プロローグ(2)

 「それで、見込みのありそうなやつだったな。今年は特に多い。」

 

 これほどの期待を向けられているのは、ジェネレシア学園が名門校として有名だからであり、才能の持っている若者が最も集まる。

 その要因として、学園は国家のバックアップを受けていることにあり、様々な地方に使者を送り、才能のある子供をスカウトしている。

 そして今年は質も量も含めて、特に豊作かもしれない。

 


 「俺が特に強いと思ったのは…、こいつだ。種族は星の魔女ステァルギス。」

 

 皆目を見開いている。

 この世界には魔女と呼ばれる種族がいる。古代から存在する魔法のエキスパートだ。

 

 「星の魔女ステァルギス、確か星々の神言アストロソールを扱える唯一の種族だったな。」

 

 知的な雰囲気の魔法使いがそう説明する。一般的に知られていないほど珍しい存在だが、未知を既知とする冒険者なら知っている者もそれなりにいる。しかし肝心の魔法の方については不明。

 

 「で、その星の魔女ステァルギスだが。何でも既にSクラス冒険者レベルのポテンシャルがあるそうだ。」

 「「「Sクラス!?」」」


 冒険者達が同時に驚く。当然だ、Sクラス冒険者はまさに英雄。才能が無ければなれる者では無い。ましてや、20にも満たない子供の時点でそれほどの実力を持っているのだ。

 

 「他には、吸血鬼、赤鬼レッドオーガ一角聖獣ユニコーン、竜人、ハイエルフ、ダークエルフ…。」

 「どれも強そうだな。ユニコーンなんて見たこと無いぞ。」

 「いろんな種族がいるわね。しかも珍しい者ばかり。」

 

 驚く者、分析する者に反応が分かれる。

 本当にそうだな。流石は中立国家でもあるアスガルスだ。

 

 

 「流石は相棒!これゃ、新参の活躍も期待できるってもんよぉ!」

 「これくらい朝飯前だ、ガルド。」


 相棒にそう言って、再び酒を仰ぐ。

 情報収集に長けた暗殺者アサシンであれど、ジェネリシア学園の生徒情報を仕入れることが出来る人間は限られる。バドルドが出来るのは、学園の職員に知り合いがおり、そこから仕入れているからだ。

 麦汁の冷たさに浸っているところに、1人の壮年な冒険者が質問する。


 「全体的にどれくらいのポテンシャルがあるんだ?」

 「そうだな……。英雄クラス…、それこそ〘英傑伍光〙や〘四獣聖者〙、〘蒼星の勇者〙に並ぶ連中が現れるのは確実だな。」


 「全員伝説の英雄じゃねぇか…。」

 「魔王と対等に渡り合える人材が豊富なのね。」


 俺が例に上げたのは、この世の頂点、魔王を討伐した勇者達。


 「最近は魔物も活発になっている。この辺りの魔物はただでさえ強いのに、さらに活発になってるせいで被害が大きくなっている。」


 「まさか、魔王出現の前兆だったり?」

 

 相棒がそう予想する、確かに魔物の活発は魔王出現の前兆でもある。


 「いや、魔王が出現せずともこの現象は起こっている。が、どのみち脅威に違いない。」 


 「なるほど、まだ見ぬ新人への期待が高まりますね。」

 

 「あぁ。新参こそが、俺達古参にとって希望の光となる。」


 バドルドは酒を掲げた。

 これから先の世界が、光ある世界であることを願い、未来の強者達に向けて乾杯する。

 そして、これからも仲間と共に切磋琢磨することを誓いながら、再び酒を仰ぐ。

 

 「おめぇ、やっぱり酔ってるよな?」

 「……酔ってない。」

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