答えた。


「それじゃ、帰ろうか、中川さん」


「うん! 帰ろう、」


 俺たちはほぼ同時にベンチから立ち上がる。


 そして、俺たちは煌びやかな足取りで帰路に着くのだった。








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