第14話 ……ふむ、理由を聞そうじゃないか、

「あ〜美味しかった! ここのパンおいしいね!」 


 そう彼女が、満足げにパンの感想を述べた、気づけば彼女が買った、メロンパンと、あんぱんの中身がなくなっていて、袋だけになっていた。


 ……でも、なにより、彼女が満足そうでとても良かった。


 ーーそれから、俺も焼きそばパンとカレーパンをたいらげ、中川さんとしばらくここの涼しい風に当たっていた。


「どう、中川さん、少しはこの世界慣れた?」


「うん、おかげさまで」


「それは良かった!」


 彼女が、この世界に慣れてくれてこっちとしても安心できる……


 だけど、本来彼女がいる世界は、この世界ではない……彼女が元の世界に帰れるように……

 手がかりを探さなければ……



 ーー俺たちはお昼休憩のほとんどをあの俺が勝手に呼んでる、学校の秘密の場所、穴場で過ごした。


 俺たちは横並びになって、教室へと歩き出した。

教室に戻る途中、彼女の横を歩く俺に対する男子諸君の目線が痛かった。


 自分のクラスに戻ると……


「鈴音ーー! と山田くん、二人でどこ行ってたの!? 私も誘ってよ〜〜」


 そう言って、中川さんに月野さんが抱きつく。


 俺はそれを横目に影を潜めて座席に戻って、座った。


「おい、海人!」


「……正孝! どした?」


「どした? じゃねぇーよ! お前、いつからあの中川さんと付き合い始めたんだ!? 」


 ……はっ?


「とぼけんなよ〜海人、お前どうせ、お昼休みの時間、二人で、イチャイチャしてたんだろ! お前、この前三次元の女子興味ないとか言ってたじゃないかよ〜〜しかも、あの中川さんだぜ、全員が美少女と認めるあの中川さんだぜー、羨ましいー」


「ちょっと待て、なぜ俺と彼女が付き合ってるなんて事になる?」


「へっ? 違うのか? 俺はてっきり……」


「彼女がこの学校に来てばっかで、学校を色々案内していただけだ…………」


 そう、俺は正孝に嘘をついた。

 俺と彼女が俺が学校の穴場と言われる所でご飯を食べていたなんて言ったら、あらぬ誤解をされてしまう恐れがあるからな、


 すまん、正孝、


「なんだーそうか、そうかまあ、お前にあんな可愛い彼女があるわけないか……」


「おい! 俺に失礼じゃないか? それに、いるかもしれないぞ俺にもあんな可愛い彼女が」


「まぁ! お互い頑張ろうぜ、お互いな」


そう言って、正孝は俺の方をポンポンして来た。


「あっ! そういや、俺も推しができたぜ! 私立金森学園物語で」


「まじか! 一体誰だ?」


「ふふふ、それはな! 根石沙羅ねいしさらだ!」


「……ふむ、理由を聞こうじゃないか、」


 いま、正孝があげた、根石響は、私立金森学園のゲームの中のヒロイン十人の中の一人で、いつも、主人公に勝負を挑んでくる、そんなとてもわんぱくで明るい子だ。


「それは! 最初は主人公に向かって、勝負ばっかり挑んだけど、ストーリが進むにつれて、他のやつには見せない、主人公にしか、見せないデレ具合がとても最高なんだよな……!!」


 ……わかる、そう、彼女は最初は主人公に事あらば勝負を挑み、いつもツンツン尖ってるけど……

 そんな自分にいつもなんだかんだ……付き合ってくれる主人公に惹かれていって、物語が進んでいくについて、どんどんデレ具合がましていく……

 それがまた、彼女の魅力で、たまんないのだ……


「やはり、あのゲームのヒロインの中でも最高のヒロインは根石さん、彼女だ! それは断言できる。」


「それは、違うな! やはり、あのゲームの最高のヒロインは、やはり三葉さんだ!!」


「いやいや! 根石さんに決まってるだろ!」


「いやいや、三葉さん以外ありえない!」


 俺と正孝はしばらくの間……そう言って歪みあっていた。



 ーーそして、放課後


「それじゃあ! 帰ろうか、山田くん! 」


 そう彼女が、帰りの準備をしている俺に言って来た。


「ねぇ? あの二人ってやっぱり付き合ってるの? 」


「確かに……友達だとしても距離近いもんね、」 


 そうクラスが噂する声が聞こえる。

 そして、なにより……クラスの男子の視線が痛い、


「ん? どうしたの? 山田くん……」


「いや……なんでもないっす、帰ろうか……中川さん」



 ーーそして、帰り道


「ねぇ、中川さん、今度から家に帰る時、別々に帰らない? 」     


 俺は、クラスで騒ぎにならないように……そして、なにより彼女のためにそう言った。

 すると、彼女は寂しさな顔をして。


「なんで〜それじゃあ、寂しいよ……私、できることなら山田くんと一緒に帰りたい……」 


 そう言った。


 とくん、とくん、 

 今の彼女の言葉で俺の胸の奥が熱くなる感じがした。


「どうしたの? 山田くん?」


「何でもないよ……」


「それじゃあさ、中川さん、待ち合わせなんかどう?」


 そう、クラスの皆に騒がれない……尚且つ、彼女と一緒に帰る方法……それは、待ち合わせだ……


「……待ち合わせ?」


「……うん! ここで待ってるという紙を下駄箱に入れるのはどう? 」


 そう……現状、彼女のスマホはこの世界の電波を受信しないため……これが一番、ベストなやり方だと思う。


「ふふ笑、なんだか、秘密の関係……みたいだね、」


 そう言って、彼女は極上の笑みを浮かべた。




















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