閑話〈side和斗〉


 僕には、可愛くて五歳からの幼馴染がいる。

 名前は早乙女牧菜さおとめまきなと言って大企業のお嬢様だ。なぜそんな凄い人と幼馴染に慣れたのかは、僕の母親が関連している。


 母さんは、中学からの親友である牧菜ちゃんのお母さんと知り合いで、大の仲良し僕が産まれる前からそういった関係で僕のことも可愛がってくれた優しい人だ。


 そして、この世界では男性よりも女性の方が圧倒的に多いため、間違ったことや男に対して最低限の礼儀と言うものが存在するけど、そんな人格者たる牧菜ちゃんのお母さんは、本当に嘘や何がいけないのかを教えてくれるいい人なのだと思える程に、綺麗で優しい人だ。


 そんな僕が、お母さんの親友の家族パーティに呼ばれて、牧菜ちゃんのお家に行ったのが最初の出会いだった。

 その彼女との出会いは、言うまでもなく奇跡かな?なんて思える程に神秘的な光景だった。


 リビングで母親を待っていた牧菜ちゃんはこの世界で神に愛された他のでは無いかと思える程に綺麗で魅入られるような気持ちを抱いた。

 そんな子供の頃は、一目惚れと大差ない感覚なのは言うまでもないが、小学生〜中学生になるまでにはその考えは一層強まったのは言うまでもない。


 何をしても、目を引く存在で輝くような笑顔を僕に向けてくる牧菜ちゃんは天使だとかそんな類を想像せざる負えないものだった。

 そんな幼少期の牧菜ちゃんは、小学校では皆から近寄り難い存在なんて言われる程に人気で女子からの評判も頗る良かった。


 そして今では、透き通るようなロングの黒髪に、少し吊り目だけど大きな瞳をし、吸い付くような肌を彷彿とさせる。絹のようなそれは、中学に入った当時は話題になった。

 そして、そんな牧菜を邪な考えを抱く輩もいたが、大企業の社長令嬢な訳で、何かあった時の為に、何故か僕が抜擢されているのは言うまでもない。


 男なのに、女の子を守るなんてこの世界では何なんだ?なんて思うかもしれないが、重要なパートナーとして大企業の令嬢としては、一般的な思考は持ち合わせていないというのだろうか、僕も例に漏れず、牧菜と共に習い事をしたり訓練と称して、牧菜に鍛え上げられた節なので今更この生活を変えろと言われたら無理と言えるだろう。


 それにいずれ僕は婿養子として牧菜の家に入るのは確定している。お母さんからもあんないい子と居られるように頑張るのよ!!

 なんて言われて育ったから、僕も牧菜の為に頑張らないとなんてそう思いながら日々頑張ってきた。


 だけど、それは同時に世の中を見て行くの言う同義でもあるのは分かっていた。当時の小学生の年少の時は、女の子からすごく言い寄られたのは一重にこの世界の男は学校などに行かず、日々家か襲われないために、訓練をしているかの二択もしくは変わり者として、社会見学と評して通う学生も少なからずいるのは、一重に犯罪防止のためなのだろうと思えるのは仕方がない。


 そんな、男の人が生きにくい世界と捉えられそうな環境だけど、それでも生きていかないと行けないから、僕は牧菜の傍にいて極力女の子達と深い関係にならないように取り組んできた。

 だけど、中学に上がって牧菜が、「少しはいいなと思える女の子達と接するのもいいと思うわ。」なんて言われて、まるで観察眼を磨きなさいと言われたかのようなことを言われる。


 そして、そんな中学で言い寄られる子達とそう出ない無関心では無いが、遠ざけるような視線を送る子達で僕は観察眼を鍛えた。

 そして知り合った最初の子は、江田明菜えだあきなという少し物静かな印象を持った子と会話をするようになった。


 最初の入学当時、クラスの中で我関せずと言った感じの子だと思っていると、話せば明るく前向きで何処までも人間観察をするようなまるで小さい頃の牧菜と同じような子だと思った。

 それからはきっかけを経て友達として接することが出来て、牧菜以外のことも仲良くなれた。


 そして、次に知り合ったのは怯えるような視線で僕を見てくる小さな女の子で、名前は福森美咲ふくもりみさきという子だ。大人しいと言うよりも、誰かに怯えているような子だった。最初は人見知りなのかと思ったが、そうではなく本当に虐めにあっていたようで偶然に牧菜と廊下を歩いていた時に、その現場を見てから僕は止めに入った。


 気がつけば勝手に体が動いていて、見過ごせないと思う辺り、訓練のせいかなのか。笑って虐めをしている女子の手を掴んで睨むと、それだけで、怯えて逃げ出すような軟弱な女の子だと思えた。そしてそんな美咲ちゃんは、僕を見て何を思ったのか、泣いてしまう。


 それ以降、美咲とはまだぎこちないが良い関係を築けていると思う。そしてもう一人そんな美咲の姉の福森美奈ふくもりみなともなんだかんだ言って、気持ちいいと思えるほどの妹とは対照的に明るい女の子ですぐに、打ち解けた。


 そして最後に、紹介するのが橘千晶たちばなちあきという少しギャル?っぽい子で、素直ですぐに皆と打ち解けるムードメーカー的な存在との出会いもできた。

 最初の出会いは、何と言うか突拍子もないことなのだが、アニメや漫画などでよくある曲がり角でぶつかってしまうような、何とも2次元要素顔負けの出会いをした。


 移動教室の時に、牧菜と一緒に行く時に偶然廊下の曲がり角にいた僕に飛び込むような形で僕の胸に飛び込んできたのだ。

 隣にいた牧菜もその時な本当にビックリしていた事は今でも忘れない。そしてぶつかってきた子に大丈夫?と呟くと千晶は離れずに「男の子匂いだぁ〜」なんて言ってきたので、即座に僕は離れた。


 そうすると、ハッと何かに気付いた千晶は「ごごご!ごめんなさい!!」なんて言って駆け出すように、走り去っていく。

 本当に何事?なんて思ってそんな昼休みに、千晶が僕たちの教室に来てクラスのみんなの前で謝ったのは、この子は裏表ないんだななんて思えた。


 そしてしばらくしたら、皆と過ごしている内に牧菜を除いて皆とグループのような関係を築けていた。牧菜は牧菜でクラス委員の仕事で皆のと話し合いやそういった機会を作ることが出来ないでいたが、皆は僕たちの関係には気付いていた節で接していてくれていたから、諍いなどはほとんどなかった。


 そして入学して3ヶ月が経ち、ある程度の余裕が出来てからは牧菜の仕事もひと段落ついたのか、みんなとの関係を構築することには成功していた。少し冷たくなった部分はあるが、いつも通りの牧菜が見れて安心していた。だけどそんな時に起きてのは、牧菜と明菜が昼食を食べて食べ終わりそうになった時に、3人で話しているのを見た。

 それを見ていると、明菜が今まで見た事のない顔で牧菜を睨んでいて僕は何かあったのだと察知して一緒に食べていた、千晶と美奈と共に牧菜たちの所に駆け寄る。


 そこで言われた事は


「ごめんなさいね。和斗の悪口を言っていたら怒られちゃったわ。だから和斗は私に責任を取ってちょうだい?」


 なんてはぐらかす様なことを言われて僕は考えたが牧菜の言葉に応えるように会えて乗って言葉を告げた。


「え?牧菜が言ったのに俺が責任取るの?それ理不尽じゃないか?」

「だってあなたそういった事いつも引き受けてるじゃない?それの延長線上よ。全く問題ないわ。ねえ、美咲?」

「うえ!?そ、それは……ど、どうなのかなぁ?」


 そういって、美咲を巻き込む形で有耶無耶になるように誘導して牧菜はやり過ごす。僕は恐らく聞かれたくないことなのだと思えて、会えて牧菜に合わせたが、その内容は美咲にも明菜にも答えては貰えなかった。

 だから牧菜が言うまでは、飲み込んでいようと思ったそして土曜に、牧菜から連絡がかかり僕はその着信音を即座に取る。


「もしもし?牧菜どうしたんだ?」

『もしもし?和斗今から私の家に来てくれないかしら?話したいことがあるから、出来るだけ早く来てね。それじゃあ――』

「あっ!ちょっ!――切られたか。」


 そう言って話すだけ話してすぐに着る辺り早急のようなのはわかったから僕は、自転車で牧菜の家のマンションへと走り出した。



 いつものようにカードキーを使ってセキュリティがしっかりしたドアを開けて、牧菜の住む高層ビルのエレベーターに乗り家に向かう。

 そして玄関の前に着いた僕は、少しあの時のことを思い浮かべる。それはカードキーを指して入力番号を変えられているのでは無いかと思いながら、いつもの番号を押すとそんなイタズラじみたことはなくすんなりロックが解除される。


 恐る恐る僕は入るが、なんの仕掛けもなくリビングに向かうと、底にはいつも通りの牧菜がソファに座っていた。


 そして僕は呼び出した理由を聞くために牧菜に「いきなり呼び出してどうしたんだよ牧菜?」と伝えると「よく来たわね和斗、待っていたわ。」と牧菜が返してくる。


 そして見つめ合うこと数秒にして僕が最初に声をかけた。


「それで?僕に何をさせたいんだ?」

「そう警戒しないでよ。何かをさせるために呼んだのは間違いではないけど、前みたいな無茶ぶりでは無いのだから、それに貴方が最近私のことを気にしているのは見ていれば分かるわ。だからそれの答え合わせを教えてあげようと思って呼んだのよ。」


 そう言われて僕は含みのある言い方で牧菜に言葉を返した。


「――珍しいな、牧菜がそんな素直に応えようとするなんてそれに最近の牧菜は随分と明るくなった気がするから、僕としては嬉しいよ。」

「――確かにそうね。以前の私なら来る前に訓練と称して何かを仕掛けていたから、私も随分と丸くなったと思うわ。だけど、今は私の中で疑問に思うことが多すぎで貴方を構っている時間が無いと言っておくわ。たまに抜け内テストするから、今後は引き締めてきなさいね。」

「やっぱり、牧菜は僕に厳しいよな。あはは」


 そういって僕はあの時の可愛かった牧菜が今目の前にいるなんて思いながら、牧菜を見つめながら笑う。それに対して何も言わない牧菜は本当に久しぶりで、内心少し危機感を持ちながら見ていたら牧菜が覚悟がてきたのか、真剣な表情で告げる。


「じゃあ、私の話をと言うよりも今後についての貴方達について話そうと思うわ。」


 その表情は、今までとは違う何かを帯びたような真剣な表情だった。

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