第13話 どうやってあの中川さんとお近づきになったんだ?
「……中川さん……もう、多分歩いても間に合うと思うよ……」
「本当……! よかったよ、学校に間に合いそうで〜!」
俺と彼女は、そう会話をして走りから歩きに切り替えた。
さっきまで口に咥えてた、食パンも気づけば、胃の中に消えていた。
「あっ! 見えた! 学校ーー!」
そう言って、中川さんが学校の方を向いてそう言った。
「とにかく……間に合ってよかったよ……」
俺は、朝から走って、相当疲れていた。
「あー! 」
……えっ? 彼女が急に何かを思い出したように、そう言った。
「どうしたの?」
「……弁当作るの……忘れてた……」
「……なんだ、そんなことか……」
「そんな事って、私……山田くんとお弁当作るって約束したし……ごめんね」
「いやいや、謝らないでそれに、昨日夕食作ってくれて俺はそれで満足だよ……」
「……そう?」
「そうだ! 今日お昼、俺が学校の穴場にしている、とっておきの場所! 連れて行ってあげるよ!
そこで食う、購買のパンがとても美味しいんだよ!!」
ーーそして、教室に入ると……
「おはよう!! 鈴音〜〜〜」
そう言って、月野さんが中川さんに抱きついた。
「おはよう! 雫〜」
……そう、月野さんと中川さんが挨拶をする。
「あっ! 山田くんもおはよう!!」
「……うん、おはよう……」
俺は月野さんにそう言って自分の席に向かって歩き出した。
座席に戻ると、一人の生徒が俺の席に来て、詰めかけてきた。
「どういうことだよー!? 山田〜〜」
「ん? どういうこととは、どういうことだ?
「昨日、クラスの奴が見たって言ってんだよ!お前と中川さんと、月野さんが一緒にショッピングモールで買い物してる所!!」
……げっ! 見られていたのか……
「いいな〜〜ってか、お前、月野さんはともかくどうやってあの中川さんとお近づきになったんだ?」
「どうやってお近づきにって言うか、まぁ、成り行きっていうか、何というか……」
まぁ、本当の事、言っても信じてはくれないけどな……あはは笑
「俺はお前が羨ましいぜ〜〜あの月野さんと中川さんと一緒にショッピング!? ハーレムか! この、リアルラブコメ主人公が!」
そう言って、真壁は、俺の髪の毛をぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃしてきた。
「ちょ、お前、やめろ……」
そう真壁と俺が戯れあってると。
先生が教室に入って来た。
「みんな〜席に座れーーホームルームを始めます。」
「はーい」
そう、先生が呼びかけるとみんな一斉に自分の席に戻って行った。
「よーし、それじゃ、ホームルームを始める。
最近暑いよな〜〜そういえばニュースでやっていたんだが、もうすぐ梅雨らしいぞ! そして、梅雨が明けるとーー」
「梅雨が明けると?」
そうクラスの一人が聞きかえす。
「お前らの! 大好きな! 夏休みだーー!」
「フォーーー!!!」
先生がそう告げると、クラスのみんながそう言って騒ぎ始める。
……てか、先生……梅雨明けたら夏休みだーは、いくら何でもペース早くないですか? てか、今日テンション高いですね……
なにか、いいことでもあったのかな?
「……という話だ、今日一日頑張ろう……これで、ホームルームを終わる……」
そう、先生が簡潔だが、ホームルームの終わりを告げた。ホームルームの前後で、先生のテンションが全然違うことが気になったが……
ここは、そーとしておこう……
ーーそれから、俺たちは午前の授業を淡々と受けた。
そして、今日もお昼休みがやって来た。
「山田くん、それでそれで!! 今朝言ってた、学校の穴場っていうやつは!? 」
……そう、彼女が目をキラキラさせて輝かせてる。
穴場というのは自分たちしか知らない、秘密の場所みたいだから、誰だって目を輝かせるのか……
「うん、じゃあ……行こうか……」
そう言って、俺と彼女が教室を出た。
「……そうだ、購買でパン買って行こうか……あ、お金の事は心配ないからね……」
「うん……」
そう言って、俺たちは購買を目指して歩きだした。
「そういえば……この学校の購買ってなに売ってるの?」
「それは……メロンパンとか、あんぱんとか、弁当で言えば……焼肉弁当とか、カツ丼とか」
……この学校では、学食以外にも、購買も充実している。
俺もいつも、お昼は購買にお世話になっていた。
そうこうしているうちに、俺たちは購買に到着した。
「わぁ〜〜パンがいっぱい並んでいる〜〜」
そう、彼女は購買にずらっと並んだ、パンを見てそう言った。
「ここの購買! すごい種類があるね〜」
彼女は購買に並んでいる、パンを見て、何を買うか悩んでいる様子だった。
「あ、そうだ、山田くんはなんかおすすめはある?」
「うーん、おすすめといえば、メロンパンとカレーパンだね」
「そうなんだ! じゃあ、メロンパンとあんぱんにしようかな……」
「わかったわ〜メロンパンとあんぱんね、そこの彼氏さんは何にするの?」
「……えっ、か、彼氏? いやいや、違います! 俺と彼女は、そんなじゃありません」
俺は顔を明るめてそう否定した。
……彼氏さんか……
やはり世間一般的に見て俺たちはカップルに見えるのだろうか……?
「あら〜そうなの? ごめんなさいね」
「いえいえ、全く気にしていませんよ……ね、中川さん……」
「…………」
「中川さん?」
「っ!? えっ? うん、そうだね!」
……一体どうしたんだ? 彼女が今、一瞬固まっていた。
「そうだ、その……山田くんは何にするか決めたの?」
「俺は、焼きそばパンとクリーンパンにしようかな」
そう言って、俺は二つのパンを持ってレジに向かう。
「はーい、メロンパン他、四点で合計七四七円です。」
……そう、この学校の購買のパンは基本的に安いのだ。
それに、この学校のパンはとても美味しいからいつも得した気分になる。
「はい」
俺は八〇〇円をレジの人に渡す。そしたら、お釣りが帰ってきた。
「ありがとね、またきてね〜」
「はい、ありがとうございます。行こっか、中川さん……」
「うん!」
俺と彼女は、学校の俺が勝手に言ってる穴場とやらに一緒に行った。
穴場というのは、学校の屋上へと上がる階段がある、その廊下の右奥に学校で使われなくなった板などが置いてある所がある。
それを避けて通ると、扉がある。
ーーそこを通ると、家のベランダぐらいのサイズの外の吹き抜けた、空間があった。
「これが……、穴場?」
「そうだよ、ここ、何だか風が気持ちいいでしょ?」
……俺もここを知ったのは去年の文化祭だ。
何となく屋上へ向かおうと歩いていると、屋上続く階段の右の方から板が倒れる音がした。
俺は板を元に戻そうと、板を持ち上げていた、すると、板の奥にある、一つの扉があった……
その扉を開けて、風の吹き抜けた空間に出ると、自然と心が満たされる、そんな感じがした。
……それからは、悩み事などがあった時などは、時々ここに来て、座って空を見る、そうすると自然と悩みが消えていく……不思議なものだ……
今までここに来ても、他の生徒と出くわした事はない、ここが、学校立ち入り禁止の場所なのか、それとも他の生徒が知らないのかわからないが……とにかくここは俺の穴場だ……
そういえば……去年文化祭前、屋上で一人の女子の相談に乗ったっけな……あの人あれからどうなったんだろう……名前ぐらい聞いとけばよかったな……
そんな事を思い返してると、横で座ってる中川さんがパンの袋を開ける。
そして、メロンパンをモリモリ食べ始める。
「……風が、気持ちいいね、山田くん……」
彼女は、メロンパンを食いながらそう言った。
ここは、風が吹き抜ける関係か、今の季節すごい風が涼しく、気持ちよく感じる。
俺は風を感じながら……焼きそばパンの入った袋を開けた……
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