勇者辞めさせてください

貝袖 萵むら

第1話 勇者なのに勇者パーティーを追放される

ここはとある異世界の一国、アーノルド王国。俺は異世界転生を果たした勇者だ。

転生の際神様からもらったギフトは何もない。しかし転生した場所が王国の英雄を召喚している場所だったため、勇者として魔王を倒す任務を依頼された。

私は王国の勇者として凄腕の騎士や冒険者とパーティーを組み、冒険をしていたが、私の勇者としてのあまりの弱さにパーティー全員から嫌みを言われていた。

冒険の途中、巨大ミミズのモンスターが襲いかかってきた。自分は何もできず後衛の陰に隠れた。ソードマスターが圧倒的な剣技でモンスターを討伐した。


「はー。ほんっと使えねえ。勇者交代しろ。ニルビ。」


「ご、ごめんなさい。」


うるさい俺が勇者なんだよとは言わない。この称号が恥に変わるほど僕は弱かった。

仲間はハイウィザードのヒユリス、ソードマスターのコレック、アークプリーストのリュナテア、タンクのガラム。


ウィザードは火魔法なら全ての魔法を使えるし、ソードマスターの剣技は王国で一番。僕が勇者に選ばれ冒険するにはあまりにも強い仲間だった。

冒険している途中、ソードマスターのコレックがある提案をした。


「勇者ニルビの国王からもらった金俺たちにくれないか。お前無一文になれよ。」


コレックの提案にニルビは動揺した。


「な、なんでですか。僕がお金がないと言ったら勇者には褒美をやろうと言われてい

ただいた大切なお金です。これがないと生きていけません。」


タンクのガラムが口出しした。


「勇者だろうと人間だ。自分の大切なお金を守るのは当然だ。だが、俺らにも対価がほしいよな。なにせ、こんな雑魚のおもりを任されてるんだからな。」


ハイウィザードのヒユリスも賛同した。


「勇者としてここまで実力がないと目に余ります。護衛をしている私たちの身にもなってほしい。なんて足手まとい。」


アークプリーストのリュナテアは彼のカバンを叩いた。


「そうねー。足手まといは金でもあげるべきよねー。ほら、さっさと財布を出せや。」


僕は、仲間の言葉を聞いて仕方なくカバンから財布を取り出した。


「半分で勘弁してください。」


コレックは財布をニルビから奪い取った。


「寄越せ。ほほー。こいつ国王から結構金もらってるみたいだぜ。さすが雑魚でも勇者なんだな、お前。」


コレックは財布からつかめるだけコインをもらうと仲間で分配した。


「ほら金だ。分配すんぞ。」


ガラムらが金を受け取った。


「これだけあれば食い扶持には困らないな。」


「ちょっと私の取り分少なくない。」


「ほんとにお金とるなんて下種ね。コレック。」


コレックはリュナテアの言葉に反抗した。


「うるっせ。弱いこいつが悪い。」

そのまま、モンスターを倒し続けた。アーノルド王国の城に帰るとコレックがまたニルビの件でチームと相談した。


「なあ、こいつ要らないだろ。魔王討伐は俺ら4人でやろうぜ。もちろん道中で強いやつ仲間にしてさ。」


ヒユリスがコレックの言葉に同調した。


「さんせーい。私もいらないと思いまーす。こんな後衛の私とリュナテアの陰に隠れるだけの男。」


「確かにこの男、ニルビは弱すぎる。勇者だというのになんのスキルも使えない。」


「スキルが使えないし魔法は全くできない。こんな勇者見たことないんですけどー。」


ガラムやリュナテアもコレックに賛成した。


コレックがニルビの胸ぐらをつかんだ。


「なあ。役立たずのお前はこのパーティーからいなくなった方が仲間のためだぜ。おとなしくこの部屋を出ていけ。」


ニルビもコレックの胸ぐらをつかんだ。


「おお。なんだやる気になったのか。男だもんな。一発ぐらい殴ってみろよ。」

ニルビは一発コレックを殴った。しかしコレックは全く攻撃が効いていないという表情を見せた。


「人間はこうやって殴るんだよ。」


コレックから何発も顔面に打ち込まれた。勇者ニルビ顔から血をだしており腫物もできていた。


「ちょっとやりすぎじゃないコレック。」


「そうよコレック。追い出せばいいだけなんだから。」


タンクのガラムがコレックの腕をつかんだ。


「それくらいにしてやれ。流石に可哀そうだろ。」


殴られた体のままニルビはその場から逃げ出した。顔がボロボロの状態で王国の城から出ていた。


「逃げ出すのか、最後まで情けねえなあ。ニルビ君。」


コレックからの声を聴きながら思い出を忘れようとニルビは必死に走っていた。


「くそがっ。どんな手を使っても必ず復讐してやる。」


ニルビはコレックら勇者パーティに必ず復讐すると誓った。

ニルビが逃亡した先は城下町だった。

そこでは果物や野菜、肉や魚、魔道具が売られていた。

ニルビはお腹がすいていて肉や魚に飛びついた。しかし、彼が財布を取り出して中身を見たが、肉をひときれ、魚を1匹だけ変えるお金しか持っていなかった。彼は腹のたまる量の多い魚の方を選び、購入した。

城下町の外れの裏路地で身を潜めながら魚を食べていた。魚は鮎の塩焼きだった。

彼は泣きながら魚の身をこぼさないよう丁寧に食べていた。


「くそっ。あいつら絶対に許せねえ。パーティー僕がいなくなったこと必ず後悔させてやる。」


こんな時、チートじゃないと思っていたスキルが覚醒して真の力を発揮するものだが、彼はスキルすら持っていなかった。


「まずはスキルを入手しないと。」

勇者ニルビはお金と新しいスキルを入手するため、冒険者ギルドに向かった。


「あの、クエスト受注をどうかお願いします。私、今お金がなくて。」


「ほう、職業勇者か。勇者様がくるとは。お前のレベルじゃ受けれるクエストはあるが、こんなのはどうだ。」

ギルドマスターから受け取った紙には巨大ゴブリン、白藍竜、巨大ミノタウロスの討伐など難しいクエストばかり書かれていた。


「こういうのじゃなくて。町の困ったことを助けるような誰でもできそうなクエストを紹介してください。」


「勇者様ならこれくらいどうってことないだろ。なんでそんな半端なクエストばかり受けたいんだ。」

すると、ギルドマスターの言葉によって勇者であることが近くの冒険者に伝わったためざわついていた。


「おいおい。勇者様がこんなところにいるとは。俺と手合わせしてもらいたいね

え。」

冒険者の一人がニルビに決闘を申し込んだ。


「いえ。その勝負をするつもりは全くなくて。」

しかし、冒険者は彼と戦いたがっていた。


「勝ったら賞金やるからさ。なあ俺と勝負しようぜ。」

勇者ニルビは冒険者の言葉に応じたが一つ提案をした。


「勝ったらではなく勝負に応じたら金が欲しいのですが。」


「いやだめだ。俺に勝ったら、金貨一枚でどうだ。」

結局数十分後、王国の街道でニルビと冒険者の勝負が始まった。


「名乗るのが遅れたな。俺の名はシャーディス。いくぜ勇者さんよ。」


「ニルビです。手合わせお願いします。」


シャーディスは剣を持って迫ると、ニルビは後ろに下がって逃げ出した。

シャーディスは何が起こったのかわからず動揺した。


「勇者さんがいきなり敵前逃亡かよ。おい待ちやがれ。」


勇者ニルビの後を追いかけるシャーディス。街道を出て獣道に入ると突然足場が落ち彼は穴に落ちた。


「落とし穴だと。」


勇者ニルビは相手が落ちたのを確認して帰ってきた。


「先ほど穴堀師にお願いして作ってもらったんですよ。銀貨1枚でね。」


しかしシャーディスは穴から崖の隙間に手をかけ綺麗に上っていた。


「なんで登ってこれるんですか。」


「こすい真似しやがって絶対許さねえ。」


実は穴堀師の作った穴はできが悪く凹みができていて昇れてしまっていた。


「容赦しねえぞ。勇者。」


シャーディスに右、左と交互に殴られ彼はボロボロにやられてしまっていた。

勝負に負けた彼は金貨一枚をもらえず穴掘り師に銀貨一枚をあげていた。


「くそっ。できの悪い落とし穴作りやがって。」


彼は完全に無一文になっていた。

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