新たな一歩

田中は、美咲としての生活にまだ慣れきれずにいた。


女子高生としての毎日は、仕事での忙しさとは全く異なるものであり、新たなルーチンに適応するのは簡単ではなかった。


特に、女子高生としての振る舞いやルールに悩んでいた。


「これが女子高生の生活か…」と、田中はため息をつきながら教室で考えていた。


クラスメートたちとのコミュニケーションは、彼にとってはかなりの挑戦だった。


放課後、田中は自分の思いを整理するために、清美に相談しようと決めた。


清美が家にいるとのことで、彼は急いでメッセージを送った。「もしよければ、少し相談したいことがあるんだけど、今晩会えるかな?」


数分後、清美から返事が来た。「もちろん、家に来てください。ゆっくり話せる場所がありますから」


田中は清美(翔)の家に到着し、玄関を開けると、清美が温かく迎えてくれた。「いらっしゃい、どうぞ入って」と言われて、田中は翔の部屋に通された。


「お茶でも飲みます?」と清美が提案する。田中は少し安心し、「お願いします」と答えた。


田中はその落ち着いた雰囲気に少し安堵した。


だが、翔としての部屋には、かすかに漂う男性的な匂いがあった。


その匂いに触れた瞬間、田中は自分の身体が敏感に反応するのを感じた。


戸惑いを隠せない田中だったが、清美の優しい眼差しに支えられ、自分の感情を整理しようと努めた。


二人は対面し、お茶を飲みながら話を始めた。「実は、まだ女子高生の生活にうまく馴染めていないんだ。クラスメートたちと話すのも、授業の内容も、何もかもが新しくて…どうやってこの状態を乗り越えればいいのか分からない」と田中が打ち明けると、清美はじっと耳を傾けていた。


「それは大変ですね。でも最初は誰でも戸惑いますよ。少しずつ慣れていくしかないんじゃないですか?無理に完璧を求める必要はないと思います。」と清美は優しく答えた。


田中は頷きながら、「でも、この体で過ごすと、どうしても違和感を感じてしまうんだ。周囲の視線が気になったり、女子としての役割に戸惑ったりして…それにどう対応すればいいのか、具体的なアドバイスがほしいんだ」と続けた。


「それは自然なことですよ。自分の体や周りの人々との関係に戸惑うことが多いと思います。そこは慣れるしかないですね。」と清美は親身になってアドバイスした。


「それに、もし何か困ったことがあったら、いつでも相談してくれればいいですよ。私も翔の体で過ごす中で悩むことが多いですが、できる限りサポートしますから」と、清美は温かい言葉をかけてくれた。


田中はその言葉にほっとした気持ちを抱き、清美に感謝の気持ちを伝えた。「本当にありがとう。話せて少し楽になったよ」


田中はその言葉に安心感を覚え、さらに清美の言葉に耳を傾けたが、どうしても翔の匂いが気になってしまう。


そしてその違和感に自分の感情がどうしようもなく揺れ動くのを感じた。


「実はね…」と田中は言いかけたが、言葉が詰まった。


清美は彼の困惑を感じ取り、少し距離を詰めて「大丈夫、何があっても田中さんのことを支えますよ」と優しく言った。


その瞬間、田中は自分の感情が抑えられないことに気づき、清美にすがりつくように抱きしめた。


二人はそのままお互いを抱きしめ、静かな時間を過ごした。


しかし、田中は抱きしめられる安心感と、元に戻りたいという願望に揺れ動いていた。

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