幕間その三  夜めぐる天の川・後編

 ——ジャッパーンッ。

 イルカショーが始まって、音楽に合わせて飛ぶイルカちゃんたちはすごいかわいい。……イルカちゃんが水に飛び込むたびに、水しぶきが上がって前列の人達がびしょ濡れになってはいるけど。

(ショーが始まる前に、前から四列目まではびしょ濡れゾーンですってお姉さんが言ってたもんね)

 私と美波ちゃんは、五列目だから水しぶきが少し飛んでくるくらい。うん、イルカちゃんたち元気だねー。一番前の列なのに、レインコートを着ていない猛者さんはすごい。

 着替えの服とか、持ってきていると良いけど。今は春だし、若干寒いじゃん?

「ねー、天音。あの中にいるクジラって、どの子だと思う? 私、目が悪いせいでどの子か分からないんだよね」

「へ!? イルカショーだけどクジラちゃんもいるの!? どこ? 見てみたい!」

「天音、さてはお姉さんの話聞いてなかったでしょ」

 ギクリ。いやでも、たまに水面に出てプカプカ泳ぐイルカちゃんが可愛すぎてですね。しょうがないと思う、うん。

「どうやら、授業も聞かない天音に訊いた私がバカだったようですねー」

「な、何で!? 私何も悪くないよ! 可愛く泳ぐ、愛嬌たっぷりなイルカちゃんのせいでついつい目で追っちゃって……」

「いや、それはイルカが可哀そうでしょ。たしかに可愛いけどさぁ」

 そう言いながらもクルクル回って泳ぐイルカちゃんを必死に見ている美波ちゃんも、美波ちゃん。

 こうして平和に私たちが、元気に跳びまわるイルカちゃんをのんびりと眺めていた、その時。

 ——ザッッパァーン!!

 一番大きいイルカちゃんが、大きく飛んで。そして。

 イルカちゃんから私たちへ、大量のお水のプレゼント! って、いらないわ! こっちはびしょ濡れだよ!

  ポップコーンを食べ終わってない人は、ポップコーンもびしょ濡れだね。ドンマイ! ——っというか、あれ? 手元に何か、びしょ濡れの物体が見えるんだけど。

 まさか。袋の底に残っていたポップコーンだったりして。いやー、ないない。

「美波ちゃんって、ポップコーン食べ終わってないよね?」

「ん? もうイルカショーが始まる前に食べ終わってたけど。って、天音大丈夫!? びしょびしょじゃん!」

 何であんな大量のポップコーンを、ショーが始まる前に食べ終えられるんだろう。美波ちゃん、バケモノ説!?

「いや、美波ちゃんも結構濡れてるよ!」

 コートはもうびしょ濡れで、服がぎりぎり透けないくらい。私も同じ感じかな?

「え? 絶対、天音の方が濡れてるって! 私頑張ってよけたもん」

「だから、あの滝によけるって概念ないから! ここら辺の皆は全員どう頑張っても濡れるから!」

 かわいそうな、私のポップコーン……。

「さっきの水かけてきた子、多分クジラだよ美波ちゃん。私、イルカちゃんはこんなひどいことしないと思う」

「んん? それ、クジラが可哀そうだよ。動物に罪はないって」

 何だかんだ言って、私たちはびしょ濡れになったけどイルカショーは楽しかった。クジラは別として、イルカちゃんたちはやっぱり可愛いもん。

 ちなみに、一番可哀そうだったのは近くにいたカップルのお姉さん。多分あれ、ブランド物のバッグだと思う。お姉さん、ドンマイっ!!

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