ベタ慣れ度7【素晴らしいセカイ】

「まずいです…由々しき事態ですよ!」


「わたし、人間になって飛べなくなったじゃないですか。

運動不足気味でして…、…そのぉ、つまり…」


「ふ……太ったんです!!

あなたが用意してくれるごはんがおいしくて!」


「う~、ダイエットしないと、いつか体が風船みたいに膨らんで破裂しちゃいます~」


「でも、どうしましょう?

なにかいい方法は…」


「さ、散歩ですか!?

わたし、外に出てもいいんですか!?」


「危ないから、あなたと一緒なら…?

もう、心配しすぎですよ~、そんなにわたしのことが大切ですか?

…ふふ、聞くまでもなかったですね」


「じゃ、行きましょうか!」



     ………………………………


(2人の足音)


「わぁ…!お日さまが眩しい…!」


「あなたも嬉しそうですね、犬さんみたいに一緒に散歩できないのが寂しかったとかですか?

…あ、図星?えへへへ、人間になってよかった」


「ね、手繋いでくださいよ。

ほら、犬さんだってリードつけるでしょ。

まあ、あれは法律で決まってるみたいですけど…」


「繋いでくれないなら、どんどん勝手に進んじゃいますよ~」


「あ、もっとこう、指を絡ませてください。

ふんふふ~ん、恋人つ~なぎ♡」


(2人の足音、ピタリと止まって)


「……この道、懐かしいですね…」


「覚えてますか?

わたしがあなたに拾われた場所です」


「傷だらけでボロボロだったわたしを、偶然通りかかったあなたが丁寧に布で包んで、動物病院まで連れていってくれましたね」


「…今でもたまに思い出します、あなたの前に通りすぎていった人たちの冷たい視線を。

考えるんです、もしあのまま全員が見てみぬふりをしていたらどうなっていたんだろうって」


「傷が回復した後も、元の飼い主は現れなかった…うっかり噛んでしまったわたしが悪いんですけど」


「…すみません、しんみりして…。

でも、全く辛くないですよ!」


「そのおかげであなたに会えたんですから」


「あなたと出会って、わたしの世界は色づいた。

"大嫌いだったセカイ"が"素晴らしいセカイ"に変わったんです」


「…一緒に素晴らしいセカイをって…それ、プロポーズですか?

…わたしはもう人間ですから、人間としての意味で受け取りますよ」


「…わたしも、あなたと一生愛しあっていたいです」


「ん…帰りましょっか!

充分、歩けたんじゃないでしょうか。

明日は、筋肉痛ですね」

(顔を赤らめて、照れた様子で)


(ぐぅぅ~とお腹の鳴る音)


「あ!アハハ…このままスーパーに寄りませんか?

今日はなんとなく、わたしが晩ごはんを作りたい気分なので…」


「怪訝な顔しないで!?

おいしくできますよ!!」


「味覚に関しては、あなたの好みに合わせる練習にもなりますし…あなたの胃袋を掴むって、前に宣言しましたからね!」



🦜🦜🦜🦜🦜ベタ慣れ度MAX!🦜🦜🦜🦜🦜⤵

    次回、最終話。ベタ慣れ度MAX

      「この先の未来へ」

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