人間からの批判
映画「共倒れのバラ」は大ヒットした。最初こそ全米が驚愕してこの映画を見るのを避けたものの、人々に魅力が伝わっていき、世界中で上映されるようになった。しかしこれが勝長にとっての仇となるのだ。
勝長は福井県にいた。すると、何人かの人間が石を投げてきたのだ。
「私たちの国では同性愛なんて死刑の対象だ!なぜ私たちの国であの映画を上映するんだ!」
そこに居合わせた淀成、警戒するようにこう言った。
「同性愛で死刑だと?上層部が馬鹿なだけだ。汝らは時代というものを知らないんだな。宗教問題とは言わせないぜ」
「淀成くん!」
「そもそも、同性愛で死刑とかいう国の方がおかしいだろうが!責任者連れて来い!ズタズタに切り裂いて、奈落の底へ落としてやる!」
「怖いな。ちょっとヤバイかも」
人々は逃げていった。
その夜、景広と景久はオンラインでビデオ電話をしていた。
「信じられない!今時同性愛が禁止とか時代遅れにもほどがある!そんな国、私が文学の力でぶっつぶしたいもんだ」
「どことは言わないけどね。しかしその国は、金持ちらしいわ」
「つまり私がなんか言ったら、ミサイルかなんかで攻め込んで来るとか?」
「そうかもしれない。もしくは、金をやるから見逃してくれ、とか」
「絶対に奴らの調略には乗らない!あんな国、死んでも行くものか!っていうか、なんでそんな悪い国に限って金持ちなんだ?最低だ!存在してる価値もない!」
景久の後ろの方から現れた蛇塚隆弘、
「おーボロクソに言うもんだね。わしだって、そういう国は嫌いだ。しかし忘れないでほしい。その国を憎むことはできても、その国の国民を憎むことはできない」
景広は納得したように、
「そうだね!ならむしろ、同性愛が禁止とかいう訳の分からぬ法律に縛られているその国の人々を自由にしてあげたい」
「我々も協力しよう。同性愛の何が悪いんだと、差別人間どもに伝えなければ!」
「サボリ魔な大蛇と言われるけど、そこは真面目にやるんだ...」
「では、明日から活動しよう」
次の日。淀成は家臣らを連れて景広が激しく憎悪する国にヘリコプターでやってきた。淀成はヘリから降りた。
「ここか。何をやってるんだ、あいつらは?」
人々は、虹色の旗を燃やしていた。
(虹色の旗、それは同性愛を認める象徴。それを燃やすということは)
淀成は、旗を燃やしていた人々を殴り倒した。
「汝ら!なんという不謹慎だ!」
「禁止されている物を燃やしただけだ。何が悪いんだ?」
「首相でも呼んでこい!今すぐに!」
「ちょっとお前何なの?」
「何なので済むものか!俺が首相の館に行く!」
警備員を殴り倒し、淀成、首相と対峙した。
「どういうことだ?汝は、なぜこの国で同性愛を禁じる?宗教の問題か?」
「そうだ!宗教の問題だ」
「意味がわからん!そもそも宗教なんて個人の自由ではないか!汝のせいで俺の友は、汝の国民によってけがをさせられた!国民には罪はない、すべて汝のせいだ」
淀成は恐竜を呼び出し、首相をあっという間に襲ってしまった。
「奈落の底から二度と出てくるな!次の国だ」
後ろで歓声が上がった。首相から解放された喜びである。
淀成はその隣の国を襲った。銃を取り上げるなり、それを一発で首相に命中させた。首相は倒れた。
「奈落の底で永遠に後悔するがいい!」
これを、十あまりの国々で繰り返した。
同性愛が禁止な国々の首相や大統領を討ち、人間たちを同性愛禁止という法律から解放させることに成功した淀成は、京都の六条河原に首相や大統領の首を晒した。淀成は一筋の涙を流しながら、絞り出すようにこう言った。
「三成様。これは罪人どもの首です。こいつらのせいで、多くの人々が苦しんだのです。共にこいつらをこらしめましょうぞ」
淀成は、呪いの札を人間どもの首に向かって投げた、奈落に封印するために。
SNSでは騒ぎになっていた。ネット民大荒れである。
「さすがにやりすぎじゃね?」
「いやそんなことない!あいつらは、こうなって当然だよ」
「何しろ、同性愛で死刑とか頭おかしすぎだろ。時代ってものを知らないのかな?」
「宗教問題とは言ってたみたいだけど、国の宗教なんか定めるから同性愛で死刑になるんだよ。国教定めるの反対!」
「何ならさ、猛川淀成がその宗教を滅ぼしちゃうんじゃない?」
「それはないだろ。その宗教の信者殺さなきゃいけないんだから」
「信者を殺すとまではいかずとも、信者たちに別の宗教に入るように言うんじゃないかな。そしたらその宗教は消えるから」
「淀成は頭脳派の頂点捕食者だからね。海辺で戦って、残党は海に引きずり込まれるんだろうな」
「そうなったら、鮫原家友らも協力するんだと思う。問題は鎧倉政平の行動だ。政平はアメリカ出身とあって軍隊には興味がある。政平が淀成に協力するのであれば、残党の抵抗は非常にやばいものになる。アメリカとあの宗教の国々は敵対しているというからね」
「淀成のことだ、きっと頭脳戦で信者たちを説き伏せて改宗させるんだと思うよ」
ネット民の期待通り、淀成はその宗教を滅ぼすことを考えていた。景久の研究所で会議をしていた。
「我らが宗教を滅ぼすと?」
「そうだ。しかもその宗教は、結構信者が多いらしい。テロだなんだとか言わせないぜ、テロリストはあいつらなんだから。海辺に誘い込み、相手が水に近づいたところを狙って水中に引きずり込む!」
「あと、アメリカとその宗教は敵対していると聞いたわ。私がここで活躍すれば、アメリカ人、もとい全人類の憧れの的になれる!」
「我らは、苦しんでいる人間たちを救うために巨悪を討つのだ!さすれば、英雄として名を残すことができよう」
「わしは、あの宗教組織による独裁が大嫌いじゃ!人々を独裁から解放するために、戦わなければならぬ!」
「たわけた人間もいるものだな。宗教組織が政治を行うなど、たわけ以外に言葉が見つからぬ。とにかく、テロを行う人間どもを潰さねば!奴らは密漁を行う危険性もある。となると我らの命が危うくなる」
「勝長はどうするの?難民だから戦争は嫌いなはず」
「勝長は福井で見ていればいいだけだ、被害者なんだから」
ついに、鮫原家友らと宗教テロリストは対峙した。
「言いたいことはただ一つだ。貴様らを討つ!」
家友たちは背を向けて逃げ出した。
「自分から呼び出したくせに、逃げるなんて卑怯な!」
しかしこれは猛川淀成の罠であった。走っている先には海がある。兵士たちは追いかけたが、敵の姿は消えていた。先に海があることも気にせずに飛び込み、多くの人間が溺れ死んだ。それに気づいて陸に戻ろうとする人間もいたが、時すでに遅し。最強の頂点捕食者たちに海に引きずり込まれてしまった。
「テロリストどもめ、ざまあみやがれ!」
「映画の上映ごときでなぜこれほどまでに揉めるのであろうか?」
今度は陸に上がり、戦車と対峙した。
「人間の姿では細いけど、海の重戦車と呼ばれているのよ。ナメてもらっちゃ困るわ!」
鎧倉政平は大砲をいとも簡単によけると、大砲が止まった隙を突いて戦車をつかみ投げ飛ばした。
「海だったらもっと強く在れるけどね。次々かかってきなさいよ!」
淀成は史上最大の恐竜アルゼンチノサウルスを呼び出して、アルゼンチノサウルスは戦車を潰していった。
「愉快愉快!見てて気持ち良い動画としてありそうでない」
「サイコパスなのね」
蛇塚隆弘は戦車に巻き付き、少しずつ潰していった。
「潰しにくい。戦車だからか」
鮫原家友は、ついにテロリストの本拠に入ることに成功した。
「この差別人間どもめ!この頂点捕食者である我が成敗してくれるわ!」
「やめて!」
誰かが立ちはだかったと思うと、砂島勝長ではないか!
「勝長!何ゆえここに居る?そいつらのせいで、貴様は怪我をしたではないか!」
「僕はこんなこと望まない!この人たちの命を助けて!」
「裏切りか?」
「僕が望むのは、人間であろうとあるまいと、すべての生き物がこの地球で仲良く暮らす世界。何でもするから助けて!」
「ならば一つ条件がある。汝らが今の宗教を捨て、国民たちにも同じようなことを命令し、別の宗教に改宗するのであれば助けてやろう」
「ありがとう!」
このようにして、テロを行う宗教は滅んだのである。
淀成は、六条河原に行って首相や大統領の首の封印を解いた。
後日、静岡に戻った家友らのもとに大量に手紙が届いた。しかしかなり難しい言語などで書かれている。
「何て書いてあるのだろうか?」
景久が自分のスマホを取り出し、カメラで翻訳できる機能があるアプリを開いた。
「先日は、我々の国を救ってくださりありがとうございます。あれはもはや、宗教による洗脳だったのです。やっぱり洗脳は恐ろしい。あなたたちの言う通り、平和が一番ですね。宗教によって同性愛を禁じていたのも間違いでした。これからは多様性を認め、もっと愛される国を作っていきたいです」
これは元テロリストからの手紙である。その国でもやっと同性愛が認められ、映画「共倒れのバラ」はますます人気を博すことになったとさ。
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