後日談その二  太陽のように爆ぜる

「ねーねー舜くん! これ、舜くんに似合うんじゃない?」

 私が彼の目の前にかかげるのは、うさぎのカチューシャ。ちなみに、真ん中には特大のリボンつき!

 今日は何と、映画館にやって来ました! で、映画を観る前に併設のショッピングモールに来た感じ、かな。

「いらねー。天音のセンスは壊滅的だな。こーいうのはお前みたいなかわいいやつが似合うんだよ」

 い、今言ったよね!? 私のこと、かわいいって! わー、彼氏からのかわいいって言葉は嬉しいね。今日のために、お洒落な服買いに行って良かった……っ!

「今日も前回みたいに・・・・・・マスカラつけてるもんね? 似合ってる」

「……っ。気付いてたのっ?」

 もちろん、と満足気にうなずく舜くん。何か今日の舜くんは素直というか、優しいというか、かっこいいというか。とにかく彼氏って感じ。

 まぁ、いつも恨めしいくらいにイケメンでかっこいいのは同じだけどね。それは別に良いけど。

「へぇー、嬉しいな。でもさ、何で前回は言わなかったの? いつ気付くかなってずっとドキドキしてたんだよ」

「ふーん、それはそれで良いんじゃね?」

「よ、良くない! 神経がすり減らされて、寿命が百年縮んだ!」

 冗談だけど、本当にそんな感じだったんだから。特に最後の方とか、もしも気付かれなかったらどうしよう……って。

「それじゃ、もうお前死んでるね。ドンマーイ」

「なっ、ひどい!」

「ひどいけど何か? 俺は天音に事実を言っているだけでーす」

 このっ、減らず口め! やっぱり舜くんは意地悪で、性格悪い! そして優しいなって思ったら大間違い!

「舜くんって、いっつも上げて下げてくるから意地悪」

「んー、それじゃ下げてから上げれば良い? それが天音のご希望?」

「ちょっと、そういう問題じゃない! てかさりげなくほお触るのやめて!」

 ったく……。こっちの気もしらないで! こっちはさっきから、心臓がドキドキ鳴りやまないのに。

「え? だめだった?」

「だめに決まってるよ。——それと、映画って何時から始まるの? 私絶対にポップコーンとジュース買いたい」

 映画館の醍醐味は、ポップコーンとジュースを交互に食べることだからね。

「んー、あと三十分後。そろそろ買いに行く?」

「うんっ」

 こういう時、さりげなく手をつないでくれる舜くんが大好き。そしてかっこいい。

(今日の私、変な恰好じゃないよね!?)

 ふと、心配になる。

「あー、それと映画の内容は俺が勝手に選んだ。ごめんなー?」

「謝罪の意思を少しも感じない! ち、ちなみに内容は? 私怖いの苦手なんだけど……」

「バーカ。幼なじみなんで、それくらい知ってまーす。大人の恋愛もんでーす」

 お、大人の恋愛!? 何か、私にはまだ難しい内容だったりして……。

「天音、めっちゃ心配そーな顔してる」

「えっ!?」

「冗談だって。対象年齢は十才からだし。あっ、そっか。天音って、精神年齢は三才だったっけ? アンパ〇マンにしとけば良かったー?」

 ほっとくと、すぐにぺらぺら悪口出てくるよね。人を不快にさせるの好きすぎ!

「平気だもん! 舜くんのバカ! 意地悪!」

「かわいー」

 私が言い返しても、舜くんは微動だにしないどころかケラケラと笑ってくる。何か、私ばっかり言われてむかつく……っ!

(そのかわいいって、本当?)

 そう聞きこうとして、でもやめて。私は舜くんと手をつないで幸せな時間を過ごした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る