海原高校TRPG部
巡世 式
第1話 TRPGとの出会い
秘密・神秘・冒険そして、恐怖。
これらは男、いや女も誰しも好きな物だろう。
しかし世の中これらの物は科学という人類の英知によって儚くも消え去りかけいている。
誰もが思う、人知を超えた物を知りたい 出会いたい。
大体の家庭で夏休み、ビクビクしながらホラー特番をTVで見るように!
これは、俺二面 千鶴(にめん ちずる)がなにか大事なものを見つけ出していく物語。
*
キーンコーンカーンコーン
春の日差しが少し弱まった4月下旬の午後4時、校内にチャイムが鳴り響く。
きりーつ、きおつけー、れー
「「さようならー」」
これはここ、海原東高校一日の学習過程を終え、各々帰っていいという合図なのだ。
周りのクラスメイトがガヤガヤと音を立てながらそれぞれ席を立ち教室を去っていく中、一人俺の方へ歩いてくるやつがいる。
「うぃ~」
いま挨拶をしてきたのは俺の友達、高崎 修斗(たかさき しゅうと)
修斗は中学の頃からの友人であり、自由気ままな飄々とした男だ。
「よ、相変わらず元気そうだな」
「あったりまえよ。なんてったって今日の授業が終わったんだからな!」
そう言って誇らしげに修斗は胸をそらす。
色入言いたいことがあるがそれらを抑え込んでカバンを背負って共に教室の外に出る。
俺等はこの春、ここ海原高校に入学した。
この海原高校は偏差値55の少しだけ頭いい高校で、俺等はそこまで勉強ができる方ではなかったが、背伸びしてここの受験をした。
蹴ったとしては無事に合格したというわけだ。
この学校の立地は海原を名乗るだけあって海から近く、3階から見える景色は絶景としか言いようが無い。
校則も特にきついわけでもなく、せめて何かを上げるとしたら部活は強制参加ぐらいだろうか。
「そういえば修斗、お前部活どこ行くか決めたの?」
「うん、決めてるよ」
「そうだよな、俺も決めてなくて...え?」
まさかあの修斗が 部活を 決めているだと!?
想定外の事態に俺が思わず混乱していると
「おいまさかだとは思うけど千鶴、俺が部活強制参加のこの学校で部活を決めないちゃらんぽらんな男だと思っていたわけ?」
「うん」
「ひどっ!?」
これはまじで想定外だ。俺はてっきり修斗も部活を決めていなくてこれから一緒に決めるものだと思っていたのに。
「裏切り者っ!」
「えぇ、そう言われましても困るんですけど。」
「ちなみにどこの部活に入るん?」
「TRPG部ってところ」
TRPG?突如として知らない単語が出てきた。
「何だそれ」
一度疑問を口にする。
すると修斗は眼をぱぁと輝かすと口早に語り始めた。
「TRPGというのは、テーブル(T)ロール(R)プレイング(P)ゲーム(G)の頭文字をとった略称で、RPGみたいにキャラクターを操作してゲームをクリアしていくっていうものなんだけど、RPGと違うのはT、テーブルがついている通りテーブルを囲んでKP(キーパー)と呼ばれる進行役とPL(ピーエル)と言われる参加者たちでシナリオ上で物語を紡いでいくっていう物なんだけど…」
「あー、もう大丈夫、わかったわかった。」
何かを修斗は熱く語っていたが、俺は話半分に相槌を打つ。
知らない単語について長文で返されてもわかるわけがないからだ。
ふと、気づく。
俺達はどこに向かって歩いているのだろう。
ここに入学して約二週間、ある程度校舎の理解は進んでいるがまだ完全とは言えない。
そんな中、俺は話すことに夢中でただ修斗の行く先についていくだけだった。
はっと意識が覚醒する。
眼の前の景色がどこか、そんな普段当たり前にしていることをようやく脳が処理し始める。
俺がいるのはドアの前だった。
「ここは…?」
修斗に尋ねると、修斗はニヤッと笑みを浮かべ俺の疑問に答える。
「ここはTRPG部の部室だよ」
確かにドアにはゴシック体でTRPG部と書かれた吊り下げ看板があった。
海原高校TRPG部 巡世 式 @meguseshiki
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