第11話 俺は今青い空に包まれた、緑が茂ってる草原の世界に、佇んでいる……
俺と中川さんはスーパで勝った袋と、洋服が入った、袋を持って……俺の家である、マンションの前に到着した。
……疲れた……
距離にしては家から学校まで歩く距離の半分なのだが……
それでも、この荷物のせいか、ひどく歩いた感覚に陥った。
そして、俺たちはマンションの中に入り、エレベータに乗る。
「……なんだか、疲れたね!」
そう彼女が、言葉を漏らす。
……全くその通りだ……今日はなんか、色々あったような感じがして、すごく疲れた。
しかし、なんだか、それも新鮮で、楽しい……そう感じる自分がいた……
「……うん、そうだね」
俺はそう言い、エレベータが七階についたのを確認して、中川さんと一緒にエレベータの外へ出た。
家の中に入ると……台所、キッチンの前にスーパで買った袋……食材を置く。
俺と中川さんは洗面所で、手を洗って、とりあえず食材を冷蔵庫に詰め込んだ。
「……よし、これでひと段落だね」
俺はそう言って、額に浮かぶ汗を制服の袖で、拭った。
「……そうだ、そろそろ晩御飯の時間だね、私!
山田くん! 今日、シチューにしようか」
そう、中川さんが今日の夕食の提案をして来る……
「……えっ? 俺……シチュー、あんまり作った事ないけど……頑張ってみるよ……」
シチューは、作る工程はほとんどカレーライス同じだ……しいていうなら、ルーが茶色いか、白いかの違いだ……
「……何、言ってるの? 私がシチュー作るから、山田くんは、そこで座ってて、いいよ!」
「……えっ、でも悪いよ……」
「ふふ笑、これも交換条件でしょ、」
……でも、確か……俺が提示した交換条件は、確かお弁当だけだったはず……
「でも、俺が言った交換条件は、弁当を使ってくれる……って、事だけだった気が……」
「そんな事は……いちいち気にしなくていいの……それに、さっき、洋服まで買ってもらって……そのお返し……」
「……うん、わかった……ありがとう……」
「あ! そうだ、私の世界でって言うか、私の家直伝のお味噌汁! 作ってあげるよ!!」
「お味噌汁……?」
「うん! うん! 楽しみに待ってて」
そう言って、彼女はキッチンへ行って、冷蔵庫から……
シチューを作るのに必要な食材を出し始めた……
……俺は中川さんが料理しているのを見ていた……
時折、キッチンからほんわかと、とてもいい匂いが漂ってくる。
……おいしそう……
俺は、なんだか、すごくお腹が空いてきた。
キッチンで料理をしている彼女は、ときどき、鼻歌を歌い、とても楽しそうだった。
「……よーし! 完成ーー!」
そう、彼女が、喜んでそう答えた。
……そして、彼女は、おぼんにシチューが入った皿とお味噌汁……そして
トマトやレタスなどの野菜が入った。皿を乗せて、リビングのテーブルに置いた……
「あっ! 中川さん……ごめん、手伝うよ……」
俺はあまりにも中川さんが作った料理が素敵で目を奪われていた。
……そう言って俺は、キッチンにある、もう一人用のシチューなどの皿が乗った、おぼんをテーブルに持って来た。
……俺はあのゲームを通じて、中川さんが料理出来ることは知っていたが……
改めて……現物を見ると……これは、とても美味しそうだ……
「さ! 山田くん! 食べようか〜」
「うん、ありがとね、中川さん……」
俺は料理を作ってくれた中川さんにお礼を述べて……
「いただきます!」
そう、言って、スプーンで、シチュを一口、口の中に頬張った。
「……どう? 美味しい……?」
彼女が心配そうにそう聞いて来た。
……これは、とても美味しいーー
俺は怒涛の勢いで、シチューを口の中に駆け込んだ。
「……とても、美味しいよ……中川さん!! 」
そう俺が彼女の料理の感想を述べると……彼女は嬉しそうに……
「本当!? よかった! 私、心配だったんだよね……山田くんのお口に合うか。」
「中川さん……本当にありがとう! 」
俺は再度、中川さんにお礼を述べて、シチューを口の中に駆け込んだ。
「山田くん! お味噌汁飲んでみて!」
「あっ! うん」
俺は彼女にそう言われて、お味噌汁を一口飲む……
……これは、
それは、不思議な味だった。
言葉では言い表せない……俺は今青い空に包まれた、緑が茂ってる草原の世界に、佇んでいる……
そんな気分に陥った。
言葉では言い表せないと言っても……これだけは確かに言えることがある…………
「おいしい……」
「ふふ笑 気に入ってもらってよかった〜〜」
俺がそうぼそっと呟くと彼女は満足そうな顔でこっちを見る。
「……山田くんこれからは、毎日私が料理、作ってあげるよ……」
そう中川さんは笑顔でこっちを見ながら、言う。
「……それは、悪いよ……」
「いいの……それに、私……自分の
……とくん、
俺は今一瞬、胸がときめく音がした。
「……そう言うなら……お願いしようかな……俺もできる限りの事は手伝うよ……」
俺はご飯を食べつつ、そう答えた。
ーーそれから、俺と中川さんは、ご飯を食べ終わった。
彼女が食器を片付けて皿洗いまで始めようとしたから、俺はそれを静止してくつろいでいいと促した。
「あっ! そうだ、そこのテーブルにある、リモコンの電源入れてみて、右上にある赤いボタンの!」
俺は皿洗いをしている、キッチン越しから彼女にそう提案した。
「これ! テレビのリモコンでしょ! 私の世界にもあったからわかるよ!」
「それならよかった……」
彼女はリモコンの右上の電源ボタンを押す。
……すると、テレビがついた。
……俺はそれを横目に着々と皿洗いを続ける。
時折、彼女の方を見ると……
どうやらこの世界のテレビに釘付けになっているらしい……
それから、皿洗いが終了したので、俺はリビングのテーブルの前のイスに腰をかける。
彼女はと言うと、目をキラキラさせてテレビ画面に熱中している。
「今日は楽しかったありがとう! ほんとにこの世界は楽しいね!!」
そうテレビを見ていた彼女がとても眩しい笑顔でこちらを見て来た。
俺はそれを見てもっと……中川さんにこの世界のことを知って欲しい……そう改めて思った。
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