ベタ慣れ度2【くんくんすんすん】

「あれからもう一週間ですね」


「折角、人間になったのに、一歩も外に出してくれないなんて。

このままじゃ、美少女の軟禁罪で捕まっちゃいますよ」


「…それは冗談です、でも…あなたが仕事でいない間、わたし、さみしすぎて尾羽おばねをかじっちゃいそうだったんですからね。

まあもう、ないですけど…」


「…その代わりといってはなんですが…、今日はたっぷり遊んでくださいね」


「ところで、そろそろわたしにも…え?まだ慣れてないんですか?」


(だんだん声の圧を強めて)

「毎晩キスしてるのに?

最近、ちょっと強めになってきてるのに?」


「お、怒らないでください。

わたしは別に、もっと強くしてくれても…。

あ、いえ」(独り言のように小声で)


「そ、それで…!頼まれていた荷物、受け取っておきましたけど中身は一体なんなんですか?」


「新しいごはん…?

わたしのために!?」


「やっぱり!あなたってわたしのこと、大好きなんですね!

そうしそうあい…なんですね?ふふふ」


(パチンと弾く軽快な音)


「いった!あ~、デコピンなんかする悪い手はどこですか、もう!

わたしが人間の姿だからって!」


「わたしのせい、ですか?

そっちがその気ならこちらにも考えがあります。

動物を保護するところに行ってやります!

さよーなら!今までお世話になりました!!」


「あ~あ…な~んて、嘘ですって締めようと思ったのに…そんなに慌てられたら困りますよ。

…その、どんだけ好きなんですか、わたしのこと」


「…あなたのいない生活なんて耐えられるわけないじゃないですか…。

…なんでもないです」


「さ!食べますよ!新しいごはん!

これまでも最初は少ない量から試させてたでしょ?」


「お皿を用意するから待ってて?

わかりました、テーブル拭いておきますね」



     ………………………………



(カラカラとお皿にごはんを出す音)


「うわぁ、ありがとうございます!

カラフルで楽しい見た目ですね!」


「どれどれ、匂いは…くんくん、すんすん」


「…あれ?くんくん、すんすん。

……くんくんくんくん、すんすんすんすん」


「と、当然だろって顔しないでください!

人間になったから嗅覚も鋭くなったかなって思ったんです~!」


「あ、急に不安になってきました…。

ねぇ、わたしってもしかしてクサイですか?」


「何そのビミョーな反応!?

ちょっ、ちゃんと嗅いでください!!」


(インコちゃんと距離が近づき、圧迫感のある音。

心臓の鼓動が聞こえる)


「…ど、どうですか?

む、胸が当たってるとか今どーでもいいですから!!

これまでだって散々、なでてきたでしょ!?

ほら、吸って!」


「く、クサくない…ですか。

はぁぁ~、よかった~」


「ん?…鳥的には?

…一言余計だな…?

つまり人間的にはわたしはクサイと…?」


「…そういえば最近、水浴びしてなかったような…!

わ、わたしがクサイとしたら飼い主であるあなたの責任ですからね!」



     ………………………………



「さて、それでは改めて。いただきます…」


(カリッという小気味よい咀嚼音が数回鳴る)


「うん、うん!おいしいです!!」


「もう、そんなに安心したんですか?」


「あなたの選んでくれたものだから、どうしたっておいしくしかなりませんよ~」


「うふふ、これからもおいしいごはんを、食べさせてくださいね♡」


    

🦜🦜🦜🦜🦜🦜🦜ベタ慣れ度が3にUP!!!⤵

   次回ベタ慣れ度3【一緒におふろ】




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る