第10話 はしゃぐ彼女を見てると癒される

 俺たちは……洋服を買い終わったことにより、続いて、食材を買いに行くため、スーパーへと、向かった。


 ……それにしても、さっきあんな事があったんだ……

 俺も、もっと注意深く……いざって時……中川さんの事をフォローできるようにしないと……


 ……現状……今、この世界で、中川さんがゲームの世界からやって来た事を知るのは……俺しかいないから、俺がしっかりしないと……


 俺は人一倍気合いを入れた。


「そういえばさ……食材って、一体誰の食材を買うの?」


「……それは、山田くんのだよ……山田くんの家に食材が全然なくて、それで買いに行こうって!」


 ……ちょっと、中川さん? いくらなんでも喋りすぎじゃないか?


「……もしかしてさ、二人って……」


 中川さんの話を聞いて、月野さんが何かを言おうとしている。


 ……ゴクリ……

 俺は勢いよく唾を飲んだ。


「結構……仲良い??」


「……っ!? そ、そうなんだよな! ね! 中川さん!!」


 ……危ねぇーー何だか知らないがすごいヒヤヒヤする〜〜


「うん! 私、結構! 山田くんと仲……いいと思うよ!!」


「そうそう! それはよかったよ〜」


 中川さんがそう告げると、月野さんが笑顔で首を縦に振ってそう答える。


 ……そうこうしている内に……スーパーが見えてきた……


 ここの「モオン」のスーパーは、俺たちが入ったショッピングモールの入り口からだと……およそ反対側に位置している。


 そのため、俺は結構、スーパーに行くのに歩いた感覚に苛まれた。


 そして、スーパの入り口の上にはでっかく「ハスミ」の文字が……


 俺たちは、入り口付近にある、ショッピングカートいわゆるカートを取りに行ってその中にカゴを入れて、店内に入った……


「ねぇ! ねぇ! 見てみて、山田くん! このカート! タイヤついてるよ!! 動くよー! すごいねぇー!」


 そう言って彼女はしゃいでいた。

 ……周りにいる大人たちは和かな笑顔で彼女を見ていた。


 ……まぁ、はしゃぐのは無理もないか……だって、彼女は昨日、ゲームの世界からこっちに来たばっかりで、知らない……初めてのものばっかりだもんな……


 俺はそんなはしゃぐ彼女を見て、癒される感じがした。


 そして、俺たちはスーパーの中を進んで行く……

中川さんは、レジの入ったカートを手で押しながら、初めて見る商品に少年、少女の輝かしい眼を光らせて、進んで行った。


 それから俺たちは何を作ろうとしているのかかんごえてなかったため、とりあえず食材をあれこれカゴに入れた。


 そして、スーパーの中をゆっくり進んでいくと、中川さんがあるものを発見する。


「これ! もしかして、箱アイス?」


 そう彼女が聞いて来た。


「そうだよ……中川さんの世界には、箱アイスあったの?」


「うーん! 私の世界は、箱アイスっていうより、棒アイス主流だったからな〜〜スーパーに行っても、ほとんど棒アイスだったよ!!」


「へぇ〜そうなんだ!!」


 ……なんだそれは、スーパーには、ほとんど棒アイスしか置いてない、これは興味深い世界だぞ!


「ねぇ、山田くん、中川さんの世界ってなに?」


「……えっ!? あはは笑、何だろうな自分で言っててもよくわからないわ、はは笑」


 危ねぇー! 今一瞬、月野さんがいること忘れてた!


「ふふ笑! なにそれ……山田くんも面白いこと言うね! 」


 ……とりあえず……彼女には誤魔化せてよかった。


 そして、俺たちは、お菓子コーナーへと足を運ぶ。


「なにこれ! 「アニマルカートウエハース」だって! お菓子とカードが一緒になって売ってるのへぇ、不思議ねぇー」


 ……今、中川さんが興味を持っている……「アニマルカートウエハース」だが、これは……

 今世界中で人気の対戦レースゲーム「アニマルカート」のプレイアブルキャラである、通称「アニマル」たちをカード化したものである。

 いつもは、人気で滅多にお菓子売り場に売ってる所は、見たことがないな〜

 何だか、俺は得した気分になった。


「何かのお菓子! 「めるめるめるね」だって!あっ!こっちは、「アニパキ」だって、なにこれ面白い!!」


 今の中川さんのボルテージは、おそらくMAXに達しているだろう……

 

 ……そして、俺はそんな彼女から、目が離せなかった。彼女は、何だか知らないけど……見てて、飽きず、ずっと見ていられそうだった。


「えへへ笑、鈴音……何だか楽しそう……可愛いね」


「……本当だね……」


 俺と月野さんは、今、お菓子売り場ではしゃいでる彼女に癒されてるに違いない……


「……なんか、ごめんね……私だけ何だか楽しんじゃって」


「いやいや、俺も中川さん見てて、楽しかったよ……」


「そうよ! 鈴音ー! 何だか、私まで楽しい気持ちになっちゃったんだから!」


俺と月野さんは、中川さんにそう言った。


 ……俺はさっきの彼女の初々しい反応がとても愛おしく思ってしまった……

 そして、中川さんにもっとこの世界の事を知ってもらいたい……そう思った。


「いやーたくさん買ったね!」


「ごめん……レジ袋、持ってもらっちゃって……」


 俺は自分の両手じゃ、収まりきれず一つ袋を月野さんに持ってもらっていた。


「うんうん! 私、今日とっても楽しかったから……これぐらいどおって事ないよ!!」


 それから……俺たちは、ゆっくりとスーパから反対側にある、「モオン」の出口に向かって歩き出したを


 「モオン」を出ると、空一面がオレンジの色彩に包まれていた……


「いやー今日は楽しかったよ! ありがとう二人とも」


 そう月野さんが感謝を述べた。


「いや、こちらこそ、月野さんがいてくれて助かったよ……」


 ……実際、月野さんがいた、中川さんの服選びに関して助かったからな……


「……雫……、山田くん……」


 俺は中川さんに呼ばれて、月野さん同様、彼女の方を向いた。


「……また、来ようね……「モオン」……」


 そう彼女は、恥ずかしがりながら言った。


 俺と月野さんは顔を向かい合わせてニコッとした。


「うんうん! また来ようね! 鈴音」


「うん! そうだね、また来よう……」


 月野さんと、俺はそう、言葉を漏らす。


「あっ! そうだった、これ……」


 そう言って、月野さんが片手に持っていた……レジ袋を差し出した。 


 そのレジ袋を中川さんが受け取り……

 月野さんが後ろ歩きで一、ニ歩下がり、

 

「じゃーね! 今日は楽しかったよ! ありがとう、また学校でね〜〜」


 そう月野さんが元気に手を振って、歩き出した。


「俺たちも行こうか……」


「……うん……」


 ……それから、俺たちは重いスーパーのレジ袋を持ちながら、帰り道をゆっくりと歩いた。


「……山田くん……」


「……なに? 」


「今日はありがとう、楽しかったよ……」


「……それは、よかった…………」


 俺は、この出来事で、ゲームの世界からこちらの世界にやって来た……

 中川さんの不安が少しでも和らげばいいな……


 そう思った。

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